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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

スーダンクーデター!准軍事組織RSF-民主化拒否し首都ハルツームなどで武装蜂起-緊迫のスーダン情勢

2023-04-18 20:01:41 | 国際・政治
■戦闘激化-内戦の危機!
 先週の久居駐屯地祭では訓練展示の仮設敵が黒旗に白地の髑髏という旗を掲げていて思わず、ワグネルかよと叫んでしまいましたが、アフリカでは似たような情勢が現実世界に。

 スーダン情勢、この数日間で一気に緊迫化しました。スーダンは2019年の段階で在留邦人は100名規模、圧制国家との資源取引などを行わない欧米有志諸国と歩調を合わせるわが国では、資源国であり4700万とアフリカ有数の人口を誇るスーダンとの経済関係は少なく、その民主化を待っている段階ではあるのですが、クーデターと内戦の危機にある。

 民主国家への移行を期待する野党勢力として、自由変革同盟が長年独裁政権へ民政移管を要請していました。そしてスーダン情勢は何度ものクーデターと民政移管への暫定政権か独裁政権というものを繰り返してきたのですが、今回はクーデターにより、民政移管ではなく内戦へ向かっている懸念があります。そして後述の諸事情から好転見通しがない。

 スーダン軍と准軍事組織RSF,先週末に突如として戦闘が発生しました。先ず基本知識として、長らくスーダンの独裁者として君臨したバシール大統領は2019年4月のクーデターにより失脚、イブンオウフ第一副大統領兼国防大臣が全権を掌握しました。しかし、当時全土に及んでいた自由変革同盟はバシール大統領もクーデターも支持はしていません。

 事態が起こったのは4月11日、准軍事組織に位置付けられるRSFが突如としてスーダンの首都ハルツームでの動員を実施、更にスーダン北部のメロウェ市内にもRSF部隊が展開を開始、スーダン軍施設への進駐を開始します。スーダン政府は直ちに退去を命じるも、RSFは逆に13日、首都一部地域からのスーダン軍退去を要求、緊張状態が高まる。

 全権を掌握する暫定軍事評議会はこれを受けクーデター政権を暫定民主化準備政権と位置づけ、イブンオウフ暫定軍事評議会議長は辞任、アブドゥルファッターハアブドッラフマーンブルハーン中将が暫定軍事評議会議長を引き継ぎ、続いて2019年8月には経済学者のアブダラハムドク氏が暫定政府指導者として民主化を進めるところでした。ところが。

 2021年10月、アブダラハムドク首相は陸軍のクーデターにより政権を追われます。これはアブドゥルファッターハアブドッラフマーンブルハーン主権評議会議長が、自らの支持母体である陸軍を通じて起こしたクーデターであり、現在暫定大統領はアブドゥルファッターハアブドッラフマーンブルハーン氏である、ここで今回の事態となりました。

 准軍事組織RSFとは。バシール政権時代に反対勢力掃討に利用されたテロ組織ジャンジャウィードの現行スーダン暫定政権協力勢力です。ジャンジャウィードとは1988年のリビア軍チャド侵攻に際してリビアの独裁者カダフィー大佐に呼応した武装集団ですが、北アフリカ最強を自称したリビア戦車隊は、あっけなくトヨタ製市販自動車に殲滅される。

 トヨタ製ピックアップトラックにはチャドの友好国フランスが緊急輸送したミラン対戦車ミサイルが搭載され、2㎞先から戦車部隊を自在に攻撃、これを受けリビア軍は撤退し、ジャンジャウィードはスーダン領内に退避、その翌年にクーデターを起こしスーダンの全権を掌握したバシール大統領は可能な範囲で利用することを条件に聖域を提供します。

 ダルフール紛争を抱えていたスーダンはジャンジャウィードを利用しますが、同時にテロ行為や虐殺行為を行っており、バシール大統領はこの批判をかわすべくジャンジャウィードをPDF人民防衛軍として正規軍へ変革する試みを行います。バシール大統領失脚後、PDF人民防衛軍は解散され、国軍へ編入するかが大きな議論となっていましたが。

 RSF即応部隊は解散したPDF人民防衛軍の後継組織であり、クーデターを引き起こした陸軍はジャンジャウィード出身の勢力と陸軍の不干渉を静観していましたが、民主化を進める自由変革同盟は、文民統制を拒否する独裁政権の私兵部隊に否定的な姿勢を一貫しており、こうした中でのRSF即応部隊によるクーデター勃発、内戦危機となりました。

 ワグネル。さてジャンジャウィードという一武装勢力、自動車さえ買えずラクダで神出鬼没を唯一の武器としていた勢力が何故ここまで勢力を伸ばしたのかという点ですが、これは前述した複雑な理由があります、スーダンは資源国であり、しかも日本を含む欧米諸国は抑圧国家との資源取引を行わない、すると抑圧国家や権威主義国家が独占できる。

 スーダンの金などの地下資源は、中国やアフリカの一部や中東の一部とロシアが交易を続けています。この中でスーダン政府は、というより独裁政権は否定し続けていますが、スーダンの金鉱山警備などをロシアの民間軍事会社ワグネル、いまウクライナで残虐行動とともに攻撃を続けるワグネルが実施しているという確証といえる懸念がありました。

 ワグネルとスーダンの関係を調査したジャーナリストが複数行方不明になっており、21世紀でも相変わらず19世紀があるものだ、と嘆息するところですが、ワグネルは人員規模に限りがあり、ワグネルの支援を受け行動しているのがRSF即応部隊とされる。そして2022年から続くウクライナ戦争によりスーダン駐留のワグネル部隊は影響を受けています。

 RSF即応部隊は、このままワグネルの支援が薄まれば、というよりもロシアによるスーダン軍事独裁支援が薄まり民主化されるならば、RSF即応部隊そのものの解散が目に見えている、こうした構図があるのでしょう。一時はスーダン空軍が反撃に転じたという発表があり、しかし公開された映像は精巧なゲーム映像を用いた単なる大本営発表でした。

 アブダラハムドク前首相は双方に戦闘の中止を呼び掛けています、また国連や中国政府も戦闘停止を呼び掛けていますが、アメリカ外交官の車列が襲撃され、病院などが攻撃を受けるなど今のところ鎮静化の見通しはありません。一方で国際社会からは今のところ静観という状況であり、他方、人口500万のハルツームは現在、戦闘により停電と断水という人道危機が発生しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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