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イージスアショア導入閣議決定,北朝鮮の日本核攻撃に備える国家防衛システム秋田・山口配備

2017-12-19 20:17:55 | 防衛・安全保障
■国家防衛システム2023年完成
 北朝鮮の弾道ミサイルによる核攻撃という危険性が現実味を帯びる中、ミサイル防衛はそのまま国家防衛システムを意味します。

 政府はミサイル防衛体制を強化するべく、陸上型防衛システムイージスアショアの導入を閣議決定しました。イージスアショアとは海上自衛隊が運用する広域防空艦、イージス艦のイージスシステムを陸上に配備するものです。元々イージスシステムは艦隊を爆撃機の大編隊から放たれる大量のミサイル同時攻撃、“飽和攻撃”に対処するための防空艦です。

 北朝鮮弾道ミサイル脅威へ対応するべく、イージスアショアは山口県萩市むつみ演習場と秋田県秋田市の新屋演習場へ建設される事となります。防衛省によればイージスアショアをこの本州の二箇所に配置する事で北海道から沖縄県までの弾道ミサイル防衛を行う事が可能となるとしています。また、現在増大の中国巡航ミサイル脅威へも対応出来ましょう。

 イージスシステムが弾道ミサイル防空に応用できたのは、レーダー周波数帯がSバンド帯レーダーを採用しており、長距離探知能力に最大の能力を発揮する特性があった為で、見通し線内であれば500km以遠の航空機も捕捉識別できる能力があります。逆に超低空小型目標を発見する能力がXバンド帯やCバンド帯よりも劣りますが、長距離を見通せます。

 弾道ミサイルは宇宙空間を経由し、飛翔するため、イージスシステムのレーダー部分であるSPY-1、そのSバンド帯レーダー周波数帯が最適となりました。実際、1998年には北朝鮮実施した初の長距離弾道ミサイルテポドン発射実験を日本海に警戒へ展開していたミサイル護衛艦みょうこう、が捕捉し、世界初のイージス艦弾道ミサイル探知となりました。

 RIM-161スタンダードSM-3は、イージス弾道ミサイル迎撃システムとして急遽求められた弾道ミサイル防衛へアメリカにより開発された装備で1999年より開発に我が国も参加、日米共同開発が進められています。スタンダードSM-3は射程1300kmの広範囲を防空可能で、現在は射程を2500kmまで延伸したスタンダードSM-3Block IIAが開発中です。

 イージスアショアが今回求められたのは、イージス艦が元々艦隊防空用の艦艇であり、弾道ミサイル防衛はその長距離防空能力の延長線上で運用する事が出来るだけに過ぎない点で、イージス艦には弾道ミサイル防衛以上に艦隊防空という重責があります。従って、ミサイル防衛だけに虎の子のイージス艦を常時日本海で警戒待機させ続ける事は出来ません。

 こんごう型ミサイル護衛艦、こんごう、きりしま、みょうこう、ちょうかい。あたご型ミサイル護衛艦あたご、あしがら。海上自衛隊のイージス艦はこの6隻のみ。理由はイージスシステムが1990年代の導入当初で500億円を要する高価な装備であり、また、海上自衛隊のミサイル護衛艦は各護衛隊群に2隻、4個護衛隊群で定数が8隻であった為というもの。

 艦隊防空からイージス艦が弾道ミサイル防衛に引き抜かれている状況では、有事の際に海上自衛隊は護衛艦隊によるシーレーン防衛を行い日本の生命線を維持するのか、弾道ミサイル防衛に艦隊防空艦を展開させるのか、という二者択一を強いられる為、イージスアショアの導入により海上自衛隊は本来の艦隊防空へイージス艦を振り分ける事が可能となる。

 課題は、イージスシステムにより運用される迎撃ミサイルがスタンダードSM-3である点で、これは弾道ミサイルの中間迎撃用を想定し開発されました。弾道ミサイルは発射されると宇宙空間まで上昇し放物線を描いて落下します、中間段階迎撃用のスタンダードSM-3は放物線の中間で迎撃、落ちてくる弾道ミサイルを迎撃する事を重視した設計ではありません。

 THAAD, 終末高高度防衛ミサイルの略称です。アメリカ軍ではスタンダードSM-3を中間段階迎撃用としており、弾道ミサイルが着弾地まで落達する終末段階には、このTHAADを充てる事としています。THAADは高出力TPY-2レーダーにより1000km以遠で目標を発見、イージス艦の迎撃を突破した250km圏内に落下する弾道ミサイルを最後に迎え撃つ。

