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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

陸上自衛隊下志津駐屯地創設52周年 高射学校つつじ祭 観閲行進

2007-08-14 19:11:36 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

■下志津駐屯地祭2007

 高射学校創設記念行事は、部隊整列、指揮官巡閲、指揮官訓示と来賓祝辞を終えて、いよいよ観閲行進へと進んだ。観閲行進準備の号令と共に、陸上自衛隊の装備する高射特科装備が続々と前進を開始した。

Img_9755 観閲行進の先頭は、高射学校本部の車輌に掲げられた高射学校旗の入場と共に開始された。高射特科職種の装備は重装備が多く、観閲行進は徒歩行進を含まない、完全な車両行進によって展開された。軽快なリズムを奏でる音楽隊の演奏と共に車輌は前進する。

Img_9760 高射学校本部管理中隊の車輌群。第一、第二教育部、総務部、研究部、作戦評価室が置かれているが、観閲行進は主に隷下に置かれた実動部隊である四個の中隊と高射中隊により進められる。学校とはあるものの、有事の際には、実戦部隊としても運用される精強部隊ということを実感できる。

Img_9767  本部管理中隊のレーダー車輌。このレーダーが収集した情報を、師団対空情報処理システム(Division Air Data processing System)、通称ダドスにより分析する。こうして、脅威度評価を行い、必要に応じて対空警戒警報情報を発令し、隷下の防空を展開する(参考:次世代の陸上自衛隊 かや書房)。

Img_9770  師団や旅団の高射特科大隊本部管理中隊に装備し、低空用レーダー装置JTPS-P18(通称P-18)。低高度を飛行する航空機に対して全周にわたる警戒を実施する。運用時には、車体を固定し、レーダーアンテナを高く延伸し運用する。電源なども車載されており、システム一式の自己完結型。Xバンドレーダー方式で重量は1.8㌧、三菱電機製の装備である。

Img_9771  対空レーダー装置JTPS-P14(通称P-14)。周波数範囲はSバンド、アクティヴフューズドアレイレーダー方式であり、運用時は地上設置される。1988年より配備され、三菱電機製。なお、これらは主に師団や旅団に配備されるが、方面隊高射特科群は、独自に対空戦闘指揮装置を保有している。しかし、方面隊には目標情報収集手段が主に航空自衛隊バッジシステムと連動させている点に、脆弱性を指摘する声もある。

Img_9777  第一中隊が運用する81式短距離地対空誘導弾の車列が進入してきた。通称:短SAM、方面隊装備のホークミサイルと、高射機関砲の間隙を縫う装備として導入された装備で、基本的に師団高射特科大隊に4セットが装備されているとのこと。

Img_9779  射撃統制装置。80年代には最新装備といえたフューズドアレイ方式のレーダーを運用している。東芝製で、一セットは、射撃統制装置、そして二基の発射機により構成される。同時二目標に対処でき、粗追跡では16目標を識別することが可能だ。

Img_9784  発射機。後ろの部分に左右各二発、計四発を搭載する。なお、電子戦状況によっては電波管制下でも運用できるよう、オプティカルサイトによる誘導が可能である。これは誤解を恐れず簡単に説明すれば、ビデオカメラのようなもので目標を捉える事で誘導を行うもの。

Img_9787_1  93式近距離地対空誘導弾、通称近SAM。低空目標に対する対処を主たる目的とした装備品。複合光学誘導方式で、画像誘導方式、赤外線誘導方式を併用しており、射撃統制を車体より離れた安全区域から展開することが可能である。高射特科大隊には12~16輌が配備されているものと推測する(観閲行進の規模より推測)。

Img_9770_1_1  この種の装備の射程は、一般に脅威対象のヘリコプターなどが搭載する対戦車ミサイルとの射程が拮抗しているが、レーダーなどに支援され、地形や障害物などにより偽装された装備品は、空中からの発見が困難であり、他方で、ヘリコプターの発見はローター音などにより容易に発見される。航空機と高射特科の駆け引きは、このようにカタログデータからは読み取れないことがわかる。

Img_9792  高射特科部隊の最新鋭装備、第四中隊の03式中距離地対空誘導弾。後方には行進に備えて待機する第三中隊の高射機関砲が見える。中隊旗を掲げた73式小型トラックと後方の車輌を見比べると、車輌の大きさが良くわかる。

Img_9796  03式中距離地対空誘導弾は、ホークミサイルの後継として開発されたもので、射撃統制装置、射撃レーダー装置、発射機、無線中継通信装置などからシステムが構成される。欧州ではホークの後継としてMEADS(Medium Extended Air Defense System)として新ミサイル計画がたてられたが、共同開発は共同製造を意味することから武器輸出三原則に抵触する可能性があり、国産で進められた。

Img_9775_1  射撃統制装置(と思われる車輌)。国産開発は、開発費の全負担、量産効果の低下などで不利な点が指摘されるが、MEADSの開発期間の延長、F-35戦闘機の共同開発における技術移転摩擦などの問題があり、タイフーン戦闘機のような成功例も多いが、一国で国産した場合にも、開発は順調に行われるという利点はあるようだ。

