◆装甲化は次の段階へ!?
昔の書籍なんかを整理していまして、そのなかで繰り返し“普通科部隊の装甲化”という論調が見られまして、そういう時代もあったのだなあ、と昨日の事のように思い出します。
自衛隊の装甲化は軽装甲機動車の導入で大きく変わりました。その道中は2001年度予算から、いまから10年前です。当方初めて軽装甲機動車を見ましたのは2002年の伊丹駐屯地祭で33連隊に入ったばかり、導入当初はまだ小銃も64式で、という話を聞きました、まだ十年経っていないのですね。あの年は訓練展示模擬戦の仮設敵が60式自走無反動砲を繰り出していた時代です。
年間100両から多い年度には200両が調達され、既に1500以上が装備されている軽装甲機動車の装備により、当方が足を運ぶ駐屯地ではまず最初に第10師団が普通科連隊に中隊規模で装備してゆきまして、続いて佐藤連隊長とともに7連隊へ装備が開始、偵察隊へも装備が開始され、大津駐屯地祭へは13旅団管区からも軽装甲機動車が展開しているという数年前、普通科部隊の装甲化は着実に進んでいるということを強く認識しました。
高機動車よりも小さくて使いにくいですよね・・・、いや元来が班単位で複数車両を運用して火力拠点を点から線や面にする事が目的のようですよ。不整地突破能力が低く演習場では注意していないと重心が重くて・・・、そういえば装軌式小型装甲車の構想もあったようですね。運転時に視界が悪くて夜間の無灯火走行時は暗視装置が引っ掛かってしまって・・・、装甲車ですからね。
さて・・・、意見は色々聞くのですが相応の理由もありまして、ともあれ、万年徒歩の普通科部隊、冷戦時代は地形に依拠した頑強な抵抗を行うには最高の不整地突破能力を目指す徒歩が地皴の隅々を防衛拠点と出来る、と言われていたのですが、戦闘防弾チョッキや対戦車ミサイル等普通科部隊の装備は重くなるばかり、それならばそろそろ装甲車の広範な装備が必要だろう、という運びで導入されました。小さい点や機動力については上記のとおり。
ドイツのウィーゼル空挺戦闘車的な小型車両が、軽装甲機動車の候補に上がっていた、とも聞く事があるのですけれども、戦略展開能力を考えた場合と、全ての普通科連隊に中隊規模で配備する事を考えれば、あの方式が最適だったのかな、と。参考に想定されていたというフランスのVBL軽装甲車と比べた場合軽装甲機動車の方が2ドアから4ドアになっていますし、汎用性も高まっているのだなあ、と。
他方で、軽装甲機動車は装甲車を火力拠点と考えていて、一個普通科班で分散して運用する事を想定しているので、歩兵戦闘車と比べて一発で全滅する可能性が無く、点としての運用から線や面としての運用が可能になるという点の一方で、実は降車戦闘を本来は想定していなかったのではないか、と思わせる話を聞いた事があります。
乗車戦闘が基本となっていたはずなのに降車戦闘を行っているので、運転手が降車する必要があり、後方に置いたまま戦闘に突入するのですから敵に捕獲されたり、車上狙いに荒らされたりしないようにカギが取り付けられているとのことですが、降車戦闘を行っている途中での状況変化に装甲車が展開出来ないというのはどうなんだろう。
そこで、普通科部隊の装甲化というのは、軽装甲機動車で一段進む事が出来たのですけれども、乗車戦闘により迅速な戦闘展開を行う軽装甲機動車とともに、降車展開により支援する大型装甲車の普通科連隊への広範な配備もそろそろ考えなければならないのではないかな、そういう余裕が出てきているでしょう、と考えたりしました。
ううむ、高機動車の装甲型というような、文字どおりに受け取らないで、その四輪駆動程度で機関銃を搭載する中型の装甲車か、負担は大きくなるのですが戦車部隊に追随可能な装甲戦闘車かを大量導入する必要が出てきているのだろう、と。これは将来装輪装甲車体系が目指す装備でしたが、あまり高くなりすぎると数を揃えられない可能性が出てきますし、しかし安普請では展開能力に差が出てしまう。
難しいところですけれども、戦車が定数削減となる以上は戦車を敵の対戦車兵から防護できる程度の装甲戦闘車が普通科連隊にも、対戦車中隊か第五中隊、もしくは本部管理中隊に戦車協同小隊として車両のみ4~8両程度を装備させて、中型装甲車や軽装甲機動車と連携させるという方法もあるかもしれません。
それをやるとソ連の軽・中・重混成戦車団が速くて軽い順に独ソ戦で各個撃破されたようになってしまいますが、運用次第では中戦車と重戦車を組み合わせたドイツ軍的な運用を普通科部隊の装甲車で可能となりますし、富士教導団普通科教導連隊のような混成運用の例、まあこれは仕方ない半面もあるのですが、なんとかなりそうですよね。次の十年で普通科部隊がどう発展しているか、ちょっと期待したりします。
HARUNA
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