北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:将来三胴船方式艦艇への一考察【2】 地方隊掃海隊の日施掃海任務と哨戒任務

2016-01-05 22:48:38 | 先端軍事テクノロジー
■日施掃海任務と潜水艦脅威
 将来三胴船方式艦艇への一考察について、今回はその必要性の背景、掃海艇が哨戒任務を担う必要の背景を地方隊掃海隊の日施掃海任務と哨戒任務の関係から見てゆく事としましょう。

 最初に、本題から外れますが中東では懸念すべき事態が進行中です、シーア派指導者処刑を契機となり中東は現在、イランとサウジアラビアが国交断絶に至る深刻な対立となり、バーレーンとスーダンもイランと国交を断交、外交関係の断絶と、経済関係の停止、航空乗り入れ便の受け入れ停止、中東情勢はシリア内戦とイラクシリアISIL活性化に続く深刻な緊張を孕む事態となり、現在全国の原子力発電所原子炉のほぼすべてが停止中である我が国は、サウジアラビアとイランの中間に位置するペルシャ湾からの石油に国家が依存する状況であり、現在の安全保障関連法でもペルシャ湾での掃海任務を具体任務の一つに挙げており、今後の展開を注視しましょう。

 本題、機雷戦は難易度が大きく、ついで、とはいうほど簡単にはいきませんが対処する能力が盛り込まれるようです、そして流氷観測と哨戒任務、ほどではありませんが、一見無謀にみえるこの二つの任務を海上自衛隊はなぜ一隻にまとめることとしたかについて。日施掃海、海上自衛隊は有事の際、特に沿岸防備にあたる地方隊の重要任務としてこの継続的遂行が求められます。そして、日施掃海任務へ哨戒艦艇として限定的でも水上対潜戦闘能力が求められる、海軍戦略上の装備体系転換が影響しました。

 日施掃海とは、重要航路を機雷の有無にかかわらず毎日掃海する任務です。重要航路、横須賀地方隊であれば京浜地区の浦賀水道と中京地区の伊良湖水道、呉地方隊であれば阪神地区の紀伊水道と九州本州の豊後水道、佐世保地方隊の対馬海峡と大隅海峡に舞鶴地方隊の若狭水道、大湊地方隊の津軽海峡などが重要航路です。掃海艇を毎日派遣し、この水道に機雷が敷設されていないかを掃海、重要港湾へ入港する艦艇を機雷攻撃から守ることが日施掃海任務です。機雷は我が国周辺に敵国が機雷敷設艦を派遣せずとも航空機や潜水艦により敷設が可能で、自動車貨物船などを機雷敷設に転用した事例もあります。

 機雷の有無にかかわらず、と言いますのは機雷の被害が出てから掃海艇が出動しては遅すぎる為、予め機雷の有無を掃海し、無いことを示す、というもの。機雷、安価で途上国でも大量に調達できる装備ですが爆発威力が大きく、一発で大型船舶を行動不能に陥れますので、一発でも触雷被害がでますと、その航路は当面航行不能となるため、予め掃海を行わなければなりません。地方隊配備の護衛艦が自衛艦隊に、機動運用体制強化として集約配備され、地方隊から護衛艦部隊はすべて中央に集約されましたが、掃海艇が地方隊に残されたのは、日施掃海任務の実施海域は基本的に不変であるため、集約しても動かすことはできず、このため、運用部隊と管理部隊を維持することが求められたためといえました。

 この任務に将来三胴船、多目的艦艇として掃海艇と哨戒艦の任務が重ねられた背景には、機雷敷設手段の多様化と掃海艇戦略価値の増大が挙げられます。機雷敷設手段に潜水艦が含まれることは前述の通りですが、その敷設方法が魚雷発射管からの敷設ではなく、魚雷型の機雷を長距離から敷設する方法が開発され、掃海した直後に敷設される可能性がでてきたためです。またもう一つ、無視できないのは掃海艇そのものが攻撃目標となる可能性です。潜水艦による機雷敷設は第二次大戦中から実施されていますが、潜水艦からの敷設方法は基本として魚雷発射管からの機雷敷設であり、しかし、現在の新しい脅威は魚雷型の長射程の自走式機雷です、つまり、潜水艦は需要航路から離れつつ投射できる意味であり、同時に潜水艦は魚雷も投射可能です。

 機雷をしとめにいったら魚雷にしとめられた、簡単に表現するならば掃海艇が標的とならないよう掃海艇であっても対潜哨戒能力が求められるわけです。つまり、潜水艦が機雷敷設のついでに掃海艇を魚雷で狙うならば、掃海艇も機雷掃討に併せて近くの潜水艦も掃討する必要性が出ている、というものです。特に機雷敷設手段が潜水艦となり魚雷型の機雷が長射程から投射される、機雷敷設手段の長射程化に敷設手段の秘匿性強化という転換を前に、掃海艇という機雷掃討手段そのものについても長射程の機雷敷設へ迅速に対処できるよう技術革新の必要が迫られている、といえるのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする