●今日の一枚 313●
Bill Evans
Interplay
有名なのに不思議にあまり聴くことのないアルバムというものがある。私にとって、ビル・エヴァンスの1962年録音作『インタープレイ』はそんなアルバムの一つだ。
ビル・エヴァンス (p)
フレディー・ハバード (tp)
ジム・ホール (g)
パーシー・ヒース (b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ (ds)
ビル・エヴァンスが自らのリーダー・セッションに初めてホーン奏者を迎えたアルバムであり、お家芸のインタープレイを、ピアノトリオではなく、クインテット編成で追究しようとした作品といわれる。評論家筋の評価もそれなりに高い。バンドのメンバーも有名どころだ。けれども、私はビル・エヴァンスを聴こうと思ってこのアルバムを取り出すことはほとんどない。エヴァンスを考える場合、重要なアルバムなのかもしれないが、私の聴きたいエヴァンスがそこにはないからだ。結果、このアルバムは私のCD棚の片隅にもう恐らくは20年以上も放置されたままだった。プロデューサーのオリン・キープニューズの回想によれば、このアルバムが録音されたのは、スコット・ラファロの死後、エヴァンスが一層多用するようになった麻薬の購入資金を得るためだったようだ。だから、クインテット編成によるインタープレイというのも、どちらかというと、プロデューサー側の企画だったのかも知れない。もちろん、そのことが内容の価値を下げるものではないが……。
その滅多に聴くことのないアルバムをなぜ今日取り出したのか。3・11と4・7の地震によって、現在、私のCD棚はカテゴリーも演奏者もバラバラで、どこに何があるのか探すのがとても困難な状況である。したがって、最近はたまたま目についたものを取り出すようになっている。怪我の功名というべきか、普段あまり聴かない、「そういえばこれあったな」、という感じの作品に再びめぐりあうようになったわけだ。
さて、『インタープレイ』である。エヴァンスを聴くためにあえて取り出す作品ではない、という認識にかわりはないが、典型的なハードバップ作品という観点からはなかなか面白いのではないか。とてもスウィンギーでノリがよく、ミディアムテンポの演奏がうまいエヴァンスの特質が意外と生きているのではないだろうか。バラード演奏もしっとりとしてなかなかよい。若きフレディー・ハバードの瑞々しい演奏もいいし、ジム・ホールのギターはさすがに存在感がある。いいじゃないか。なんだか得をした気分だ。『インタープレイ』というタイトルだが、私にとっては鬼気迫るような緊張感を感じる演奏というよりは、リラックスして楽しめる良質のハードバップ作品だ。
ところで、このアルバムのCDケースもひびや傷だらけである。CDケースを買い換えるには、破損したケースがあまりに多すぎる。CD棚の整理はいつやろうか。余震はまだまだおさまりそうもない。
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