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スクランブル発進、平成22年度4~12月の動向を防衛省が発表

2011-02-08 23:29:31 | 防衛・安全保障

◆ロシア機が多数を占めた対領空侵犯措置

 防衛省は4~12月の航空自衛隊による対領空侵犯措置任務の緊急発進を行った回数を発表しました。BSで史上最大の作戦がやっていて、観ていたらばこんな時間に、ちょっと本日は手短に文章だけ重ねてみました。

Img_32532/3日付 ニュース トップ 22年度4~12月緊急発進 対ロシア機 76%で最多 ロシア機と中国機の飛行パターン・・・ 統幕は1月27日、空自機による22年度第3四半期まで(昨年4月1日から12月31日)の緊急発進(スクランブル)回数を発表した。 それによると、第3四半期のみの緊急発進回数は104回で、1~3四半期までの合計は290回(21年度同期比77回増)と増加した。領空侵犯はなかった。 国籍別の緊急発進回数(推定を含む)は、対ロシア機が220回(約76%、21年度同期140回)と例年同様最多で、次いで対中国機が48回(約16%、同23回)、対台湾機が5回(約2%、同18回)。対北朝鮮機はゼロ(0%、同8回)、民間機やバルーンなどと見られる判別困難な「その他」に対しては17回(約6%、同24回)だった。 方面隊別では、北空125回(21年度同期85回)、中空69回(同38回)、西空31回(同24回)、南混団65回(同66回)と軒並み増加した。 第3四半期までの特徴としては、露軍機がわが国領空に沿って日本海から太平洋、沖縄方面に至る列島周回の長距離飛行が目立った。また、ガス田や尖閣諸島を巡って東シナ海方面に飛来する中国機への緊急発進も増加している。 緊急発進は国籍不明機がわが国領空に接近した時、戦闘機などを発進させて領空侵犯を未然に防ぐ対領空侵犯措置任務で、緊急発進した戦闘機は対象機に対して無線による通告・警告や翼を振るなどの機体信号を送り、無視した場合は強制着陸、警告射撃等の措置が認められている。 わが国では昭和33年に同任務が開始されて以来、緊急発進回数は昭和59年度の944回をピークに平成元年以降はソ連崩壊の影響で年間150回程度に減少していたが、最近は再び露軍機の増加と、軍備増強を図る中国軍機の増加で同300回程度と増加傾向にあるhttp://www.asagumo-news.com/news/201102/110203/11020309.html

Img_3292  日本の防衛に関して識者等がテレビ番組などで討論をしますと、中国からの圧力や政治家の方も中国の海洋進出を警戒するという論調が目立ちます。しかし、実際に日本周辺に航空機を進出させてくるのは大半がロシア機だ、という事を今回の数字が物語っています。ロシアは中国ほどではないにしても経済状況は好転し、ひところのソ連崩壊後のルーブル暴落等に端を発する経済混乱は今や過去の話となっています。また、海洋資源の面で北方領土に関する日本との係争事案もありますので、日本の防衛を考える上では、西方の脅威、というよりは実質的に北方の脅威に加えて西方の脅威が生じている、という理解が必要なのでしょうね。中国空軍の航空機は現在では国産化に努めていますが、エンジン開発に手間取っていまして、低バイパス比の戦闘機用エンジンは冷却などの部分で日本でもいまだに完全に国産化できない課題を有しています。日本の場合は航空自衛隊創設と戦後の戦闘機ライセンス生産開始以来、この種のエンジンの国産化や技術開発には一応取り組んでいるのですが、日本の冶金技術や金属加工技術を駆使しても残念ながらものにできない高度な技術、そういう意味で中国の戦闘機はロシアからのエンジン輸入に頼り、中国製エンジンを搭載した戦闘機の性能は信頼性や出力の面で問題視されています。他方で、ロシアは世界でも数少ない戦闘機用エンジンの国内開発が可能であり、高度な戦闘機の国産技術を持っているとともに、長距離爆撃機、一部には長距離を超音速で飛行できる機体も保有しており、実際に日本周辺に進出させ、航空自衛隊が約20機の戦闘機等を緊急発進し追尾した事例もありました。中国機は日本周辺においては南西諸島周辺を飛行する程度の事例が大半を占めているのですけれども、ロシア機は日本列島に沿って飛行し北海道から沖縄まで進出する長距離飛行を度々実施しています。

