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鎮魂:9.11/アメリカ本土同時多発テロから十六年,テロ脅威の継続と新しい大国間対立の醸成

2017-09-11 20:17:09 | 北大路機関特別企画
■米本土同時多発テロから16年
 本日は9月11日、アメリカ本土同時多発テロの日です。世界史の転換点となったあのテロの発生日です。

 アメリカ本土同時多発テロから本日で16年となりました。ニューヨークの象徴である世界貿易センタービル北棟南棟、アメリカ国防総省、乗客の文字通り死闘経て墜落したユナイテッド航空93便、旅客機4機をテロリストが奪取し、そのまま人口密集地へ体当たり攻撃を行い、死者は3000名を越える惨事となり、その後の国際公序を大きく転換させました。

 国防総省本省舎は第二次大戦中の要塞工学に基づく永久築城構造の為に倒壊は免れ損傷を一部に留めましたが、世界貿易センタービル北棟南棟に直撃した2機の旅客機は構造物を火災高熱により変形破損させ、倒壊崩落に繋がった事で大被害を生じさせました。この惨事は、攻撃を実行したアルカイダ筆頭に世界を“テロとの戦い”へ投じることになります。

 2001年より始まる“テロとの戦い”とは、文明の衝突と識者に論じさせた世界情勢の一つの問題の顕在化であり、ロングピースと識者が論じた冷戦構造の崩壊が転じた不安定要素顕在化の際たる事例であったのでしょう。しかし、“テロとの戦い”のアフガニスタン介入、イラク戦争等、これらは膨大な戦費を“テロとの戦い”に臨む有志連合諸国に強いました。

 アルカイダとの戦いを戦端とした長期間の“テロとの戦い”ですが、現在はフィリピンミンダナオ島においてISIL騒擾が現在進行形で進展しています。フィリピンでは2002年より米比バリカタン共同演習としてアルカイダ武装勢力への戦闘が展開され、ISIL騒擾の潜在的要素はありましたが、我が国の南の隣国で続く騒擾は懸念が杞憂でなかった事を示す。

 大量破壊兵器拡散という懸念が、特に我が国にて発生した1995年地下鉄サリン事件を端緒としてテロ組織による大量破壊兵器の大都市での使用という深刻な懸念を各国間で共有させる事となり、これがイラク戦争へ、アルカイダのイスラム原理主義とイラクフセイン政権の社会主義思想との根本的相違を無視したものの、繋げた事は今日へ影響を残しました。

 北朝鮮核開発と大陸間弾道弾開発は、しかしこのイラク戦争、大量破壊兵器拡散阻止を念頭とした開戦とその後の政権崩壊への行動が、北朝鮮に核兵器の死活的重要性を痛感させる事となり、核拡散を招くと共に次の脅威を世界に突き付ける事となりましたが、根底を辿るならば、やはり“テロとの戦い”と、同時多発テロへ至るのは皮肉と云えましょう。

 テロとの戦い、しかしテロの要因を“人間の安全保障”として自己実現を阻む抑圧的政治体制と人権抑圧文化観にあると理解する有志連合は、民主主義制度の定着によりこの要因の解消を望み、この為に治安作戦による民主主義制度定着支援という行動を通じ、敵国政府や敵対勢力中枢という軍事目標不在の“非対称の戦い”へと未知の戦いへ転じた訳です。

 冷戦型の大国間の対立は、しかし“テロとの戦い”の最中にも要因は解消されていなかった事が判明し、そもそも冷戦の勝利という認識そのものが、自由主義と社会主義という対立軸ではなく、双方が単なる地政学上の対立構造が寛容不寛容の対立と併存したのではという程根深く、ソ連崩壊後も対立は続き、一時停滞していたのみだったのかもしれません。

 ロシアとアメリカの対立、中国とアメリカの対立、この二つの超大国と大国に地域大国間の対立軸は、しかし“テロとの戦い”が大きな影響を及ぼしています。民主主義実現への軍事的手段行使の実例は、危機感を煽ると共に民主主義制度の多様性への認識の欠如が有志連合へ同床異夢の状況を現出させる事となり、多極化時代を逆に進めてしまいました。

 テロとの戦い、このもう一つの影響は“テロとの戦い”に投じた膨大な戦費、治安作戦用の大量の部隊派遣維持費と耐爆車両や個人用防護器材、これらの短期間且つ膨大な更新が、冷戦型装備の世代交代という極めて重要な、次世代の従来型戦争に備える各種装備体系の開発費用を、有志連合諸国から根こそぎ奪う事なりました。この中止影響は非常に大きい。

 アメリカ一国でも、陸軍装甲車両体系を共通車輛派生で一手置き換えるFCS計画、次世代砲兵火力戦闘実現するクルセイダー計画、将来ステルス偵察ヘリコプターRAH-66計画、海軍の将来巡洋艦構想、思いつくだけでこれだけ軒並み中止、F-22戦闘機生産大幅削減、将来駆逐艦ズムウォルト級量産の実質中止、統合打撃戦闘機JSF計画実現の大幅遅滞、など。

 米軍再編として、世界の米軍前方展開を戦略拠点に集約、軽量装備と緊急展開能力重視へ転換する構想が、これを支える次世代装備の中止の最中、配置構想だけを急ぎ実現した事もアメリカの影響力低下を招き、現在の中東や南シナ海と朝鮮半島、アフリカ地域への新しい対立構造へ昇華しました。9.11の鎮魂を祈ると共に次の戦争回避の措置を切望したいところです。

北大路機関:はるな くらま
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