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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

軽装甲機動車部隊量産開始から10年 大きく変わった普通科部隊

2011-02-13 14:18:59 | 防衛・安全保障

◆装甲化は次の段階へ!?

 昔の書籍なんかを整理していまして、そのなかで繰り返し“普通科部隊の装甲化”という論調が見られまして、そういう時代もあったのだなあ、と昨日の事のように思い出します。

Img_1714  自衛隊の装甲化は軽装甲機動車の導入で大きく変わりました。その道中は2001年度予算から、いまから10年前です。当方初めて軽装甲機動車を見ましたのは2002年の伊丹駐屯地祭で33連隊に入ったばかり、導入当初はまだ小銃も64式で、という話を聞きました、まだ十年経っていないのですね。あの年は訓練展示模擬戦の仮設敵が60式自走無反動砲を繰り出していた時代です。

Img_4601  年間100両から多い年度には200両が調達され、既に1500以上が装備されている軽装甲機動車の装備により、当方が足を運ぶ駐屯地ではまず最初に第10師団が普通科連隊に中隊規模で装備してゆきまして、続いて佐藤連隊長とともに7連隊へ装備が開始、偵察隊へも装備が開始され、大津駐屯地祭へは13旅団管区からも軽装甲機動車が展開しているという数年前、普通科部隊の装甲化は着実に進んでいるということを強く認識しました。

Img_8583  高機動車よりも小さくて使いにくいですよね・・・、いや元来が班単位で複数車両を運用して火力拠点を点から線や面にする事が目的のようですよ。不整地突破能力が低く演習場では注意していないと重心が重くて・・・、そういえば装軌式小型装甲車の構想もあったようですね。運転時に視界が悪くて夜間の無灯火走行時は暗視装置が引っ掛かってしまって・・・、装甲車ですからね。

Img_4628  さて・・・、意見は色々聞くのですが相応の理由もありまして、ともあれ、万年徒歩の普通科部隊、冷戦時代は地形に依拠した頑強な抵抗を行うには最高の不整地突破能力を目指す徒歩が地皴の隅々を防衛拠点と出来る、と言われていたのですが、戦闘防弾チョッキや対戦車ミサイル等普通科部隊の装備は重くなるばかり、それならばそろそろ装甲車の広範な装備が必要だろう、という運びで導入されました。小さい点や機動力については上記のとおり。

Img_2546  ドイツのウィーゼル空挺戦闘車的な小型車両が、軽装甲機動車の候補に上がっていた、とも聞く事があるのですけれども、戦略展開能力を考えた場合と、全ての普通科連隊に中隊規模で配備する事を考えれば、あの方式が最適だったのかな、と。参考に想定されていたというフランスのVBL軽装甲車と比べた場合軽装甲機動車の方が2ドアから4ドアになっていますし、汎用性も高まっているのだなあ、と。

Img_3770  他方で、軽装甲機動車は装甲車を火力拠点と考えていて、一個普通科班で分散して運用する事を想定しているので、歩兵戦闘車と比べて一発で全滅する可能性が無く、点としての運用から線や面としての運用が可能になるという点の一方で、実は降車戦闘を本来は想定していなかったのではないか、と思わせる話を聞いた事があります。

Img_3908  乗車戦闘が基本となっていたはずなのに降車戦闘を行っているので、運転手が降車する必要があり、後方に置いたまま戦闘に突入するのですから敵に捕獲されたり、車上狙いに荒らされたりしないようにカギが取り付けられているとのことですが、降車戦闘を行っている途中での状況変化に装甲車が展開出来ないというのはどうなんだろう。

Img_4770  そこで、普通科部隊の装甲化というのは、軽装甲機動車で一段進む事が出来たのですけれども、乗車戦闘により迅速な戦闘展開を行う軽装甲機動車とともに、降車展開により支援する大型装甲車の普通科連隊への広範な配備もそろそろ考えなければならないのではないかな、そういう余裕が出てきているでしょう、と考えたりしました。

Img_6761  ううむ、高機動車の装甲型というような、文字どおりに受け取らないで、その四輪駆動程度で機関銃を搭載する中型の装甲車か、負担は大きくなるのですが戦車部隊に追随可能な装甲戦闘車かを大量導入する必要が出てきているのだろう、と。これは将来装輪装甲車体系が目指す装備でしたが、あまり高くなりすぎると数を揃えられない可能性が出てきますし、しかし安普請では展開能力に差が出てしまう。

Img_5218  難しいところですけれども、戦車が定数削減となる以上は戦車を敵の対戦車兵から防護できる程度の装甲戦闘車が普通科連隊にも、対戦車中隊か第五中隊、もしくは本部管理中隊に戦車協同小隊として車両のみ4~8両程度を装備させて、中型装甲車や軽装甲機動車と連携させるという方法もあるかもしれません。

