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【くらま】日本DDH物語 《第五一回》ヘリコプター巡洋艦構想と第一次石油危機の衝撃

2018-12-15 20:09:20 | 先端軍事テクノロジー
■高度経済成長時代の終焉
 戦後日本の空母建造計画、しかし、その将来展望は高度経済成長と高まる防衛任務増大が背景でした。

 はるな型護衛艦に続く新護衛艦、しらね型護衛艦しらね、くらま、2隻が建造されることとなりますが、当初ヘリコプター搭載護衛艦は2隻で護衛隊を編成することが画定していました。したがって、はるな型護衛艦は3番艦が建造される事が自然でしたが、ひえい竣工が1974年となります。護衛艦は建造を決定しても計画から建造と就役までの時間が長い。

 ひえい建造は1969年度計画ですので、石油危機の1973年とは直接の関係はありませんが、はるな運用実績に依拠して次の護衛艦を、という慎重な姿勢が結果的に三番艦の建造時期と石油危機が重なることとなりました。この頃は自衛隊では73式装甲車の装甲戦闘車化構想や74式戦車の量産、最新戦闘機F-4EJや国産ジェット輸送機C-1量産が行われたころ。

 ひえい建造後、そのまま3番艦建造へ進むことが出来なかったのは日本経済の急減速、七年間でGNP/GNIが倍増する希望に満ちた経済が数十年で半減するマイナス成長に突如急停止したのですから、まず護衛艦はるな、ひえい建造とともに第三次防衛力整備計画の確実な実現と当時定められていました第四次防衛力整備計画の着実な実施を、となります。

 こうしますと特に第四次防衛力整備計画は結局長期計画を物価の乱高下で長期計画を示すことが出来ません、一番艦を予算通り建造した場合でも四隻五隻と建造してゆけば数割建造費用が違う物価の乱高下、従って長期計画と中期計画を分けることとなります。デフレ脱却が叫ばれる現代ですが、当時のインフレで物価が確実に上昇する状況は想像が難しい。

 防衛計画の大綱は1976年に第一次防衛大綱が画定します。驚くべき事に冷戦後まで見直されることがなかった防衛大綱ですが、この画定も当時は第一次防衛力整備計画から連綿と第四次防衛力整備計画まで明示し、着々と防衛力を整備していたものの、長期計画で調達を明示できないため、まず防衛力の必要な指針を示した上で中期計画を作成する事になる。

 現在の中期防衛力整備計画に繋がるポスト四次防、中期業務見積と発展してゆくこととなるのですが、期せずして防衛大綱の解釈が、必要な防衛力整備の指針であったはずが、予算上調達して良い装備数の上限、と転じていったのはご存じの通り、ちょっと論理脱線しました。とにかく中央官庁にも十年後の日本、というものが読めない時代が到来します。

 ひえい、に続く護衛艦を即座に建造できなかったことで、ヘリコプター搭載護衛艦の要求へ若干の間隙が生まれます。こうして幾つかの変要素が生まれます、最たる事は護衛艦はるな型のHSS-2対潜ヘリコプターを海上運用する事の有用性が確認されるとともに、3機は運用上ぎりぎりの数であり、運用面からはもう少し器材の余裕というものが必要でした。

 ヘリコプターはDDH搭載のみ、整備中と交代機に実任務機と長期的に飛行を継続させるためには3機では常時1機しか飛行させることができず、4機ならば部分的に2機を対潜哨戒に、6機搭載したならば2方面での常続的対潜哨戒を可能とできる、というものです。こうしますと、やはり次のヘリコプター搭載護衛艦は大型化が必要、ということになります。

 8300t型ヘリコプター巡洋艦構想は、こうしたなかの検討として生まれました。全通飛行甲板を採用する事はなく、船体内部に航空機格納庫を配置し、エレベータにより飛行甲板へ航空機を展開させるという、イタリア海軍のヘリコプター巡洋艦ヴィットリオヴェネトや、フランス海軍のヘリコプター巡洋艦ジャンヌダルクが、ヘリコプターを搭載する方策です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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