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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

熊本地震発災一ヶ月、九州を襲った直下型地震と激震連続発生と余震継続の緊迫を振り返る

2016-05-14 23:33:52 | 防災・災害派遣
■熊本地震発災一ヶ月
 熊本地震発災から一ヶ月が経ちました、一か月前の今日、宵の口に突如緊急地震速報が鳴り響き、夜闇に照明で浮かぶ熊本城が土煙に包まれる不気味な映像と共に震度七が速報されました。

 南海トラフ巨大地震による日本列島全域への津波被害が警鐘される中、2011年の東日本大震災以来の巨大地震は阿蘇を見上げる九州熊本を襲い、14日2126時の震度七という巨大地震を引き金に震度六の地震に限っても五回に分け発生する、日本地学史上稀にみる異常事態はその二日後の16日0125時再び緊急地震速報が発令、マグニチュード7.3の本震が発生し前駆地震が震度七との例のない地殻変動により大きな被害と混乱を及ぼしました、ここに改めて震災にひり被災された方々へお見舞い申し上げます。

 気象庁により熊本地震と命名された今回の地震は右横ずれ断層大陸プレート内地震として布田川日奈久断層帯が時間をかけ歪みを開放する事で、大型の余震が断続的に続き、震源域が本震発生後から熊本県熊本地方に熊本県阿蘇地方と大分県西部へと拡大し、阿蘇山付近での震源移動は阿蘇山が我が国最大の火山カルデラであり、その地震が巨大カルデラ噴火を誘発するのではないか、更に移動を開始した震源は九州四国近畿を経て本州を横断する中央構造線地震を誘発するのではないか、発生確証は無いものの無関係と断言できない不気味な状況も続きました。

 日本海へ隔て我が国が震災からの復旧を全力で模索する同時期に、北朝鮮は新型潜水艦弾道弾実験を連続実施、更に北朝鮮国内での核実験場では衛星情報収集により核実験徴候といえる変化が確認され、政府は敬愛強化を命じている最中の発災でした。新型弾道ミサイルムスダンは、米本土を狙う潜水艦発射弾道弾であるとされ、その射程から実験が成功した場合高い確率で1998年の弾道ミサイル実験と同じ経路、東北地方上空を飛翔する可能性が高く、日本へ落下する可能性が生じる、核実験は前回実施し失敗した水爆実験となる可能性がある。

 防衛省自衛隊は、今回の熊本地震へ政府命令により25000名規模での災害派遣を実施しつつ、更に弾道ミサイル実験及び水爆実験への警戒監視を強化し万一の際の破壊措置への準備を展開、更に2011年の東日本大震災期とは比較できないほど高まっている中国軍からの南西諸島に対する軍事圧力への警戒監視を両立させる、二方面作戦ではなく実に三方面作戦を全て遂行することとなっています。実任務の増大の中の対応の困難さは想像できるところでしょう。

 今回の熊本地震について。二度の震度七激震が襲うとの、過去にない震災ではありましたが、東日本大震災のような東日本全域が数mから数十mの津波に襲われ沿岸部が広範囲に壊滅し原発事故が発生するという状況、1995年の兵庫県南部地震阪神大震災のような広域火災という状況は、辛うじて回避する事が出来ました、が、死者49名、行方不明者1名、これは犠牲者40名となった2013年の台風26号伊豆大島ラハール災害を越え、東日本大震災以降最大の災害となってしまいました。

 熊本地震について、考えさせられる事象は、平時と有事の切替という点です。今回の地震は余震が断続的に発生するなか、極めて早い時期に災害救助体制が確立しましたが、インフラ復旧が応急復旧と完全復旧を同時に遂行するべく、結果的に応急復旧へ時間を要する事となり、空港施設や鉄道迂回路線設定等が遅れると共に、避難所運営についても、避難所運営主体が対処能力を持つ決定者へ集約出来ず、結果として救援物資が整理されない、あの湾岸戦争における過度な物資集積と整理配分の失敗、アイアンマウンテンと同じ状況となった事は否定できません。

 もう一つ、自衛隊への過度な依存です。この視点は被災者の視点からは配慮が欠けているとの批判も甘んじて受け入れる覚悟で指摘しますが、現在の生活支援への災害派遣任務は任務の規模と比較し部隊規模が大き過ぎるのではないか、という点です。自衛隊への災害派遣は人命救助に関する災害派遣、続いて行方不明者捜索に関する災害派遣、そして生活支援に関する災害派遣が要請され、自衛隊は現在生活支援に関する災害派遣として熊本県において災害派遣任務を継続中で、13000名が派遣されている、とのこと。

 災害対処人員が不足している、とは熊本県での現状との事ですが、自衛隊は戦闘を目的とした組織であり、この為の自己完結能力が災害時、通常のインフラが破綻している状況において独立し機能を発揮できるため、能力を維持できるのですが、電力が復旧し、交通もかなりの部分が復旧した現状では、自衛隊の輸送能力や整備能力等よりも民間の能力の方が遥かに大きくなります。給食支援一つとっても民間の方が調理総量では圧倒的に大きく、物資仕分についても方式は異なりますが、取扱量では桁が幾つも違うのです。

 自衛隊に可能となる能力と、民間の能力について、その特性を理解し防災任務を実施しなければ、当方が仄聞する限りにおいて、現在の被災地での任務に対する派遣規模が大きい、という状況があるようです。現在自衛隊は13000名の人員を展開させ、給食支援を三箇所、給水支援を三箇所、入浴支援を七箇所で実施しています、現在行方不明者捜索は完了していますので、この13か所での給食や給水と入浴支援へ各1000名の13000名が展開している事となります、配布給食は11日実績で1600食、給水は8t、入浴2400名、の支援を13000名で実施している、と。

 災害派遣の規模は、人員約13000名で延べ567200名が派遣、航空機は26機派遣中で延べ2195機が派遣、艦艇派遣は0隻と終了しましたが延べ300隻を派遣しました。その上で、現在の生活支援は、重要な任務ではありますが、給食支援三箇所1600食配給と給水に5t給水車二台未満の容量を三箇所で行い入浴を2400名へ提供するために13000名の部隊派遣、民間への任務移行の時期を防災担当者は真剣に考えるべきでしょう。

 一方で、平時手続きと有事手続きについて、被災者対応と避難所対応の主体は不明確であり、集積した物資や情報を管理する手法について、対応方法は例えば戦術研究のような新しい能力構築への投資が置き去りとされているほか、大規模災害へ対応する様々な機関の能力は年々変化している中、共同訓練等は形式的な手続きの報告会としての防災訓練を実施している程度でしかありません。復旧と復興への移行というあり方や、大量に集積される物資を管理し配布する新技術の普及は主体が無いまま、今日に至ります。

 自衛隊が本来求められる災害対処能力は、発災72時間の自己完結した空輸能力を発揮しての道路復旧までの輸送支援、発災100時間までの人命救助、停電復旧までの医療支援任務、水道網一部復旧までの給水支援、道路一部復旧までの給食支援、というものは考えられるのですが、その後の避難所運営は、全国規模ビジネスホテルネットワークの方が衛生面でのノウハウは大きく、給食支援等は指定協力企業として大手飲食店チェーン支援を受ける、避難所での物資仕訳等はイベント企画会社と平時から避難所毎の運営計画を構築し、道路と水道と電気が一部でも避難所付近までを連絡可能となった場合には、素早く移行できる体制が必要です。そして行政に求められるのは、これらを調整し情報を集約するシステム、そして有事の際にも確実に機能する通信基盤の整備である、と考えます。

北大路機関:はるな くらま
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