Img_4117 それをやるとソ連の軽・中・重混成戦車団が速くて軽い順に独ソ戦で各個撃破されたようになってしまいますが、運用次第では中戦車と重戦車を組み合わせたドイツ軍的な運用を普通科部隊の装甲車で可能となりますし、富士教導団普通科教導連隊のような混成運用の例、まあこれは仕方ない半面もあるのですが、なんとかなりそうですよね。次の十年で普通科部隊がどう発展しているか、ちょっと期待したりします。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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26 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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>戦車部隊に追随可能な装甲戦闘車 (月虹)
2011-02-13 21:47:47
>戦車部隊に追随可能な装甲戦闘車

日本の場合89式を開発出来たものの価格の高騰によって量産化に失敗しているのでこの点を解決できない限り装甲戦闘車の全部隊配備は難しいでしょうね。
その点軽装甲機動車は部品のユニット化や民生部品の採用など自衛隊にしては珍しく開発時から調達コスト低減を目指して作られた結果量産化に成功しています。89式の後継にあたり現在研究中の近接戦闘車にとって調達コストと性能維持は重要な課題となってくるでしょう。
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たびたび失礼いたします (ドナルド)
2011-02-14 00:50:46
たびたび失礼いたします

普通科の装甲化(冷戦時代で言えば機械化)は私もとても重要だと思っていました。ただ特に軽装甲機動車の利用法が今少し分かっておりません。

装甲車化された普通科部隊の利点を考えると、「1:敵の榴弾、迫撃砲の砲撃下でも戦術機動ができる」「2:敵の対装甲火器が少ない所では自由に行動できる」のが利点だと思います。しかし、準備の整った敵陣地の前では、対装甲火器や機関砲による被害が大きくて大苦戦が予想されます。もちろん徒歩での突撃に比べればはるかに有利なのでしょう。

それでも、装甲兵員輸送車は、世界的にも広く使われていますから、正しい使用法=戦術があるのだと思います。私が詳しく知らないだけで。しかし、軽装甲機動車の場合には、どのような使用方法なのでしょう?(PANZER誌などでも、戦術の確立を試みている最中、という記述をちらっと見た気が。。)

素人考えですが、軽装甲機動車は12.7mmクラスの機関砲の徹甲弾相手だと防御できず、7.62mmでも徹甲弾の近距離射撃では長くは持たなそうだ、と感じています(根拠はありませんが、世界の装甲車両の搭載火器から見ているとそうでないとおかしい)。つまり、重機関銃/機関砲を備えた陣地が相手だと、軽装甲機動車では接近は不可能だろうと、推定しています。

となると、軽装甲機動車を普通科で用いる際には、冒頭に書いた2つの利点、つまりは前線の一歩手前までの機動力を上げるけれども、前線での戦いではやはり降車するしかないのではないでしょうか?どのような使われ方をしているのか、どなたかご存知ないでしょうか?

一方で、軽騎兵部隊としては悪くないと思います。これも私は、どう使われるか詳しくは知らないのですが、世界中で偵察部隊に同様の車両が配備されていることから、なんらかの正しい使用法=戦術があるのだと思います。アメリカの旅団戦闘団などは、騎兵大隊を持っていることが多いようですから、自衛隊でも「軽装甲偵察大隊」みたいに集中して使う方が良かったりしないでしょうか(戦車が減って人員が余っている(?)機甲科隊員の使い道にもなるし、、)。

現状では普通科連隊の中に、軽装甲車化中隊がいるわけですが、これは軽装甲偵察大隊みたいに使われているのでしょうか?それとも、機械化歩兵として運用されているのでしょうか?それともこの2つには戦術的に差はなくて、私はとんちんかんなことを言っているのでしょうか?

最後に、私は3000万円の軽装甲機動車3両(12人乗り)で、1億円の96式装甲車(10人乗り)が一台買えるのであるから、軽装甲機動車がもうある程度そろっていること、装甲の厚さが違うこと、世界標準の機械化歩兵部隊をもっと整備すべきという観点から、今の普通科には、後者の方が必要な気がしています。
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軽装甲機動車、 (トマホーク)
2011-02-14 02:21:27
軽装甲機動車、

性能面での疑問はいくつか残りますが、陸自の装甲化に多大な貢献をしましたよね。

先日海田市で見かけた感じですとLAVをガンポート的な運用にして弾幕を張りつつ高機動車から降車戦闘というのが現在のところみたいですね。

現在のところそのような手の装備の開発はしているように見えませんし…

別に96式をもう少し増産して各連隊に少数ずつ配備でも問題はないと思いますが。


それと降車したとき後方に置いてきた車両の問題では鍵の問題だったり色々あるみたいですね。

ハンビィーはスイッチ一つでエンジン掛かるみたいですけど・・・
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そんな予算がどこに… (通りすがり)
2011-02-14 06:38:29
そんな予算がどこに…
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月虹 様 こんばんは (はるな)
2011-02-14 18:59:55
月虹 様 こんばんは

89式装甲戦闘車と同じ轍を踏まない為には、かなり最初から自走榴弾砲や施設装甲車、自走防空車両等との共通化を図る必要がでてくるでしょうね。もっとも99HSPは用途廃止開始が相当先ですので、FH後継という事になりますが。この点は第一に職種学校を超えた装備開発体制が必要になってくると思ったりもします。
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ドナルド 様 どうもです (はるな)
2011-02-14 19:13:43
ドナルド 様 どうもです

軽装甲機動車ですが、防御、攻勢防御を念頭に置いた迅速な展開を考慮し、乗車戦闘という選択肢を採ったのかな、と。逆にいえば陣地構築の時間的余裕を与えない、ということも運用の範疇に含まれているのかな、と。だからこそ、全て軽装甲機動車で充足させた普通科連隊が無いのではないでしょうか。

軽装甲機動車ですが、運用については、どの雑誌でも取材結果により模索中、という一文が出てくるのですが森野軍事研究所がかや書房から出した“次世代の陸上自衛隊”という本に小型装甲車の用法がかなり具体的に構想されていました。96式WAPCが評価試験中に出版された本ですが、軽装甲機動車の開発を予感させる内容です。

軽装甲機動車の防御力ですが、89式装甲戦闘車がM-2IFV等の装甲戦闘車と比較した場合、かなり防御力があるとその筋から聞いています。具体的な話も聞こえはするのですが、見た目ほど軟な車両ではないことだけは一致しています。ただ、陣地攻撃を乗車戦闘で行うという事はあり得ないので、乗車戦闘による機動運用のみを想定しているのでは、と。つまり火力拠点ですね。そういう点からも従来型の装甲車との協同が必要になるのだろう、と考える根拠になります。

軽装甲偵察大隊ですが、しかし不整地突破能力が低すぎるのではないでしょうか。偵察には最低でも87式偵察警戒車、可能であれば89式装甲戦闘車が必要で、斥候等ならば軽装甲機動車だけの運用も考えられますが、集中運用すると発見されてしまいますし。

新しい汎用装甲車ですが、将来装輪装甲車体系が高コスト化の危険性を有しているのならば、軽装甲機動車をボンネット型からキャブオーバー型とし、駆動系を四輪から六輪化、車体を1m延長した型を開発してみては、と思ったりもしました。
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トマホーク 様 どうもです (はるな)
2011-02-14 19:20:15
トマホーク 様 どうもです

海田市、善通寺、今年こそ行きたいですね・・・。

さて、高機動車との協同を駐屯地祭の訓練展示では比較的多く行っているのですが連隊戦闘団訓練検閲ではどういう運用を行っているのか、興味は尽きないですね。このあたり、演習場での訓練写真を多く掲載している丸誌やPANZER誌に北部方面隊以外の写真充実を願いたいところ。

96式ですが、普通科連隊が40以上ありますからね・・・、本部管理中隊に四両程度配備するだけで160両必要になってしまい、年間調達数が最低でも50~70両は必要なところです。

理想的な運用は、中隊規模で、軽装甲機動車小隊二個と96式装輪装甲車小隊二個、迫撃砲小隊と対戦車小隊は火力小隊として軽装甲機動車により運用するのが望ましいのですが、ね。中隊長は陣地占領と攻撃前進で小隊を使い分けるというかたち。
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通りすがり 様 (はるな)
2011-02-14 19:21:08
通りすがり 様

軽装甲機動車の広範配備も最初はそんな予算が何処に、といわれていましたので・・・。量産体制をしっかり計画して部隊配備を行えば、・・・。
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この手の装備を始めてから問題になった事があります (通りすがり(元))
2011-02-14 21:52:47
この手の装備を始めてから問題になった事があります
それは「燃料配分」です

従来の中隊における車両運用はカーゴや高機・ジープ等混合運用でしたが、運用する車両台数も1個中隊で多くて20台以下でした。
しかしLAV中隊ではLAVだけで20両にトラックやパジェロ等を加えると30台が1個中隊での運用台数です。

各連隊に配分される燃料枠はある程度決まっているので、あまり台数が多いとその分燃料枠を余計消費してしまう結果になります。

車両が増えても予算の絡みで燃料は従来通り・・・。

結構部隊側でも苦慮していると聞いています。
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通りすがりさんのコメント、重要ですね。。個人的... (ドナルド)
2011-02-15 01:12:22
通りすがりさんのコメント、重要ですね。。個人的には、この辺が、「予算の無駄使い」に感じています。必要なものは十分購入する。そして、その代わりに、といっては何ですが、、

(多分、大反対を受けるでしょうが)

ここはやはり実員を1万人削って、その予算=燃料と装備を捻出する、というのはどうなのでしょう?

装備訓練が十分だけど人員が1万人少ない(13万+即応予備1万?)陸自と、人員は今と同等だが相変わらず軽歩兵中心の陸自と、どちらが侵略する側にとって脅威なのでしょう?

(防衛費増は期待できない、という前提で話しています。増やせるのなら昔からこんな苦労はしない。。)

うーむ。難しい。。
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