野菜に関する怪情報を探る

テレビや書籍、ホームページなどから、野菜に関する記載について疑問に感じたことを綴るつもりです。

サトイモは何故生で食べないか?

2008-03-16 15:16:50 | Weblog
 ヤマイモは生で食べるのに、サトイモは生で食べないのは何故かという質問がありました。回答:生で食べると不味いから。
 1982年の家政学研究、29、75-77において、奈良女子大学の中西らは、「サトイモのえぐ味成分としてシュウ酸カルシウムの針状結晶」と書かれています。サトイモのイモや葉の中に、針状の結晶が存在することが、えぐ味に関係しそうです。針のようなものを写真でみるかぎり、チクチク、イガイガしそうに思えます。
 一方、米国のPaullら((1999)Postharvest Biology and Technology, 16, 71-78)*によれば、針状結晶にタンパク質分解酵素らしいタンパク質が付着していることを見出し、これがえぐ味に関係すると述べています。針で口腔内の粘膜を傷つけるだけでなく、タンパク質分解酵素が生化学的にも粘膜のタンパク質を傷つけるとすれば、えぐ味も説明できそうです。サトイモを少しぐらい加熱したぐらいでは、針状結晶が破壊されるとは考えられませんが、タンパク質分解酵素なら活性を失うはずです。こう考えれば、加熱するというのは、タンパク質分解酵素の働きを抑えることにあったと解釈できます。*この文献はハワイのタロイモを対象にしています。日本のサトイモとは異なるかもしれません。 
 サトイモを生で食べるとえぐいのは、針状結晶とタンパク質分解酵素の2段攻撃によるもの。加熱するのは、タンパク質分解酵素を質失活させるためと考えられます。煮れば、結晶化していない水溶性のシュウ酸が流出しますが、焼くとそのまま残ります。場合によれば、こうして残った水溶性のシュウ酸も、えぐ味に寄与するかもしれません。
 では、サトイモを生で食べてもえぐくない調理法ができたとして、それを食べても安全かと問われれば、「食経験がないので・・・」としかお答えできません。白インゲン豆で食中毒事件が起こったように、従来と異なる方法で調理すると、有毒成分が残る(あるいは生じる)危険性があるからです。