WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

坂東武者の世をつくる

2022年02月11日 | 今日の一枚(C-D)
◎今日の一枚 564◎
Cream
Disraeli Gears
 『鎌倉殿の13人』の話題である。
 先週の放送で北条義時の兄、宗時が死んだ。石橋山の戦いで敗死したのである。宗時が死んだあと、宗時が義時に語りかける形で、その思いを吐露するシーンがあった。
平家とか源氏とか、そんなことどうでもいいんだ。俺はこの坂東を俺たちだけのものにしたいんだ。西から来た奴らの顔色をうかがって暮らすのはまっぴらだ。坂東武者の世をつくる。その天辺に北条が立つ。そのためには源氏の力がいるんだ。頼朝の力がどうしてもな。
 鎌倉幕府の本質である。鎌倉幕府は源頼朝がつくったというが、それは構造的な本質ではない。頼朝は一介の流人に過ぎず、家来などほとんどいなかった。彼が成功したのは、東国武士の協力があったからである。東国武士が頼朝に与したのは、もちろん彼らの利益のためである。西の政権の抑圧や収奪を排除し、自分たちの世界を作るためである。
 鎌倉幕府の本質は、東国武士団による連合政権なのである。事実、源氏は頼朝・頼家・実朝の三代で滅ぶが、鎌倉幕府はその後も続いていくのだ。北条氏は幕府の中で大きな権力を握ることになるが、政治の手続きとしては《合議制》の形式を続けていくことになる。こうした歴史認識は、当然の帰結として「東国国家論」を要請することになるだろう。これからの『鎌倉殿の13人』が楽しみである。

 今聴いているのは、クリームの1967年リリース盤『フレッシュ・クリーム』である。クリームは好きだ。そして、以前記したように(→こちら)、真のスーパーバンドだと考えている。あの分厚いサウンドを3人で作り上げていたこと、30分にも及ぶことのあったインタープレイ。今考えても、唯一無二ロック・バンドである。しばらくぶりに聴く『フレッシュ・クリーム』は佳曲揃いでなかなか聴きごたえがある。もう二周目になってしまった。

 多くのギター少年たちと同じように、エリック・クラプトンは、私のギター・ヒーローの一人だった。ギター小僧だった頃、『エリック・クラプトン奏法』という本でその奏法を勉強したものだ。けれども、本当にすごかったのは、仲が悪かったといわれるジャック・ブルースのベースとジンジャー・ベイカーのドラムが作りあげる、分厚くうねるようなリズムのドライブ感だったのだと、今は思う。エリック・クラプトンのギターは、もちろん悪くはないが、今という時点から見ると、ひどく凡庸なものに聞こえてしまう。もちろん、歴史性を排除して現在から過去を断罪するのはフェアなやり方ではないが、エリック・クラプトンの演奏に比して、ジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーが織りなすサウンドは、現在という地点から見ても革新的な輝きを放っているように思える。

 youtubeで見ることができる2005年の再結成ライブは、なかなか凄いものだった。ジャック・ブルースは2014年に、ジンジャー・ベイカー2019年に亡くなっており、健在なのはエリック・クラプトンのみである。


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