北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:戦車のローテーション配備に関する一提案

2014-12-21 23:53:02 | 防衛・安全保障
◆戦車大隊本部以外をローテーション
 今回から数回に分け戦車について幾つかを考えようというところで、少々多忙につき備忘録となりました。

 戦車は本土にも必要であるが訓練環境は北海道の方が良いため、現在の新防衛大綱では九州の一部に配置される戦車と富士が高等の教育用の戦車を例外として、本土から戦車を廃止し北海道に集約するという政策が進められています。その施策として本土には機動戦闘車を配備し、戦車の一応の代用を担う、とのこと。

 しかし、機動戦闘車は戦車としての特性をゆうせず、特にNATO部隊符号ひとつとっても装輪方は戦車砲を搭載していても戦車駆逐車扱いとなっており、有事の際に戦車を緊急展開させるために平時は北海道に戦車部隊を集約させる、という方策は、機動戦闘車の位置づけを更に曖昧とするとともに本土で戦車は必要なのか不要なのか、という視点にさえこたえていません。

 有事の際に戦車を機動する、この方策として自走することはその距離の観点とほか移動と本州島という地理関係上非常に困難であり、車幅の関係上在来線貨物輸送はトンネルなどの構造に衝突し戦車が破損するため不可能、結果艦船での輸送を行うことになるのですが、有事の輸送は平時の業務輸送用の艦艇ではなく作戦輸送として輸送艦が必要となり、輸送艦一隻には戦車を一個中隊搭載することもままならないものの、一隻の輸送艦建造費は搭載艇を含め二個戦車大隊の戦車取得費用に匹敵、合理的ではないでしょう。

 すると、本州に配備するのか、ということになるのですが、演習場環境から本州に大きな戦車部隊を収容することは難しいという事も事実であり、しかし、有事の際に充分な戦車を輸送可能な作戦輸送能力を海上自衛隊へ整備させるよう要請することは、海上自衛隊の護衛艦や哨戒機と言った他の装備品の整備費用を圧迫するため、無理をするくらいならばまだ取得費用を抑えられる戦車の全国配備のほうが予算面で妥当ではないでしょうか。

 ここで、考えるのは統合機動防衛力の観点から、全国の師団旅団管区に平時から戦車を張り付けるのではなく、戦車大隊本部と幾つかの中隊を本土に配置しつつ、一部中隊を北海道の演習場に近い高い訓練環境を有する地域に前方配置し、要員をローテーション配置させることで有事の際に本土に一定の戦車を配置しつつ、緊張が高まる際や師団集合訓練などを行い、戦車を要因と車両とに分け業務輸送と人員交代で対応させる、というもの。

 本土に戦車大隊本部と中隊を置き、もう一個中隊を北海道に展開させるが定期的に本土に戻る、輸送艦を必要とする作戦輸送能力ではなく平時の業務輸送の範疇で輸送手段を安価に抑え、実質、本土の戦車部隊の訓練を北海道で行うという構図を構築させ対応する、というかたち。

かなり乱暴な案ですが、本土師団や本土旅団から戦車を排し編成を置き換えるよりは、北海道にローテーションで訓練配置し、編成上戦車を師団や旅団がもちうる、という選択肢を残す方が、戦車を欠いた運用体系を構築する無理よりは影響は薄いではないか、と言えるのですし、更に、平時から業務輸送により大規模な部隊の機動展開を実現させる体制を構築することは、緊張が高まった時点dの部隊の集合を迅速に対応させることにもなります。

 装甲機動旅団や航空機動旅団、という編成の枠を超えて先ず戦車を本土に残す方法論としての提案ですが、訓練体系の主軸を北海道におく、という形をとってでも、有事の際に高価な輸送艦で輸送するというぜんてを置いて輸送艦の増強に関する施策には抜本的なものを含めず希望的観測に頼る中で戦車を北海道に集約するよりは、訓練移転とローテーション配置の方が妥当ではないか、と考えるところです。

