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巨大災害,次の有事への備え 03:福島第一原発事故当事者が把握していなかったCH-47の空輸能力

2016-05-18 22:25:48 | 防災・災害派遣
■責任者に求められる知識
 巨大災害,次の有事への備え、自衛隊にできる事とできないことがある、しかし、という視点から。

 自衛隊にできる事とできないことがある、しかし出来る事と可能な装備があるならば完全に発揮する必要がある、そしてそれ以上に、官民ともに自衛官でなくともその指揮を執る判断を行う立場の者が、自衛隊にできる事と出来ない事という視点からその能力や装備を正確に把握しなければ、せっかくの装備を最大限使用することは出来ない、だからこそ責任者に求められる知識がある、という視点について。

 東日本大震災では的確に東京電力化東北電力の高圧発電車を空輸できていれば、あの原子力災害が回避できた可能性があります。福島第一原発事故は交流電源を要する原子炉冷却機能が淡水による大容量注水機能について機能喪失、交流電源を要しない原子炉冷却機能も熱交換器を介した冷却機能は機能喪失し、原子炉圧力容器内水位が燃料露出水位まで下がりました。

 中央制御室の操作性は交流電源喪失により悪化し照明監視系のみ回復しています。福島第一原発事故の概略を見ますと、3月11日1446時地震発生、1545時に発電所敷地内燃料タンクが大津波によって流失し原子炉停止後非常用発電装置も破損します、1号機1636時に冷却装置が注水不能となり非常用炉心冷却装置ECCSをバッテリーにより稼動、2号機も全交流電源喪失に陥ってしまった、わけです。

 原子炉冷却、バッテリー動作冷却装置注水は12日まで非常用炉心冷却装置のポンプが作動中であり冷却水を注水するための非常用ディーゼル発電機が稼働せず非常用バッテリーにて稼動していた訳です。同日1903時、初の原子力緊急事態宣言が発令されました。メルトダウンですが、一号機は国会事故調査委員会報告書を見る限り、12日0049時には圧力異常上昇となっていることからこの時点で格納容器は高圧状態で破壊されていなかったと塩調査委員会報告書にはあります。

 これもバッテリー切れにより、1400時頃に核燃料の一部が溶融し1412時には原子炉周辺モニタリングポストでの放射性物質異常数値が検知されセシウムが溶融し炉心融解、メルトダウンの発生が推測される事態となりました、1430時に圧力逃がし弁の開放に成功したものの損傷となっている訳です。ここで、今日的に錯誤が要因と考えられる事態が発生しています、東京電力は在京アメリカ大使館へ米軍のヘリコプターで真水を大量輸送する要請が行われているわけです。

 実は、在日米軍の輸送ヘリコプターは第1海兵航空団が普天間飛行場に配備しているCH-53のみで、航続距離の面から福島第一原発へ即座に展開できません、沖縄からフェリー空輸ならば福島第一原発近傍の神町駐屯地飛行場へ直接展開可能なMV-22はまだ在日米軍に配備されておらず、配備されているCH-46はやはり航続距離が不足します。厚木航空基地の第五空母航空団にはバートレップとして艦艇間の物資輸送用にUH-60が数機、空軍の横田基地にはUH-1N,陸軍もキャンプ座間へUH-60をそれぞれ数機、運用されている。

 ただし、海軍は精密部品などの輸送用、陸軍と空軍は要人輸送用に配備していまして、もともと大きな物資輸送は考えていません。ヘリコプターですので共に水は吊下げ空輸により輸送は可能ですが、バンビバケットによる吊下げを行う場合、一度の真水空輸能力は0.5tまでです。東京電力が企図した大量の真水、の総量については不明です。ヘリコプターによるバンビバケットでの真水輸送能力ですが、UH-60系統の航空機では限度がありました。責任者に求められる知識というものがある、これを欠いていると自覚するならば幕僚を置くべきだ。

 当時原子力災害対処への政府対策本部の優先順位により左右する命題ではあったのでしょうけれども、陸上自衛隊と航空自衛隊が大量に装備するCH-47輸送ヘリコプターであれば6t、UH-1やUH-60の12倍を空輸可能です、福島第一原発付近では木更津第1ヘリコプター団と相馬原の第12ヘリコプター隊、入間ヘリコプター空輸隊に三沢ヘリコプター空輸隊で約50機が配備されており、震災支援へ稼動機全機が運用中となっていましたが、真水輸送能力により回避できる被害があったならば、投入されていたでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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