Img_9798_1  ミサイル発射機。余り詳しくないので恐縮であり、参考とした資料も推量に基づくものが多いと考えられることを予めお断りしておく。ミサイルは、発射後の暫く、プログラミングにより目標に向けて飛行し、目標に接近するとミサイル本体のホーミング機能により命中に至る。

Img_9802_1  従来のホークミサイルが73式大型トラックにより牽引していたのに対して、中SAMは、自走式の車体に六連装のミサイルを搭載している。航空自衛隊のペトリオットの牽引には特大型トラック(陸上自衛隊の中砲牽引車と同じ、基本的には74式特大トラック)が用いられているが、本装備の車輌は、より大型である。

Img_9800  レーダー装置。全くの推測だが、搭載する発電機の大きさから、相応の出力を有すると考えられる。師団や旅団の有するダドス、そして航空自衛隊の警戒管制網を管理するバッジシステムとデータリンクを行うことで、より精密で高い目標捕捉能力を発揮できると考える。

Img_9781_1  ミサイル弾薬車と思われる車輌。余り自信は無いが、折りたたんでいるものはクレーンであると推測する。アームの支柱から推測できる強度では、六発一度に再装填は不可能であろうが、一発づつ再装填するのならば、四連装のペトリオットミサイルよりも時間が掛かりそうである。再装填のアーム操作はコンピュータによりある程度自動化されているのだろうか。

Img_9804_1  弾薬車。ミサイルコンテナを搭載していない状態。この車輌は、96式装輪装甲車などの支援を行う重装輪回収車とも共通化されている。この車輌の後部に、52口径155㍉榴弾砲と半自動装填装置を搭載したら、と考える人は多いであろう。

Img_9804  高射教導隊第310高射中隊のホークミサイル部隊。改良ホークとも呼ばれ、方面隊の高射特科群において使用されている。低空から高空の目標まで幅広く対応できる。セミアクティヴレーダー誘導方式のミサイルで、350㍉もの弾体の直径は改修への余裕を有し、1954年の開発以来、改良を重ね、今日でも高い信頼性を維持する装備である。1991年より、最終発展型の改善3型が配備されている。

Img_9786_1_1  高出力イルミネーターレーダー、略称はHPI。HPIからレーダー波を目標へ照射し、発射されたホークミサイルを誘導する装置。誤解を恐れずにいえば、ミサイル護衛艦のミサイル誘導用イルミネータと同様のものと理解してもいいだろう。

Img_9784_1  パルス捕捉レーダー。この他、改善Ⅲ型は中隊指揮装置を、Ⅱ型は中隊指揮装置ではなく測距レーダー、情報伝達中枢、中隊統制装置中枢を分けて装備している。03式中SAM,改良ホークは射程が長い為、基本的にアメリカ国内の演習場で射撃訓練を行う(開発時は技術研究本部の新島射撃場などで射撃していると推測する)。

Img_9816  第三中隊の87式自走高射機関砲が会場へ入場してくる。先頭を行くのは96式装輪装甲車。続くように三輌が一列に走っている。戦車部隊を直接掩護する装備として第七師団隷下の第七高射特科連隊、そして第二師団の第二高射特科大隊などに装備されている。

Img_9824_2  87式自走高射機関砲は、エリコン35㍉機関砲L-90について、必要な三基の発電機から生じる騒音、射撃準備に時間を要する牽引式機関砲では急襲肉薄した脅威に対処できないとの意見から開発された。第三次中東戦争、第四次中東戦争、ヴェトナム戦争などの戦訓から従来型の機関砲によっても高い効果を発揮できるとの判断も背景にある。

Img_9791_1  Xバンドの捜索レーダーは0.45~20kmの捜索範囲を有し、追随レーダーはパルスドップラーレーダーにより目標を確認、35㍉機関砲は-4.5°~84°の範囲で俯角仰角をとることができ、急降下目標にも対処可能だ。レーダーが使用出来ない状況下でも低光TV、レーザー照射により対空戦闘を展開可能である。

Img_9838  発射弾数は5発から20発に設定されており、3500㍍以遠の目標に対しても射撃が可能で、自爆処理時の最大射程は5000~6000㍍。初速は1180㍍/秒。方位角、高低角、射距離を正確に測ることで走行間射撃も可能である。特に、攻撃ヘリに対しては毎秒17発の35㍉焼夷徹甲弾が炸裂すれば照準は困難になると思われる、今日でも有用な装備である(参考:丸659号)。

Img_9853  高射教導隊第334高射中隊の03式中SAM。八輪式の車輌には、運転台をみると三名分のシートが並べられている。運転席と双列座席の間に置かれているのは、無線機だろうか。個人的には、習志野から展開した航空自衛隊のペトリオットミサイルにも観閲行進に参加してもらいたかった。

Img_9834  この他、高射教導隊直接支援部隊の車輌も観閲行進に参加した。多くの車輌が走った後のグラウンドには大きな轍が出来ており、会場に重装備の部隊による観閲行進という余韻を残した。

 こうして観閲行進が終了し、87式自走高射機関砲や03式中SAMという装備が盛り上げた興奮も冷めぬ内に、会場は訓練展示準備へと移った。

HARUNA

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