北大路機関:はるな
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す) 
コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 沖縄本島の航空基地を俯瞰風... | トップ | 技術研究本部、陸上自衛隊UH-... »
最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
戦車持合い制 (専ら読む側)
2014-12-22 20:43:20
F-22方式と直感
機動戦闘車が(土建大手の遺作に退場願う以上の)四方の期待に応えることが叶わなかった際の保険としても極めて有効と思われ
返信する
Unknown (KGBtokyo)
2014-12-23 00:42:37
ご無沙汰してます。
ローテーション訓練は大賛成ですね。
しかし部隊配置は各地域配備で訓練時人員のみ北海道や御殿場に移動させ北海道・御殿場に訓練部隊・機材を配置しておく。
このためには、予てから指摘しているように部隊編成・装備の共通化をしておくことが前提。
部隊移動訓練は別の問題として対応すればいいのではないでしょうか?
戦車不要論というのは戦史の教訓を学んでませんね。
現代日本より地形・道路環境の悪い朝鮮戦争やベトナム戦争でも40t級戦車が活躍しています。
返信する
Unknown (ドナルド)
2014-12-25 21:30:55
はるなさま

本土にも一定数の戦車を残すのは賛成です。総定数が「約300両」なら、これを装備定数と捉えて、40両大隊を8こ。半数は北海道に置くとしても、本州+九州に160両は残すべきと考えます。

(想定しているのは、機甲旅団に120両、5個師団に各40両、とか。。。)

一方で、ローテーション配備とまでは行かなくてよいのではないでしょうか?

例えば、北海道と富士に訓練用の機械化部隊を1こ持ち、定期的に各部隊から戦車中隊+普通科2-3個中隊規模の人員を展開させて、機甲部隊としての訓練をしに行くイメージです。

例えば、戦車1個中隊+IFV1個中隊+APC1個中隊+軽装甲機動車1こ中隊+高機動車1こ中隊=5個中隊からなる、機械化教導連隊(戦車教導連隊ではなく)とし、戦車中隊1個+歩兵中隊2-3個での機甲部隊訓練や、戦車小隊+歩兵中隊2-3個での歩兵部隊(戦車支援付き)訓練を行うとか。(*)

背景にあるのは、「歩戦共同」の訓練が必要なので(あくまで機甲部隊として動くのだから)、戦車部隊だけローテーションにしても意味がないのではないか?という視点があります。

また、戦車旅団は1個のみで、かつ北海道に置かれるので、この教導連隊は戦車旅団の訓練は不要で、あくまで機械化部隊(戦車1 + 歩兵2-3の割合)で良いはずです。

これに加えて、北方への移動、南方への移動訓練は別途やるべきでしょう。戦略機動そのものが、近代的陸軍としては、当然の能力ですから。


*:補足ですが、機械化教導連隊の戦車は、どちらも主力戦車=つまり現状の数の上で間違いなく90式です。富士の教導連隊にだけは、10式の中隊をもう一つ付けても良いでしょう(もちろん10式が(20年後くらいに数の上で)主力になれば、逆になります)。

前線部隊の戦車320両、予備は通常10%ほどなので32両。2つの教導連隊に26両。基礎教育に26両。合計404両になります。後数年で90式と10式で充足できますね。





返信する
戦車北転事業の戦車を返してもらう (はるな)
2014-12-31 12:32:47
専ら読む側 様

なるほど、云われてみればそういう印象ですね・・・
返信する
機動戦闘車は第一線部隊では非戦車扱い (はるな)
2014-12-31 12:38:43
KGBtokyo 様

機動戦闘車は第一線部隊では非戦車扱いされていまして、一方で饗庭野演習場等を見ますと本土戦車部隊の置かれた厳しい演習場環境がある、何とかならないかという苦肉の策です

部隊編成は40両戦車大隊(13両中隊×3&大隊長/部隊付船員曹長用1)を装甲機動旅団に配備し、この他に航空機動旅団を配置する、という三月の提案が当方としては最善案、とは思っています
返信する
装甲機動旅団・航空機動旅団 (はるな)
2014-12-31 12:52:31
ドナルド 様