Img_3326  日本は西方に脅威がシフトしたのではなく、脅威が増大して多方面から圧力を受けている、という実情を認識して戦闘機定数についてはかなり真剣に増勢を検討するべきなのではないでしょうか。西方の防衛に重視し過ぎて北方を手薄にするという論理は、西方さえ平和であれば北方は戦果に見舞われても良いという論理が成り立たないように無意味な事でして、確かい財政難ではあるのですが、財政難でも国として果たすべき最低限の事はやってもらわなければ、と。戦闘機定数ですが、次期戦闘機選定とも合わせて考えなければなりません。これまで航空自衛隊の戦闘機は基本的に日本国内の工場で部品を生産し、機体を組み立てていくライセンス生産方式を採ってきました。これでスト日本国内で航空自衛隊の隊員による整備に加えてメーカーでの定期整備を行う事が出来ますし、破損するような事案があったとしても日本国内で修理に必要な部品を調達することが一定の範囲まで可能でした。しかし、機密性が高いF-22、これは多分現時点では不可能でしょうが、また多国間共同生産を行うF-35等は日本国内でのライセンス生産は基本的に望めないでしょう。すると補修整備や予備部品調達を日本国内で行えない事になりますので、戦闘機の稼働率は当然低下してしまう訳です。高性能であれば機数を補う事は出来るのでしょうが、以下に高性能な航空機でも同時に二か所に進出することはできませんので必要な数というものが出てくる、現時点での防衛予算の規模では難しいですが、F-35を有償軍事供与により一定数直輸入して、主力はF/A-18Eをライセンス生産する、そして必要な一定数の稼働率をF/A-18Eにより確保するという案や、もしくは予備部品や補修を円滑に行えるよう米軍との協同運用基盤をアジアに構築して米軍以外の航空機についてもその協同運用基盤で運用する、いわば集団的自衛権に関する運用や武器輸出三原則の運用に関する改正を行うか、もしくは日本の国是を維持しつつ戦闘機稼働率を維持するには、例えばC-2輸送機を現行の輸送機数以上に抜本的に増強し、F-35であれば、予備部品を恒常的にアメリカから供給できる環太平洋空輸補給態勢を航空自衛隊に整備させるか、そういう事も考えなければならないのかな、と思いました。

HARUNA

(本部祖具に掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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4 コメント

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そうですね。F35輸入とサポートを受け、F18は国内... (軍事オタク)
2011-02-09 13:23:11
そうですね。F35輸入とサポートを受け、F18は国内生産の方法ももちろん可能性大いにありますね。
そうすると、4機種混在時代が長く続きますね。
今までは最大でも3機種かな?F4・F15・F1等。
あ、F2もかぶる?、4機種かな?一応。でも短期間
二機種配備だと、比較的長期間F15・F2・F18・F354種配備になるわけだ。
ステルス対策上仕方が無いかもしれませんね。
ステルス対策訓練もできるし、敵地攻撃能力も大幅に向上する。さてその場合、F35はどこに配備するのでしょうかね?
返信する
なぜ、どんなに予算がかかっても、戦闘機用のエン... (d038849)
2011-02-10 23:09:29
なぜ、どんなに予算がかかっても、戦闘機用のエンジンを完全国内開発しようと、コメントしないの?
その気概がなければ未来はないね!
返信する
軍事オタク 様 こんにちは (はるな)
2011-02-11 12:12:12
軍事オタク 様 こんにちは

機種が増えると岐阜基地航空祭が、・・・、いや何でもありません。

機種ですが、1977年から1982年までの期間はF-86、F-104J,F-4EJ,F-1の四機種時代がありました。1981年から1990年までの期間もF-104J,F-4EJ,F-15J,F-1の時代があったようです。

F-35の配備、仮に行うとして稼働率がどうなるかで決まるでしょうね。
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d038849 様 こんにちは (はるな)
2011-02-11 12:22:19
d038849 様 こんにちは

低バイパス比エンジンの開発はとにかく時間が掛かりますからね、実用性あるものの開発にはどう頑張っても十年二十年掛かる、政治が予算計上でそれだけ気長に待ってくれるか、ということに掛かってきます。

エンジン開発よりも、長期的な視野で物事を見据え、必要な短期政策を実際の重線変化に上手く適合できる政策を実行できる政治家を戦闘機定数と同じ270名くらい開発、失礼、養成できれば、戦闘機用エンジン開発、その一歩となるでしょう。しかし、その部分を飛ばしたら、現在の民主党政権程度の政治家しか望めません、そして今の防衛に関する防衛政策程度しか、ね。

具体策というと、思い浮かぶのは、中等及び高等教育における知識集約教育と討議教育の並列重視、保守系政党学生団体の養成と政治家候補の幅広い基盤構築、労組組織率向上、地方議会を中心とした夜間化による政治参加方式の見直し、これくらいはやってみてしかるべきなのかな、と。政治家の養成、遠いように見えてこれが唯一の近道です。
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