北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【くらま】日本DDH物語 《第四二回》F-4高速対潜機構想,主眼は空対艦任務の高速哨戒機か

2018-05-19 20:05:50 | 先端軍事テクノロジー
■対艦ミサイル装備前の自衛隊
 F-4が厚木航空基地や八戸航空基地へ配備されていたらば、その情景は今日と大きく異なるものとなっていたでしょう。

 海上自衛隊がF-4高速対潜機の導入を断念した後に航空自衛隊はF-XX計画を本格化させます。F-XX計画はF-4EJ戦闘機に続く戦闘機計画で、具体的にはF-4EJ戦闘機を航空自衛隊はF-104戦闘機に続く新戦闘機として導入したのですが、実質的にはF-104に続き導入するものの、置き換えるのは既に旧式化が著しかった朝鮮戦争時代のF-86戦闘機でした。

 F-X選定として航空自衛隊がF-4E戦闘機をF-4EJ戦闘機として選定したのは1966年、当時は第三次防衛力整備計画期間中に四個飛行隊所要と予備機を含めた104機のF-4EJを取得する計画でいましたが、ASQ-91爆撃計算機やARW-77空対地ミサイル誘導装置の撤去等の日本仕様改修により量産開始が遅れ、アメリカでは1972年にF-15が初飛行を迎える。

 F-XX計画は1973年度より耐用限界を超え除籍が始まると考えられたF-104戦闘機の後継機選定です。ただ、F-4EJ戦闘機の量産計画は続いていた為に1973年からF-XX選定機の調達を開始するのではなく、1976年度までにF-4EJ戦闘機の生産計画を継続するか、調達継続を拡大するのかを画定する事で、欧米機導入や国産戦闘機案も競合していた選定です。

 結果的にF-4EJ戦闘機の生産続行が決定されるのですが、海上自衛隊のF-4高速対潜機構想には、同盟国アメリカ海軍と同系列の、海軍が運用していたのはF-4EではなくF-4Jなのですが、このF-4系列の戦闘機が三菱重工にてライセンス生産されていた中にあって、間もなくF-XX選定の結果如何によっては生産終了となる焦りがあった可能性もあります。

 そして航空自衛隊が実施していた航空機による対艦攻撃任務、当時の海上自衛隊には127mm艦砲や76mm艦砲、護衛艦や潜水艦に搭載する長魚雷が主力であり、一方でソ連海軍では射程の大きな艦対艦ミサイル、小型のミサイル艇へも搭載可能P-15/SS-N-2スティックス配備が始まり、1967年にはエイラート事件、イスラエル駆逐艦が撃沈されました。

 自由主義陣営は対艦ミサイルの開発に後れを取っていました、もっとも初期に開発に着手していたのはスウェーデンやノルウェーといった北欧諸国でスウェーデン空軍は1955年という早い時期にサーブ32戦闘機へRb-04C空対艦ミサイルを配備しています。しかし、これは例外というもの、エイラート事件と共に自由主義諸国は対艦ミサイル開発を急ぐ事に。

 ターター艦対空ミサイル、アメリカ製草創期の艦隊防空ミサイルですが、その発展型であるスタンダードミサイルを中間司令誘導により超低空目標へ命中させる能力がある事から、アメリカ海軍は急きょスタンダードミサイルを艦対艦ミサイルへ転用しましたが、こうした泥縄的な施策と同時に対艦ミサイルの模索が始まり、アメリカは欧州製ミサイルを断念しハープーンの開発を決断したのは1971年でした。

 ハープーンミサイルは1977年に完成しますが、我が国も防衛庁技術研究本部、現在の防衛装備庁が1973年より空対艦ミサイルの開発を開始、1980年に80式空対艦誘導弾ASM-1として完成しています。他方、ASM-1は航空自衛隊の装備であり、海上自衛隊が対艦ミサイルを装備できたのは1981年竣工の護衛艦いしかり、まで待たなければなりませんでした。

 高速対潜機として海上自衛隊がF-4を必要とした背景には対艦ミサイル実用化までの期間に艦砲が対抗できない遠距離からのソ連艦隊対艦ミサイル脅威へ対抗する戦闘機を必要としていた為でしょうか。反面、仮にこの時点でF-4を導入していたらば、海上自衛隊は戦闘機運用基盤と戦闘機操縦要員教育体系を独自構築できたことに、なっていたでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 平成三〇年度五月期 陸海空... | トップ | 【日曜特集】岐阜基地航空祭2... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

先端軍事テクノロジー」カテゴリの最新記事