 ペトリオットミサイルPAC-3,自衛隊はTHAADを保有せず、こちらを運用しています。これは対航空機用の射程100kmというペトリオットミサイルのシステムを転用した弾道ミサイル終末段階迎撃用ミサイルで、射程15km圏内の防空を担当します。弾道ミサイルに対しては、航空基地や指揮中枢や人口密集地域等、狭い範囲内で迎撃を行うミサイルです。

 PAC-3-MSEとして迎撃範囲を30kmまで拡大した改良型の配備が始まりますが、今回政府がイージスアショアを導入する決定に至ったのは、PAC-3-MSEでも迎撃範囲が30kmに拡大したものの、航空自衛隊にはペトリオットは24個中隊しかなく、日本全土を防衛するにはとても数が足りないという事情があり、広範囲を防空出来る装備として選ばれた訳です。

 終末段階を迎撃できないイージスアショア、これはサッカーでゴールキーパーを置かずミッドフィールダーに重点を置く運用のようなものです。この一点から当方などはTHAADをとりあえず首都圏成形中枢地域と京阪神若狭湾原発地域の二箇所に配備した方が、とも思う。北朝鮮の弾道ミサイルはロフテッド軌道により4000km以上の高高度を飛翔するおのがあり、SM-3の上昇能力では届きません。イージスアショアが迎撃できない高高度を飛翔した場合、大丈夫なのでしょうか。

 RIM-174スタンダードERAM、通称スタンダードSM-6,アメリカ製で来年度予算で海上自衛隊がイージス艦用に導入する対航空機用のミサイル、これが大きなカギとなります。低空目標390kmと高空目標500kmの範囲を防空するミサイルで、イージス艦に搭載する対航空機用のSM-2が100km程度ですので、大きく改善した艦対空ミサイルとなりました。

 スタンダードSM-6-Dual-IはスタンダードSM-6の弾道ミサイル終末段階迎撃型です。これは中国軍がアメリカ航空母艦を狙う東風21型改造の対艦弾道ミサイルから艦隊を防空するべく、終末段階迎撃能力の要求に応じ開発しているもの。スタンダードSM-6-Dual-I開発が完了したならば、イージスアショアは現在課題の終末段階迎撃も可能となりましょう。

 勿論問題はあります、大きく考えられるのは電波障害、イージスシステムのSPY-1レーダーは強力な電波を発信します。最も現段階で同程度に強力なTHAADシステム用Xバンドレーダーが京都府と青森県へ米軍により配備され運用されていますが、現在のところ電波による影響が指摘される事態は発生していません。それでも調査検証は当然必要でしょう。

 弾道ミサイル脅威は、北朝鮮が日本本土へ使用する准中距離弾道弾への核弾頭搭載を行い、また100キロトン程度の核開発を行っている現状から、日本本土への核攻撃は当然予想されます。また、邦人拉致問題を契機に世界で最も厳しい経済制裁を北朝鮮に対し行っているのは日本であり、北朝鮮は強く反発し続けています。政府は2023年までにイージスアショアの完成を目指すとの事です。

北大路機関:はるな くらま
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3 コメント

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Unknown (市民のミカタ)
2017-12-20 21:23:10
アベ内閣はポンコツのミサイル防衛とガラクタのステルス戦闘機に血税を浪費している
大体、宇宙空間を飛行する無害な北朝鮮のミサイルにJアラートを鳴らして
国民の不安を煽っています
軍事費の大幅削減と役立たずのJアラートを廃止して
公立小中高と高等教育、専門学校の完全無償化
及び給付型奨学金の拡大を実現するべきです。
Unknown (市民の視点)
2017-12-21 01:11:25
ポンコツ戦闘機は新型戦闘機に、ガラクタミサイル防衛はハイテクミサイル防衛に更新すれば良い

古来外敵も防げぬ国家は教育をどれだけ充実させても水面に家を建てるごとく崩れ去る、国あっての教育
Unknown (市民目線)
2017-12-21 13:32:46
イージスシステムに1000億、ミサイル一発で10億かあ~。
ため息出るなw

年末ジャンボ宝くじに一発当たっても、ミサイル一発しか買えないとはなあ。
無誘導の砲弾なんて安いもんだね。
しかし必要とあれば仕方がなあい。
どんどん買おう。

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