年度末特集の広域師団:装甲機動旅団・航空機動旅団、という案が個人的に最適解とは思っているのですが、あのあと更に部隊案は進化しまして、JPEG画像化し今年度末の特集を準備しています

機械化大隊の編成、FV中隊2個と戦車中隊を併せる機動運用が重要で、例えばドイツ軍などでは装甲擲弾兵科を機甲科と同じ装甲兵科に挙げています、戦車が減ったとしても機動打撃を行うべく戦車を補完する装甲戦闘車を強化する方が意味は大きいのではないか、と

逆にFVであれば、搭載機関砲の射程を考えますと、本土の演習場でも実弾射撃の環境は充分ありますし、対応できるのかな、と

装甲機動旅団は、2師・5旅・9師・1師・3師・4師、これで戦車所要240両、7師は旅団化し5旅と組み合わせ機甲師団とし、各戦車連隊の1個中隊を偵察任務を主眼に機動戦闘車化し戦車定数を120両、師団全体では5戦車と併せ160両と小型機甲師団としての戦車数を維持、戦車数は360両となりますが、なんと言いますか、300両と約300両と言い換え350両に抑えなければとは思いつつも、冷戦時代に1100両の戦車を有した自衛隊ですので360両を大目に見ていただいて、と提案するところです
返信する
戦車受入機関、戦術?単位の規模 (専ら読む側)
2014-12-31 16:56:43
はるな様
本年の最終日に、当方の愚考に御返信賜り誠に恐縮でする
部隊の均質化を図る面でも、戦車(型戦闘車輛)受入機関を全国の単位に置くことは有効と思われ
部隊規模適正化?及び方面全体を睨んだ統合についても
「遠い昔の定数16万人以上も、結局五個管区隊(基本は第二次世界大戦時の亜米利加陸軍軽?歩兵師団)と九個混成団(同じく連隊戦闘団=コンバットコマンドポスト(「カマンポス!」と聞こえて仕方無いアレ)をやっと編成するに足るだけでしか無かった(十三個師団+二個混成団でっち上げたこと自体誤りだった)」
と考えるに妥当且つ有効な方策と思う所しきり
(足りなけりゃ師団再設置、其の為の種は多く埋めて置くことが肝心ですな)
返信する
Unknown (ドナルド)
2014-12-31 19:56:20
はるなさま

お返事ありがとうございます。

5個混成師団(装甲機動旅団=機械化旅団+航空機動旅団=ほぼ米軍式の軽歩兵旅団(*))と、1個機械化師団(機甲旅団+機械化旅団)、ということですね。基本的に大変合理的な考えと私も思いますので、お考えのプラン、楽しみにしております。

*: 米軍の軽歩兵は、全て空中機動を基本とした訓練をしているそうですので。

1つだけ。指揮官をどうするか、という問題があると思います。世界的に見て普通の階級(=同盟国米軍と相当する階級)にすべきと考えていますが、いかがでしょうか?

・「戦車3個中隊+偵察中隊」編成の戦車部隊(要は大隊)を「連隊」と呼ぶことは、戦車部隊としては世界標準から考えておかしくはない(英軍、仏軍、伊軍など)ですが、指揮官は2佐であるべきと思います。

・おそらく700名程度となるだろう普通科「連隊」ですが、伝統を尊重して連隊の名を残すのは賛成ですが、指揮官は2佐にすべきと思います。仏軍などで例がある。

・旅団長は本来、大佐 or 准将ですが、日本の古い伝統に従って少将=将補でお考えでしょうか?私は一佐(一)を、正式に「准将」職とし(英軍式に上級大佐=将官ではない扱いにして)、旅団の指揮にあたらせるのが良いかと考えます。

・師団長は、人員がやっと世界標準の1万になること、6名まで減らすこともあり、伝統に従って、中将でも良いかもしれないとは思いますが。

良いお年を。。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

防衛・安全保障」カテゴリの最新記事