北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空防衛作戦部隊論(第二九回):航空防衛力、基地防空基盤までの間隙護る暫定支援に護衛艦

2016-01-24 21:27:36 | 防衛・安全保障
■臨時分屯基地と僚艦防空能力
 南西諸島を中心に広大な日本の領空を防空するべく、拠点となる航空基地を補完するために全国の地方空港で戦域内の施設へ飛行中隊を置く臨時分屯基地構想、今回はその防空について。

 護衛隊にはイージス艦の配備が進み、臨時分屯基地の航空基地能力が作戦可能水準に整備完了するまでの一定期間、航空攻撃から臨時分屯基地の防空に当たる運用想定です。僚艦防空能力は、現在では護衛艦あきづき型に想定されているもので、イージス艦やターター艦のような艦隊防空能力程の広域防空は想定していないが、個艦防空能力よりは大きな防空能力をもつ、というもの。

 F-15戦闘機やF-2支援戦闘機を必要に応じ8機単位で分散運用する、という方式で戦闘機を一カ所の基地に集中する危険、つまり弾道ミサイル攻撃や巡航ミサイル攻撃による滑走路破壊などで一挙に遊兵化する、もしくは巡航ミサイルにより格納庫や精度が高いものであれば掩体ごと破壊され、離陸する前に破壊される、という状況を回避する為の施策として提案しました。

 ここで考慮しなければならないのは、複数の地方飛行場を臨時分屯基地として戦闘機を配置する場合の最大の難点、防御と補給が分散化するという点で、特に那覇基地のような基地防空隊と高射群に陸上自衛隊の高射特科連隊と嘉手納のアメリカ陸軍防空砲兵大隊による複郭防空陣地という堅固な防空とは比較できない水準の防空密度しか確保出来ないということです。

 基地防空隊を増設すればいいのではないか、という問いもあるでしょうが、基地防空隊の装備は、短距離地対空誘導弾2セットで射撃管制装置2両とミサイル発射機4両、加えて20mm高射機関砲VADS18門に91式携帯地対空誘導弾/スティンガー携帯地対空ミサイル24セットと、かなりのもので、ミサイル等の整備面や展開へ要する部隊規模の増大、簡単に増勢できるものではありません。

 臨時分屯基地展開を念頭に基地防空隊を整備する場合、まず提示した航空団の規模が24機の飛行隊を基幹とする航空隊3個を以て編成するという案ですので、平時展開する基地と同数の2個基地防空隊、展開基地によっては3個基地防空隊が必要になります。そこにまず第一波として展開する航空隊の飛行隊24機を3個飛行中隊に分け展開することとなります。

 増強という代替案、すると、最低で増設しなけれならない基地防空隊は、航空団が、北部と中部に西部と南西の4個航空団、そこに各3個基地防空隊を増設するのですから12個基地防空隊を増設、つまり短距離地対空誘導弾24セット、VADS216門、携帯地対空誘導弾288セット、増強する必要がでてきます。航空団の分散運用は更に全ての飛行隊を分散展開させるわけでは必ずしもありませんが、それでも少ない数ではありません。このため、基地防空に護衛艦と部分的でも協同を図る必要がでてくるわけです。

 特に、精密誘導爆弾や滑空爆弾等高高度から運用される空対地装備に対して、基地防空地対空誘導弾のようなミサイルシステム以外の装備は対処できる能力に限界があります、携帯地対空ミサイルにより巡航ミサイルを迎撃する事も可能ではありますが、確実性となりますとどうしても低くなります。もちろん、機関砲と携帯地対空ミサイルはこれらの脅威へ打つ手が少ないのですが、これが無ければ通常爆弾により簡単に攻撃されることとなりますので意義は大きい。

 携帯地対空誘導弾等が装備されていれば、精密誘導爆弾運用能力を持つ航空機以外の接近が非常に困難となりますので、相手として我が方へ用いる選択肢を狭める事が出来、意味があるということ。反面、精密誘導爆弾や巡航ミサイル攻撃に対して、近傍に有力な防空部隊を速やかに進出させる選択肢として、輸送艦による高射隊の前進や高射特科部隊の前進、戦闘機を増勢し戦闘空中哨戒の強化という選択肢はあるのですが、兵器システムとして自己完結した防空システムの選択肢として護衛艦による支援、というものがあるのです。

北大路機関:はるな くらま
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