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マクロン新フランス大統領,超党派市民運動“前進”親EU路線と構造改革断行を掲げ14日就任

2017-05-08 23:03:44 | 国際・政治
■フランス大統領選二〇一七
 フランス大統領選二〇一七、極右と中道の全面対決の構図となりました。

 フランス大統領選決選投票は7日に実施され日本時間今朝未明までに、マクロン氏が2075万3797票で66.1%、ルペン氏が1064万4118票で33.9%、と票を獲得し、圧倒的な差をつけてマクロン氏が当選しました。EUの将来を左右し欧州の安定か分裂かを左右する我が国安全保障にも大きな影響を及ぼす選挙でした。極右かそれ以外か、という争点により棄権率は25.44%となり、現在の大統領選挙制度が開始された1969年の大統領選挙以降で最も高く、国論の分断、極右かそれ以外かの論点以外の国民が求める施策の具現化が大きな課題となります。

 エマニュエルマクロン新大統領、フランス共和国政治と経済の発展を誓い誕生しました。マクロン新大統領は昨年旗揚げした超党派の市民運動“前進”の代表として一年少々の期間を経てフランス共和国史上最年少の大統領へ就任します。一方、フランスでは来月六月に下院議会総選挙が行われます。新大統領の政策をどのように実行に移すかは、前進、議会での主流派を形成できるかにより左右されるともいえるでしょう。

 新大統領の公約は、EU政策はEU強化を掲げ、ユーロ圏議会や財務相創設も提起し、EU域外との国境警備強化によるかつての欧州城塞政策の再開やEU域内経済活性化へEU域外からの関税強化を提唱します。移民問題は多様性を擁護し移民雇用促進企業への税制優遇等を提示しました。税制改革では法人税引き下げと富裕税見直しを公約しました。労働改革では現状週35時間労働制や年金62歳受給開始の維持、一方歳出削減へ病院を除く公務員12万人削減を提唱、同時に警察官1万と教員数千の雇用創出を行う。エネルギー政策は原発依存度を現在の75%から2025年までに50%まで削減する、など。

 労働市場改革や税と年金制度の簡素化、技術革新を阻む規制の緩和等多岐に及び、元々経済産業担当大臣としてオランド政権の一員であったマクロン氏は、フランス国内での改革への様々な障壁から遅々とした政策具現化へ新しい施策を求め超党派の市民運動“前進”を立ち上げ、大統領選へ身を投じました。併せて、フランス経済は低成長、失業増加、競争力低下、三重苦に瀕しており、改革への議会主導権は必須です。

 フランスでの親EU路線を掲げたマクロン政権誕生は、同時にイギリスのブレクジット、EU離脱交渉を加速させるとともに、ルペン候補公約のフランスEU離脱の可能性が中長期的に解消し、EUそのものの崩壊が回避されたことで、EU枠組から離脱するイギリスの政策を受け、イギリス国内に進出する多国籍企業の欧州単一市場残留への出イギリス、欧州域内への転出が本格化する事を意味します。

 イギリスからの多国籍企業欧州転出はロイター通信8日付報道“大手銀によるロンドンから欧州への移転、合計9000人規模に”として英スタンダードチャータードと米JPモルガンのEU域内移転が画定しており、米ゴールドマンサックスもロンドン金融街シティから欧州域内への事業展開へ重点を移す可能性を示唆しました。マクロン政権でのEUが盤石を維持する事は、産業流失によりイギリスの受ける打撃が拡大し、イギリスの追従するEU離脱への各国世論を抑制する可能性も生むでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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