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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

軍事検証:ガールズ&パンツァー【4】 戦車の高度な戦闘照準と戦車全体を指揮する戦車長

2016-01-19 22:41:22 | 映画
■戦車の高度な戦闘照準
 戦車の照準は飛翔する砲弾を目で追っての寸秒の戦い、としました。実際にはそれ以上に初期の戦車などは照準器性能が低く更に難渋する事もあった、という事を留意点としておくべきでしょう。

 戦車射撃はここまででもかなり高度な能力を求められるような印象を与えますが、相手戦車が動いている場合が大半で移動目標射撃を確実に達成できるようになってようやく一人前の入り口です、が、ここで目標までの測距作業が極めて重要となります、戦後第一世代戦車の徹甲弾初速は1000m/s程度、戦闘照準1000mで射撃する場合は弾着まで1.5秒ありますから、目標が30km/hで真横に移動している場合は7m近く移動します、戦車の全長を考えると其処まで大きな誤差があっては命中しませんので、戦車の前方3m程度の距離を照準しなければなりません。

 相手戦車はこちらの射撃を瞬間的に発砲焔で確認し急制動と回避行動を執った場合、命中しない可能性がありますし、地形によっては急に速度が変わったりもします、戦闘距離が500m以下ならばここまで修正距離は大きくならないでしょうが、あっという間に間合いを詰められるので、距離を置く執る必要があるのですが、距離を遠くとれば砲弾が磁力の影響を受けて落下しないよう見越しを採る必要と相手が高速で回避行動を執った場合には命中しにくくなります。

 戦術機動に際しては瞬間に相手が短停止することがありますが、その行動の意味は短停止射撃を行う瞬間ですので、相打ちに追い込まれる可能性も出てくる、戦車射撃はやはり難しいですね、90式戦車と10式戦車に機動戦闘車は目標自動追尾装置が採用され便利になりました、目標をロックオンすると自動追尾し見越し線を採って射撃してくれます、高級ですので採用しているのはメルカヴァMk3/Mk4など世界でも限られますが、便利になりました。

 正確な射撃には正確な戦闘距離を測距しなければ達成できません、74式戦車以降であればレーザー測距装置で誤差0.05%の距離を測距できるのですが、第二次大戦中と戦後第一世代戦車までは測距が大変でした、そもそも世代によっては測距を考えていない照準器の時代もありましたが、第二次大戦末期の時点で採用された最新鋭の照準技術が測距にスタジア方式、ドイツではシュトルヒ方式とよばれましたが、照準器の目盛に対して目標物、例えば全幅3mの戦車がどの数値で映るのかを瞬間で計算し距離を標定しました、街頭などで三脚の上の測距装置を持った計測員さんと紅白の基準棒をもった計測員さんが測量を行っていますが、原理的にはあれと同じものです。

 正確な測距には第二次大戦末期の戦車と第一世代戦車の場合には外装式若しくは搭載型の倒像合致式測距装置を用います、蟹の目のような砲隊鏡やロケットランチャーのような筒の両端にロケットランチャーでいうところの側面部分両端にレンズがついていて測量する装備で、上下に鏡像が投影されていて、距離を上下の鏡像が合致するよう操作する事で操作した修正量に応じて距離が分かります。

 機能としてはカメラのレンジファインダーカメラ機能、誤解を恐れずに説明すれば通常の一眼レフでもオートフォーカス機能においてピントが合うまでのレンズの回転数から距離を算出するというものと技術的には延長線上にあります、最初から測距して待伏せない限り正確な測距を第一線で展開する事は難しいのですが、第二次大戦中は小隊収集射撃を行う事で低い命中精度を補っていました、同型戦車が一個小隊4両から5両と同時に同一目標を射撃すればそれだけ命中する確率が高くなる、わけです。

 戦車長、砲手から戦車長になりますと戦車を指揮する立場です、が戦車は敵を先に見つけなければなりません、相手は錯綜地形や障害物に身を隠して前進しますので、適した地形と乗員の練度を念頭に必要な行動を必要ならば命令し以心伝心の高練度を目指さなければなりません、しかし、相手を見つけるという単純作業が大変なのです、現代戦車では交戦距離3000mが普通、3000mの交戦距離といえばJR京都駅新幹線ホーム付近から阪急河原町地上部分と撃ちあうようなもの。

 しかし敵戦車の接近方向が確実にわかるならば兎も角油断していると全然違う方向からの脅威がでてきます嵐電大宮駅の当たりから射撃が加えられるかもしれません、油断せず前方を警戒していても今度は包囲機動した敵が京阪伏見稲荷駅あたりから撃ちこんでくる可能性がありますし、砲手は見えているものだけを警戒する訳にはならないのです、そこで戦車長からの目標指示を受けて素早く照準し、また戦車長が警戒を促す方向を直感的に認識して警戒しなければなりません。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (8)
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