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検証-首都直下地震【2】自衛隊縮小の現状と火災旋風や群衆雪崩を阻止する非常事態法の整備

2019-12-03 20:02:44 | 防災・災害派遣
■被害局限,平時手続きの限界
 NHK想定の被害は広域停電ブラックアウト無、津波被害無、原発被害無、液状化被害無、という首都直下型地震の想定でしたが確かに平時感覚では大災害に違いありません。

 首都直下型地震にしても南海トラフ地震にしても、2011年東日本大震災の頃よりも予算不足から自衛隊ヘリコプターが相当減少し、災害派遣能力に影響が出る事が無視されているように思います。自衛隊は有る装備で最大限院無を行うだけですので反論は出ません、しかし東日本大震災の頃の様な空輸は航空機が足りない分出来ない事は間違いありません。

 自衛隊の災害派遣能力について。年度末にはOH-6D観測ヘリコプターとRF-4戦術偵察機の最後の機体が耐用年数限界により退役します。災害時には一番最初に離陸し情報収集に当る航空機ではあります。元々はRF-4戦術偵察機はEJとE型が40機あり、OH-6D観測ヘリコプターと前型のOH-6J観測ヘリコプターが180機配備されていたが、遂に最後に。

 災害派遣、OH-6D観測ヘリコプターは川崎重工製の悪天候でも飛行し複合センサーにより情報収集を行うOH-1観測ヘリコプター250機に、RF-4戦術偵察機はF-15戦闘機を元に東芝が開発した先端偵察装備を搭載したF-15偵察型のRF-15戦術偵察機というべき機体に置換えられる筈でしたが、冷戦後の予算縮小機運とミサイル防衛等新任務で頓挫したまま。

 巨大地震が発生した際に空からの情報収集にあたる航空機は、間もなくRQ-4無人偵察機が3機配備、試作機を含め33機有るOH-1観測ヘリコプターが広大な日本列島に広く配備されています。中には定期整備で飛行できない機体もありますし、この他にスキャンイーグル無人機等が配備されますが防災ヘリコプター等との航空管制について未知数でもある。

 東日本大震災、2011年の大災害では全国の防災ヘリコプターが山形空港等の内陸飛行場に集結し空からの救援に向かいましたが、整備員不足や予備部品の互換性を欠く状況に航空燃料の不足により厳しい運用に曝されています。航空行政の一本化という視点での対策は、勿論航空管制などで進んだ部分はあるのですが、まだまだ不十分であり、このままでは。

 航空輸送、理想は自治体防災ヘリコプターや消防ヘリコプターと自衛隊の機種を可能な限り統合する事です。しかし、これは一歩間違えれば官製談合の温床と見做されかねず、国家戦略防災ヘリコプター構想というような大きな視点で、政治が批判を覚悟しなければなりません。自衛隊機後継機取得も含め、政治が批判覚悟し進める気概が求められましょう。

 憲法との関連、条kの政治の覚悟という部分ではこの視点も必要だ。例えば首都直下型地震では破壊消防を組織的に行えれば人命をかなり救う事が。東京消防庁によれば火災運命共同体という、木造家屋密集地域では消火不能となる地域が東京二十三区に複数存在し、倒壊家屋や断水により消防不能となり地域が鉄筋コンクリート建造物地域や車幅の広い幹線道路までは火災旋風により延々と延焼する可能性が。

 破壊消防。火災運命共同体という懸念は避難以外打つ手なしとみえます。しかし、破壊消防を行い防火帯を構築できるならば、救える人命は焼死しないという意味で増えるのですが、破壊消防は財産権が公共福祉という観点から消防法に余地を残している一方、行方不明者が家屋の中にいる限り生存権はじめ簡単には実施できません。実際責任は難しく重い。

 非常事態法を制定し憲法を非常時には例えば12時間でも内閣が緊急に停止させ破壊消防を生存者捜索よりも火災阻止を優先させるならば、つまり焼死か爆死か、この選択を行うことで防火帯を広く採ることが出来るでしょう。問題は、破壊消防という選択肢を消防が採る事で大量の人命を救うという常識を定着させる必要があるところです。無ければ無理だ。

 ダイナマイトで家屋を破壊し延焼防止帯を造る、これを迅速に行うならば火災旋風の移動を阻止する事も出来るでしょう。しかし、ダイナマイトの爆発は油脂焼夷弾と違い延焼しませんし、爆弾と違い致命的破片も生み出しませんが、防火帯を構築する前に退避が必要です。別の爆発やテロ攻撃と流言飛語の原因ともなります。その為に広報が重要でしょう。

 破壊消防、これも消防は一応訓練をしている筈なのですが中々に経験者と出会いません。戦後実施した事例も聞かない。故に消防ヘリコプターの拠点飛行場にダイナマイトを備蓄し、災害時にはファストロープなどでレスキュー資格を有する消防吏員が展開し迅速に行う必要があります。平時から勝田の自衛隊施設学校と協力し訓練を行う必要もありますね。

 群衆雪崩と帰宅困難者。実は冷静に考えればこれを両方とも回避する方策があります、戒厳令です。具体的には幹線道路を避難誘導経路以外の通行を制限し、事実上の外出禁止令を発令する事で群衆雪崩を移動させない、という手段により強制的に停止させる事が出来ます。現行法では災害救助法に基づく警戒区域指定で移動させる事は出来るのですが逆は。

 災害救助法に基づく警戒区域指定、火山災害など。そして原子力非常事態宣言に基づく警戒区域指定、この二つは警戒区域内の住民を罰則と共に移動させる事が可能です。しかし現行法では移動させない、群衆雪崩を阻止する為にその場に留まってもらう、という法的権限は無いのですよね。憲法上の移動の制限、広義の拘束にも含まれる余地があります。

 戒厳令により首都圏外縁部と中心部の中間部に外出禁止を命令し、火災延焼地域には災害救助法に基づく警戒区域指定を行う。火災からの避難者には群衆雪崩の危険が生じますが上述の破壊消防と絡め、震災犠牲者を局限化する上では執り得る選択肢です。その上で、戒厳令発令を24時間とした上で徒歩帰宅以外の選択肢を災害対策本部が準備できれば、と。

 疎開輸送というべきでしょうか、帰宅困難者を動かさない分を輸送支援で代えればよい。戒厳令と共に都内近県全ての路線バス及び観光バスや社用バスを動員する法整備を行い、総務省警察庁臨時措置によりトラックなど貨物自動車への旅客輸送緊急許可の省令を発令する、その上で戒厳令発令中に近郊への帰宅困難者輸送準備を行い、いわば24時間待てば国が帰宅支援を行う、そうした措置が有効かもしれない。

 現行法では指定公共事業者として有事の際に協力を求める事は出来ますが、総動員で人命救助に充てる法整備までは踏み込んでいません、現行憲法では限界がある為です。無論憲法を変えてまで万一の際の人命を救わずとも、犠牲を甘受しよう、という護憲第一の反論もあるでしょうが、国家の役割を考えるならば、敢えて法整備の必要性はあると考えます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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