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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】たいげい型潜水艦9番艦,潜水艦発射型誘導弾の取得と水中垂直発射装置,長期運用型UUVの研究

2024-10-28 20:24:04 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回は日本の潜水艦の話題を中心に。

 防衛省は潜水艦発射型誘導弾の取得を行います。これは現在のハープーン対艦ミサイルを置き換えるべく来年度予算概算要求に盛り込まれたもので、先行して進められている潜水艦発射型誘導弾の開発に続いて進められているもの。潜水艦発射誘導弾の開発にはさらに22億円が計上され、ここに誘導弾本体部分の調達費用が30億円要求されています。

 潜水艦発射誘導弾は前述の通りハープーンミサイルが現在使用されていますが、ハープーンミサイルそのものはブロック1CのUGM-84Dミサイルが開発されていますが射程は140kmでしかなく、空対艦型のAGM-84Fブロック1Dのような射程315kmと比較しますと見劣りします。ただ、潜水艦発射対艦ミサイルはこれまで重視されてこなかった事情が。

 ハープーンミサイルの射程であれば、発射した瞬間に潜水艦の位置が確実に探知され、対潜掃討部隊が殺到することとなるのは間違いありません。もっとも、訓練ではハープーンを巧く運用し打撃判定を勝ち取った事例はあります。新型の潜水艦発射型誘導弾は目標迂回能力など、打撃力に加え潜水艦の生存性と隠密正に配慮した装備となるのでしょう。■

 水中垂直発射装置として防衛省は潜水艦からのミサイル発射能力を許可する研究開発を開始します。このために来年度防衛予算概算要求には300億円が盛り込まれることとなりました。予算は共通基盤としてのスタンドオフ防衛能力整備の一項目として明示され、その目的として発射プラットフォームのさらなる多様化と水中優勢確保があげられていた。

 VLSとして既に海上自衛隊にはMk41とMk56という垂直発射装置が実用化されていますが、いずれも護衛艦の水上発射用であり、潜水艦からミサイルを発射する場合はカプセル式発射筒を魚雷発射管から発射する方式を用いていました。防衛省が添付したイメージ図によれば、潜航中の潜水艦が船体後部から水上に発射するイメージが示されていました。

 潜水艦に搭載するべく、VLSそのものは耐圧殻とともに実用化されるとのこと。VLSはアメリカ海軍が既にVPMヴァージニアイペイロードモジュールとしてヴァージニア級攻撃型原潜に搭載するトマホークミサイル用VLSを実用化していますがこうしたものを導入はせず、独自開発となるもよう。同様の装備は韓国海軍も独自開発し運用しています。■

 たいげい型潜水艦9番艦の予算が概算要求に盛り込まれました。たいげい型潜水艦はリチウムイオン電池を動力源として採用した最新鋭潜水艦で、AIP方式潜水艦である潜水艦そうりゅう型の11番艦と12番艦がAIP区画を廃止しそのままリチウムイオン電池区画として完成させていますが、たいげい型はリチウムイオン電池に特化した設計をとりました。

 1161億円、特筆すべきは建造費が拡大しているところで、1番艦の建造費は800億円となっています、これはCOVID-19新型コロナウィルス感染症とその拡大からの復興過程で発生した世界規模の資源不足にともなう物資高騰とインフレが影響しているといえるでしょう。円安については国内建造されることで影響は局限されているといえるのかもしれない。

 たいげい型潜水艦は1番艦たいげい2022年竣工とともに、2番艦はくげい、3番艦じんげい、が竣工しますと、たいげい運用は第1潜水隊群第1潜水隊から試験潜水艦を運用する潜水艦隊第11潜水隊に区分変更がなされていて、リチウムイオン電池の採用により短時間での急速充電や高出力の発揮と電力の余裕が生まれ、潜水艦運用を転換しつつあります。■

 長期運用型UUVの研究が本格化します。UUVとはアンマンドアンダーウォーターヴィーグルの略称です。防衛省は新しい防衛力整備の一環として無人アセット防衛能力の整備を進めておりこの一環として陸海空に加え水中の無人機運用能力を整備しています。水中無人機そのものについては防衛装備庁が技術研究本部時代から実施している装備ではある。 

 深海巡航探査機うらしま、としてJAMSTECが既に高度な水中無人機を1998年に実用している実績があり、この分野で我が国は先進的な地位を維持していて、UUVについては既に船体部分、長期運用西する装備が開発されていますが、具体的には任務遂行能力向上のための各種センサー開発で来年度予算概算要求には費用として14億円が要求されています。

 うらしま、性能を参考に上げますと水中800mまで317kmにわたり56時間の試験を成功させたのが2005年であり、電波の通らない水中での自律航行能力は無人航空機以上の難しさがあるとされています。うらしま、そのものは海洋研究開発機構の装備となっていますが、海上自衛隊では複数のUUVによる対潜警戒と潜水艦の支援能力を期待しています。

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ウクライナ情勢-S-70オホトーニク無人機ウクライナ上空で喪失,ロシア軍ポクロフスク周辺で5個師団分の装備喪失

2024-10-28 07:01:43 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 日本の感覚ではなかなか信じられない。

 ロシア軍はポクロフスク周辺で5個師団分の装備を喪失した、ISWアメリカ戦争研究所ウクライナ戦況報告10月6日付発表によれば、これは破壊の様子を客観的に確認できるオープンソースからロシア軍損耗を計算している民間有志のよる計算で、これらが完全充足のロシア軍師団5個分にあたる戦車や装甲車を喪失したと画像から分析したもの。

 戦車539両と装甲車両1020両を喪失したとしています。一般的に戦車は破壊された場合でも修理可能なものが多く、戦車回収車により後方に搬送することで比較的短期間で修理が可能ですが、弾薬庫に誘爆し砲塔部分が吹き飛ぶような損耗を受けますと、まず電装品などのかんそうだけでは復帰できませんが、この損耗は回収されないものが中心という。

 5個師団分の装備喪失について、ロシア軍は戦車や装甲車の大きな損害と引き換えに戦術的前進を継続しようとしている結果であるとISWは分析していますが、これは同時にソ連時代に大量に備蓄された戦車や装甲車などの資産を大量消費していることに他ならず、今後数ヶ月のうちに使い果たす可能性が高くなっていることを、ISWは指摘しています。■

 ロシア軍のS-70オホトーニク無人機がウクライナ上空で喪失しました。イギリス国防省ウクライナ戦況報告10月15日付発表によれば、10月5日にウクライナ上空で喪失したとしています。ロシア側の運用状況を分析した結果、ウクライナ防空システムにより撃墜されたのでは無く、制御不能となったためロシア側により意図的に撃墜されたという。

 S-70オホトーニク無人機はロシアのスホーイ社が開発した戦闘用無人機でありステルス設計となっていて、ロシア側の過去の説明ではSu-57戦闘機、ロシア空軍が独自開発したステルス戦闘機とともに運用されるとのことでしたが、今回S-70を撃墜したのがどの航空機で会ったかについては判別されていません。

 S-70無人機は過去10年間にわたりアクチュビンスク空軍基地において試験飛行が行われてきました。なお、撃墜されたS-70についてはウクライナ側に残骸が回収されています。高度なステルス設計とともに戦闘用無人機として開発された無人機が、破壊されたとはいえその部品すべてをウクライナに回収された現実は後々影響しましょう。

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