
【

まさにそんな映画だった。
2004年末、マリア(ナオミ・ワッツ)とヘンリー(ユアン・マクレガー)は、3人の息子と共にタイにやって来る。トロピカルムードあふれる南国で休暇を過ごすはずだったが、クリスマスの次の日、彼らは未曾有の天災に巻き込まれる。一瞬にして津波にのみ込まれ、散り散りになった家族はそれぞれの無事を祈りつつ再会への第一歩を踏み出す。
現実の話しから少し設定を変えて(どこまで変えているのかは不明だけど)、映画的に作られてはいるようだが、それでもこの物語は、まさに'THE IMPOSSIBLE'なことが現実に起こったということ。
ただしタイトルの「不可能」となるとちょっと映画の内容と違うような気もするが(奇跡とか偶然とかの方がいいかもとは思うが、それじゃあインパクトが弱くなるのかな)。

津波(災害)の恐怖をことさら煽ることもなく、被災地の悲惨さをことさら知らしめるということもせず、人と人の繋がりにスポットを当てて無暗に涙を誘うともせず、あくまでもこの家族5人の目線という、狭い狭い視野で描かれている。
そのせいかもしれないが、意外と冷静に映像を直視出来た。
とは言っても、津波の描き方はたいへんなもので、思わず戦慄を覚えた。
自分の想像していた津波の怖さなんてまったく足りていない、津波の本当の怖さはこうなのだ、ということがフィクションである映画であっても、まざまざと伝わってきた。
今さらながらなんだけど、津波に襲われるということは、サーフィンで波に巻かれるとか、川の激流を流される、という状況ではないということ、そして単に溺れてしまうということではないということ。。
考えてみればそうだ、この映画で描かれていたようなことが起こるのだ。
しかしよくもこの物語を映像化出来たものだ、エンドロールを見ていたら、通常の映画とは比べものにならない数の人がこの映画のために携わっていたようで、それくらいでないとこの映画は作れなかったのだろうな。

ナオミ・ワッツの身体を張った演技が壮絶、特にベッドで寝たきりになってからの、顔だけの演技(しかも怪我をしているから表情もほとんど動かせない)は凄まじかった、オスカーで主演女優賞にノミネートされたことも納得(受賞してても疑問はない)。
そして長男ルーカス役のトム・ホランドの演技も凄かった(彼のせいでユアン・マクレガーは影薄らぐ)。
誰にでも勧められる映画ではないと思うが、自分としては観ておいてほんとに良かったと思う。