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「新・正社員論-共働き正社員モデルの提言-」という講演を受けた【その1】(労働政策審議会・連合推薦委員合同会議)

2018-08-27 | 書記長社労士 お勉強の記録
 8月3日~4日、連合が開催した「労働政策審議会・連合推薦委員合同会議」に出席、2日間の会議では、3本の講演を受けた。
その3本目は、久本憲夫京都大学大学院経済学研究科教授による「新・正社員論-共働き正社員モデルの提言-」。【その1】

(1)「共働き正社員モデル」とは何か。なぜ必要なのか。
 近年の状況…「正社員」観念(「正社員は長時間労働で転勤する」)の逆機能。
・現実は異なるし、それは望ましくないことであるが、これをマスコミなどが宣伝することが、あたかも、事実であるように社会的に捉えられるようになってきた。これを批判する必要がある。
・男女とも正社員で働きながら、無理なく子育てできるという、まっとうな生活を送るための雇用モデルを考え、それを推進する必要がある。


1.男女雇用平等の齟齬とワーク・ライフ・バランス
〇片稼ぎ正社員モデルの男女雇用平等は問題だ⇒女性も男性と同じように働くということは、男性の働き方をするということか⇒女性にとっての出産年齢の制約⇒男性も女性も3割以上独身⇒合計特殊出生率2.07は如何にすれば可能か?


〇男性片稼ぎモデルの動揺⇒成果主義による大卒男性の年収プロファイルのフラット化傾向⇒1970年代生まれ以降は、1960年代に追い付かず⇒1980年代以降生まれは?


〇消えつつあるM字型カーブ⇒女性のM字型カーブは消えつつあるが、「共稼ぎ正社員」は少数派⇒その原因の1つは非婚化⇒もう一つは、非正規雇用の増加←配偶者の賃金の伸びの低さが原因の一つか(ダグラス=有沢の法則)⇒1.2共稼ぎモデルの多様化(例:夫500万・妻100万)⇒「共稼ぎ正社員」は2割弱⇒まだ、少数派にとどまる。⇒「本意の片稼ぎモデル」は少数。1-2割か。


〇少しずつ、共稼ぎ正社員は増えている(育児休業給付制度の普及がこれを後押し)⇒雇用保険から育児休業保険に法律名を変えてもいいのではないか(笑)


〇ワーク・ライフ・バランスで言うライフは「家事・育児」⇒家事労働は労働、だからワーク・ワーク・バランス。⇒ワーク・ワーク・ライフ・バランスを求める必要あり。

2.正社員をどう捉えるか…共稼ぎ正社員モデルとは何か
〇正社員性から考える⇒統計調査の多くは「呼称」に頼らざるをえないが、本当は、「呼称」ではなく。
〇正社員性を測る⇒①雇用の安定、②賃金水準、③能力開発・キャリア展望
〇企業規模別にみた離職率の変化と離職理由(大企業の魅力の減退)
〇管理職昇進比率の低下⇒大卒でも管理職にならない・なれない人が大幅に増加。⇒管理職になる人は少数派に。

3.労働時間管理
〇残業しない正社員は少なくない⇒週1-2時間までしか残業しない正社員は男性で3割、女性で半数弱。⇒週5-6時間までにすると、男性で半数、女性で7割。⇒実労働時間は週50時間以下が多数派。
〇労働時間制度の適用労働者比率(企業の回答)と正社員本人の認識による労働時間制度の乖離。
〇適用制度と労働時間⇒仕事量は「事業所外みなし」「専門業務型裁量労働」で特に多い。⇒裁量労働はよかったか?続けたいか、止めたいか?なぜ、残業手当が支払われないか?⇒固定残業制の広がり。
〇「労働時間割増」は、経済的には「割引残業」⇒現在の労働時間法制は、残業促進法制である。なぜ、放置しているのか?⇒「片働きモデル」のなせる業⇒「妻」のパート時給よりは高いから。
〇「1時間当たりの基準賃金」に含まれない膨大な人件費⇒「賞与・一時金」「法定福利費」「退職金」「通勤手当や住宅手当等」「法定外福利費」
〇時間単価が同じなら、労働時間を短くしたい。⇒現代の労働者の多くは、賃金よりも労働時間を短くしたいと思っている。⇒もっと長時間働きたい人は少数派。⇒ただ、査定・人事考課を気にしている可能性は高い。そのため、残業せざるをえない。
〇正社員の過重労働化は、「うつ」や過労自殺を増やした。⇒過労死は減らず。
〇労働組合と労働時間⇒簡単な計量分析の結果では⇒残業時間については組合の効果はなし。⇒ただし、統計的に有意ではないが、係数はプラス(つまり、残業時間を長くしている可能性あり)⇒月労働時間については、一般従業員では効果はないが、なぜか、管理職クラスを加えると、労働時間短縮効果がみられる。⇒これは、無組合企業の管理職クラスに長時間労働者が多いからかもしれない。⇒「片稼ぎ正社員モデル」による「ライフサイクルによる生活費要求」をしてきた労働組合にとって、「共稼ぎ正社員モデル」への転換は容易ではない。⇒だが今や、それが必要な時代になってきた。⇒「パラダイム転換」ができるか?

4.転勤と配置転換、そして昇進
〇1年間で転勤する人の割合は男性で2%程度⇒男性でも、一生転勤しない正社員が多数派である。⇒もちろん、「転勤族」は一定数、存在する。
〇管理職の異動経験⇒転居を伴う転勤を経験している男性管理職は、約3割⇒配転は一般的。
〇一般従業員の異動経験⇒大星一般従業員の転勤経験は3割弱。


〇転勤は、管理職昇進にとって職業能力上あまり必要性はない。
成果主義化にもかかわらず、本人のキャリアアップにつながらない配転・転勤をする企業⇒「成果主義化」は、年齢や勤続年数による処遇をできるだけ小さくし、従業員の「(企業が求める)職業能力」による処遇に純化したかにみえた。⇒しかし、従来の「職務の選択」を企業が一方的に指示することに何らの変化がなかったため、「職業能力」をすべて本人に帰することに無理があった。⇒定年までの企業の健全な発展・存続に対する信頼が低下した現在⇒従業員は自分の「職業能力」の開発(企業を超えたキャリア・アップ)に強い関心を持つようになった。⇒つまり、企業は本人のキャリアにつながらない・つながりにくい配転や転勤をしてはいけないはずだった。⇒しかし、企業は、相変わらず、あるいは以前以上に「配転」や「転勤」をおこなった。⇒これらは、従業員にとっては「踏み絵」であり、ほとんどの従業員は拒否できないが、転社を日常的に意識するようになってきたのではないか。⇒企業忠誠心は死語に。⇒裁判所も「男性稼ぎ主モデル」今でも「正義」に思っている。
〇増える有配偶単身赴任⇒非婚化にもかかわらず、増える。⇒家族形成にとって、事態はますます悪化している。⇒背景としては、従業員の生活にほとんど配慮していない無駄な転勤を多用する日本企業の人事政策がある。
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