北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【朝鮮半島有事と我が国への影響】03:北朝鮮攻撃をトランプ大統領は安倍総理に明かすか

2017-05-30 23:37:01 | 国際・政治
■突発的限定攻撃のリスク
 朝鮮半島情勢、一時は明日にも限定攻撃という懸念がありましたがその懸念は多少払拭されたものの、北朝鮮のミサイル演習は続き日本海にはミサイルが着弾、ここで懸念するのは突発的に限定攻撃が開始される事です。

 朝鮮半島有事が勃発する場合、例えばアメリカ軍による北朝鮮核関連施設等への限定攻撃という形で開戦する場合、アメリカの同盟国であり朝鮮半島の対岸に位置する我が国へは、どの時点で通知されるのでしょうか。朝鮮半島有事ともなれば、在外邦人退避や周辺事態への米軍支援の可否、ミサイル防衛、米軍支援部隊受け入れ等の準備が必要となる。

 本格的に北朝鮮の核関連施設とミサイル部隊を無力化するならば、膨大な巡航ミサイルと戦略爆撃機による攻撃、これに先立ちミサイルを発見する米韓特殊部隊の北朝鮮潜入、北朝鮮の大規模報復に備え韓国国境沿いに展開する火砲一万門以上の脅威への制圧、日本へ飛来する北朝鮮弾道弾への迎撃態勢準備、在日米国人退避準備、準備は非常に多いのです。

 しかし、例えば日本海に遊弋する駆逐艦一隻程度からトマホークミサイルを90発程度撃ち込む、という規模の空爆ならば準備はそれ程必要ではありません。問題はこの程度の打撃ではスズメバチの巣に石を投げ込んだ程度の、戦果よりも損害による反撃の方が大きくなる、という事です。必要な打撃を行わない中途半端な攻撃ならば回避すべき、ということ。

 日本本土にミサイルが落ちれば即自衛権発動ですが、それ以外の場合はどうか。アメリカのトランプ大統領は、安倍総理へ相談するのか。例えば北朝鮮への限定攻撃を行う場合、つまり入念な準備と部隊展開は不要だが中途半端な規模の攻撃という事を示す、しかし、アメリカ政府の姿勢を国内に向け誇示するために必要な攻撃を行う場合、同盟国で隣国の安倍総理や、韓国の文大統領と、相談し調整を経て決断するのか、という訳です。

 シリアミサイル攻撃、思い出されるのは先月7日にアメリカ海軍が実施したミサイル攻撃が直前まで同盟国、シリア周辺へ部隊を展開させるNATO加盟国首脳へも伏せられ、直前になり攻撃を行う事が通知、相談ではなく通知という形で開始された事です。大統領の決断により、中途半端な規模の攻撃が突如開始される、という危惧が充分払拭できません。

 アメリカ海軍は4月7日に東地中海のミサイル駆逐艦ポーター、ミサイル駆逐艦ロスよりトマホーク巡航ミサイル59発を発射、シリアのシャイラート飛行場を攻撃しました。当初報道ではシリアの稼動作戦機二割を破壊したとされましたが、続くミサイル攻撃は無く、基地も迅速に復旧、実質ミサイル攻撃は政治的なもので、中途半端なものに終わりました。

 アメリカ本土を狙うミサイル開発を行う北朝鮮ですが、問題は政治的にトランプ大統領が北朝鮮に対し強い対応能力を誇示する必要を感じ、同盟国への相談を省いて限定空爆を行うのではないかという懸念です。限定空爆は核開発着手の1990年代にクリントン政権が検討しましたが、韓国の金大統領が猛反発し中止、核開発前のあの時が最後の機会でした。

 北朝鮮が新型弾道ミサイルを発射しました。月曜日日本時間早朝に発射された弾道ミサイルは当初その射程や到達高度からスカッドミサイル改良型と見られていましたが、北朝鮮が発表した映像には、安定翼のような形状の小型翼が追加されており、これは冷戦時代にソ連が開発したR-27Kや中国が東風21弾道ミサイル改良の対艦弾道弾と似た形状です。

 ただ、対艦弾道弾は技術的に難しく、そもそも遠距離を隔てた空母をどう発見するのか、終末誘導を行い命中を期す場合でもそのためにはミサイルが分解しないよう速度を落とす必要があり、逆に速度を落とし迎撃は容易となる。つまり今回のミサイルはプロパガンダではないか、と。北朝鮮は過去にもプロパガンダ最強兵器、T-62戦車改造の世界最強戦車や一度も動かない双胴型フリゲイト等、似た事をしました。

 北朝鮮、技術的に大した事はない。北朝鮮はアメリカ空母をミサイルの映像中継により発見できるとしていますが、それならば日本海を遊弋するカールビンソンの空撮画像でも添付してくれればよいものをそれはありません。日曜日には新型対空ミサイルを誇示しましたが、無煙ロケットモーターを採用せず白煙を棚引かせ飛行、技術的限界を示しています。

 重要なのは、突発的な決断を回避し、例えば1998年のバルカン半島へのアメリカ軍空爆開始が、偶然その時進展していたクリントン大統領の女性スキャンダル時期と重なり変な疑惑を持たれたような、アメリカ内政問題の大きな混乱期に併せて突如開始される、というような状況に陥らないようする事です。特にトランプ政権はロシア問題での混乱下にある。

 この為には、実施の可否、日本から可否の否定以外を提示する事には非常に勇気が要る事なのですが、この為の必要な準備体制、その上で可能なのか不可能であるのか、日米韓の協調を行う事です。一方、トマホーク以外にロシアのP-1000巡航ミサイル、韓国の赤鮫巡航ミサイル、中国の長剣07、万一の際に北朝鮮を攻撃できる巡航は日本以外すべての周辺国が有しています。万一それが使用された際に、北朝鮮が早合点し、日米を攻撃するリスクも、ありますね。

北大路機関:はるな くらま
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