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【京都幕間旅情】誓願寺(浄土宗西山深草派)新京極繁華街の不思議な総本山は落語発祥の地

2020-05-13 20:08:12 | 写真
■新西国三十三箇所札所
 京都と云えば古都というには近代的過ぎる、と批判がありますが、元々最先端都市を目指した街なのですからある種当然です、そして街中に千年の歴史が。

 誓願寺、阿弥陀如来を奉じる中京区新京極通三条下ル桜之町の寺院で新西国三十三箇所第15番札所となっています。天智年間は667年に建立されまして、天智天皇の勅願により造営された勅願寺です。元々奈良に在りましたが平安朝の頃、京都深草へと遷座している。

 新京極通りは京都一の若者の繁華街、という印象ですが、此処を散策していますと寺社仏閣非常多い事に気付かされます、その社殿本殿は多くが鉄筋RC構造故に余り歴史を感じないという方のお話しを聞くのですが、しかし実のところ丹念に調べますと歴史は凄く長い。

 浄土宗西山深草派の総本山、深草からは遠いし総本山にしては質素、最初は三論宗寺院でしたが興福寺法相宗に宗旨替、法然上人時代に浄土宗寺院となり、その弟子西山上人証空により浄土宗西山派が成立、更にその弟子円空立信が西山深草派を興し今に至る、という。

 総本山、元々浄土宗西山派は一つであり、誓願寺はその北本山でしかなかったのですが、1948年に浄土宗西山光明寺派と浄土宗西山禅林寺派と浄土宗西山深草派とに分裂してしまいまして、要するに寺そのものには収まりきらない程に複雑長大な歴史を有する訳ですね。

 扇塚というものが山門のすぐ隣に位置していまして、この関係から芸能上達の御利益があるとは広く知られるところ、また、桃山時代の説法に独特語調を用いた事が落語発祥の地として本寺を挙げる事ともなっていまして、京都繁華街に在って広く崇敬を集めています。

 日快安楽庵策伝は落語の開祖といわれる、西山深草派法主55世は安土桃山時代から江戸時代初期の僧侶です。元々は岐阜金森定近の系譜で、美濃浄音寺から禅林寺永観堂に学んだ僧侶ですが、漫話と説法を取り入れた説教で庶民から朝廷まで慕われ、落語の始祖という。

 洛陽三十三観音霊場第2番札所であり、新西国三十三箇所第15番札所でもあり、洛陽六阿弥陀霊場第6番札所となっていますし、法然上人二十五霊場第20番札所を兼ねて、西山国師遺跡霊場9番札所に位置付けられ、真盛上人二十五霊場6番札所という、歴史長さゆえ。

 誓願寺はかつてダイエーが在った当たり、街中銭湯のお隣、と説明しますと簡単ですが、このWeblog北大路機関を運営開始した当時と比較しても随分と変わりました。この平成時代だけでも変わりゆく街に在る寺院は元々深草、京阪で10分程のところにあったのだが。

 太閤秀吉京都大改造、天正年間1591年に聚楽第と御所の周りに寺町を形成するという豊臣秀吉による応仁の乱以降の最大規模の京都再興事業において、誓願寺はこの新京極と寺町の地に遷座しまして、秀吉側室京極竜子の京極家の保護を受け一時は興隆を極めました。

 新京極通りは京都への修学旅行への定番であると共に、当方の世代ですと映画を観る際の定番でもありました、実は貴重だったオーケストラピケット付の東宝宝塚劇場や怪しい中古映画屋に隣接した小規模な映画館、今は薬局となってしまった佳作中心の映画館などが。

 寺社仏閣巡り、現代では歴史探訪の寄る辺という印象ですが、此処に新京極通りと寺町通りが整備された頃には娯楽と徳を積む中心という位置づけであったようでして、寺町界隈は寺社仏閣多く、いわば今も昔もこの地は娯楽の中心地だった、ということでしょうか。

 京都大改造の際には三重塔と方丈を並べたといいますが、天明年間に弘化年間と元治年間と三度の大火に巻き込まれ、明治維新と廃仏毀釈、明治政府の新京極通り拡張整備により寺域を削られまして今に至ります。そして歴史が残る、京都らしい寺院といえましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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