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陸上防衛作戦部隊論(第四三回):装甲機動旅団編制案の概要 PLS輸送車と輸送改革

2016-01-13 22:07:36 | 防衛・安全保障
■PLS輸送車と輸送改革
装甲機動旅団の段列地域と補給支援体制を確固たるものとするにはPLS輸送車と管理タグコンテナ方式による輸送改革と自動化が必要です。

PLS輸送車の大きな課題は、その取得費の大きさです。原型車である重装輪回収車で一両1億4500万円、これは96式装輪装甲車よりも高価で、現実的に旅団輸送隊へ戦車や装甲戦闘車と1:1での配備はあまり現実味がありません。ただし、旅団の前方支援大隊にはどうしても必要な車両であり、相当の負担であっても物流改革が必要でしょう。

災害派遣用途という部分を前方に押してでも旅団全体で30両程度は必要となります。理想は50両程度で、各連隊戦闘団へ16両程度を展開させることができれば、戦車中隊を同時機動させ、小隊規模の普通科部隊所要の装甲戦闘車を輸送、次の往復で完全編成の装甲戦闘車中隊を輸送可能です。予算面では30両も厳しいでしょうが。もちろん、装甲機動旅団は機動運用が前提である為、段列地域と戦闘地域は、主陣地と前地に後方という戦闘が動的に展開します、このため、必要な車両数はその戦線の延長に応じ転換する可能性は忘れてはなりません。

一方、PLSトラックの導入は前述のように災害派遣においても民間のコンテナ貨物輸送に編入し運用できるため、例えば大規模災害や本土武力攻撃の事態に際し、自衛隊と民間業者の輸送任務という同一行動への組織の壁の解消に一躍買うでしょう、自衛隊の輸送システムを民間の輸送方式に近づける為、当然といえば当然なのですけれども。この災害派遣を正面に出す上でのPLSトラック取得ですが、PLSトラックのコンテナ輸送能力はコンテナヤードから必要な物資を電子タグにより管理し適宜必要な装備の支援へ機材を輸送できる点にあります。

また、規格コンテナを採用するため、自衛隊用物資以外の物資でも輸送する事が可能で、東日本大震災規模の災害にさいし、東日本大震災では全国から様々な物資が輸送されましたが、物資集積地へ有志の供出品、衣類や食料などの持ち寄り物資について、あまりもの総量から自衛隊は各地へ集積拠点を構築し対応しました、これをコンテナ化していれば、素早い輸送が可能であったはずです。

このコンテナの威力ですが、米軍では前方支援大隊へクレーンや洗浄装置と検査器具など整備機材一式をコンテナモジュールに納め、機械化部隊へ随伴させています、随伴というと大規模派遣を彷彿させますが、たとえば日米共同演習へ十数両の装甲車を展開させるさいにもコンテナモジュール化した野整備設備を持ち込み、稼動率維持へ活用していました。

いわば、装軌車野整備施設の機動化を迅速に果たしたかたちですが、PLS輸送車を牽引機能のみ戦車輸送車として活用し、戦車を卸下後にコンテナ輸送に転換する方式であれば、自衛隊にも有用です。問題は、戦車を卸下する地点までのコンテナの輸送です。ここで一つ、旅団を支援する上級部隊とともに考える必要があるのは民間輸送力の活用です。

北大路機関:はるな くらま
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