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ロシア軍対ISIL勝利宣言シリア撤収,同国へメイミーム空軍基地とタルトス港海軍施設維持

2017-12-18 20:03:06 | 国際・政治
■中東過激派騒擾平和終息なるか
 イラクでのISIL勝利宣言に続いて、シリアではロシアが勝利宣言を発表しました。中東過激派騒擾は平和終息を迎えられるのでしょうか。

 プーチン大統領が在シリアのロシア軍へメイミーム空軍基地を視察し、ISILとの戦闘に勝利宣言を出しました。ただし、アメリカ国務省は今回のロシア軍による勝利宣言が時期尚早であるとして懸念を表明しています。事実、ISILはイラクでは最後の拠点に続き残党が逃げ込んだ地域がイラク軍により奪還されましたが、シリアではISILが村落を占拠中です。

 シリアのイドリブ県に四年ぶりにISILが浸透し、一部村落を占領しました。占領された村落はシリアのアルカイダ系武装勢力が実効支配する地域で、ISILはアルカイダ系武装勢力を撃破して村落を掌握したとの事、隣国のイラクではハイダルアバディ首相により制圧完了による戦闘終結宣言が出されており、対照的にシリアでISILが攻勢に出た事となります。実際、この撤収は米国家安全保障会議NSC報道官が時期尚早と懸念している。

 シリア撤収命令、プーチン大統領はメイミーム空軍基地でのISIL掃討作戦での勝利宣言に続き、ロシア軍がシリア領内で実施してきたISIL掃討作戦の終了とともにロシア軍の撤収が決定した事を発表しました。ロシア軍は今後もへメイミーム空軍基地のほか、シリア西部タルトス港海軍施設を維持するとしていますが、戦闘機部隊等大部分は撤収するもよう。

 2015年から開始されたロシア軍シリア介入後、プーチン大統領は三度に亘り撤収を発表していますが、今回は勝利宣言後の撤収であり意味合いが違います。撤収は既に開始されており、ロシア軍南部軍管区所属の憲兵大隊がシリアからロシア南部ダゲスタン共和国マハチカラ軍用機2機で撤収、そのまま交代部隊はシリアへ派遣されず、撤収を完了しました。

 セルゲイスロビキン駐シリアロシア部隊司令官によればシリア展開のロシア軍部隊の内、固定翼航空機23機とヘリコプター2機の撤収が決定していると共に、更にシリア軍を直接支援している特殊部隊と衛生部隊が近く撤収するとしています。一方、へメイミーム空軍基地とタルトス港海軍施設維持は、ロシアの中東への影響力維持を期しているのでしょう。

 米ロ偶発衝突の危機、こちらは多くが解消されます。ロシア空軍機はシリアイラク対ISIL有志連合が設定した管制空域へ頻繁に発生しており、今年11月下旬には一日当たり6回から8回という高頻度で発生しており、アメリカ軍はロシア軍の危険な接近行為について、特に既に締結された衝突防止合意に明白に違反する危険行為に対しては撃墜の可能性を示唆、緊張が高まっていました。

 ロシア軍のシリア撤収、何故でしょうか。シリア領内でのISIL勢力が残り、完全に鎮圧できたイラクと対照的な状況下での撤収、その理由の一つに経済的負担の大きさが考えられるでしょう。未だ続くウクライナ東部紛争介入とクリミア併合を契機とする経済制裁によりロシア経済は大きく打撃を受けており、シリアへ航空部隊を派遣維持する負担は決して小さくありません。

 フィリピンISIL騒擾、こちらはドゥテルテ大統領により鎮圧宣言が出され久しいですが、ミンダナオ島戒厳令一年間延長がフィリピン議会により承認されました。この戒厳令延長について、ミンダナオ島で新たな情勢不安が起きる可能性が否定できない事を受けての延長であるとされ、ISIL鎮圧完了宣言の後にも残存勢力の完全制圧へ疑問を残しています。

 ISILによる攻撃は個人テロとして活発化しており、11日には米本土ニューヨークのマンハッタンでISIL関係者を名乗るバングラディッシュ出身者による黒色火薬を用いた自爆テロ事件が発生し負傷者が出ました。ニューヨーク市デブラシオ市長はテロ未遂事件として警戒を強める方針を示しています。ISILへの対処、分水嶺は越えたものの続いているのです。

北大路機関:はるな くらま
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