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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

霧島山新燃岳噴火の火山灰が新田原基地へ影響、小松基地・百里基地へ訓練移転

2011-02-16 23:17:23 | 防衛・安全保障

◆火山活動は安全保障にも影響を与える

 霧島の噴火、なんと60km離れた航空自衛隊新田原基地に対して影響を及ぼしていたようです。こうなると鹿児島県の鹿屋航空基地は大丈夫なのか、と思ってしまいます。

Img_8883_2  小松基地 新田原のF15到着 2011年02月16日:新燃岳噴火 空自が訓練移転・・・小松市向本折町の航空自衛隊小松基地に15日、新田原(にゅうたばる)基地(宮崎県新富町)所属のF15戦闘機8機が到着した。宮崎、鹿児島県境の新燃岳(しんもえだけ)の噴火で同基地での訓練が滞っているための「移動訓練」で、今週中に同基地飛行教育航空隊のF15を15機程度、T4練習機2機程度と隊員約150人を受け入れ、早ければ21日から訓練を始める予定。小松基地渉外室によると、先月下旬からの新燃岳の降灰で、火口から約60キロ離れた新田原基地でも飛行中止などの影響が出ており、小松基地と百里基地(茨城県小美玉市)に部隊の一部を移して訓練することが決まったという。 同室の広報担当者は「移動訓練は普段から行っているが、災害による実施は極めてまれ。訓練の終了時期は未定で、小松での飛行回数も増える見込みだが、飛行ルートの地元合意などをしっかり教育した上で訓練を実施する」と話している。(長田豊http://mytown.asahi.com/ishikawa/news.php?k_id=18000001102160005

Img_9289_2  小松基地へ新田原基地の第23飛行隊が移動してきているとのことです。記事によればF-15が15機程度、これはかなりの数ですね。火山灰は航空機に対して非常に大きな悪影響を与えます、空気取り入れ口からエンジンに飛びこみ高熱で溶解したのちにエンジン後部で外気により冷却され、固まって噴射を阻害するほか、タービンブレードにこびり付き冷却機能を妨害してタービンそのものが熱で溶融する、等など不具合を引き起こします。このほか、火山灰に突っ込むと風防が研磨され摺りガラス状になったりして視界を妨げ、非常に危険だったりします。もっとも厄介なのは、火山灰というと降り積もったものや噴煙を思い浮かべつ方が多いかもしれませんが、実は噴気により上空へ上りますと拡散してしまい、多くの場合は肉眼では見えなくなってしまうのですね。したがって回避するのが非常に難しい。当然レーダーにも映りません、IRSTならば多少は見えるかもしれないのですがこれは推測ですし、IRSTは火山灰対処用のものではありません為難しいでしょう、IRSTそのものが火山灰に突っ込めばセンサー部分のカバーが研磨されてしまいますし、酷い場合はピトー管に火山灰が詰まってしまい速度など計器の異常を引き起こす事もあります。

Img_8287_2  霧島の噴火はいつ沈静化するか、全く見通しが立たず、これも民主党が歳出削減の一環として霧島火山系を含む多くの火山を常時警戒の体制から、数百年に一度の火山噴火を監視することは無駄だとして削った事に起因しているのでしょうか、あまり詳しい事は分からないようです。300年前の享保年間における霧島噴火では新燃岳から8km先の村落までは火砕流の被害に遭った、という記録があり、こちらについても記事にある通り小松基地へいつまで訓練展開していればいいのか、という目途は立たないようです。もっとも、火山活動が軍事基地へ悪影響を及ぼす、というのは意外に多くあるのですよね。昨年のアイスランドにおけるエイヤフイヤットラヨークトル火山噴火ではNATOの空軍演習が大分影響を受けてしまいましたし、過去には、これも数年前の話でそこまで昔の話ではないのですが浅間山が噴火した際に何故か火山灰が横田基地の方に流れてしまい、入間基地や百里基地、羽田空港に成田空港、もちろん厚木基地まで影響が無いにもかかわらず横田基地だけ使用できなくなった、ということがありますし、同時期にアラスカの火山活動でエルメンドルフ空軍基地が使用不能になってしまった、二十年ほど前にはフィリピンのピナツボ火山噴火によりクラーク空軍基地が使用不能となり、これを契機に在比米軍が全面撤退へ展開、在日米軍などへ編入された、という事例もありました。

Img_8857_2  しかし、これは軍事空白を生むというリスクがある事も忘れてはならないでしょう。もちろん、火山灰が滞留している間は航空自衛隊が航空優勢を確保できないからと言って別の空軍が領空侵犯しようとしても前述の理由により墜落する危険があるため、いわば航空優勢を握っているのは諸国家に対して中立の“火山灰”による空中哨戒(?)なのですが、影響が拡大して豊後水道上での訓練等に影響が及ぶだけではなく、九州のもう一つの基地である築城基地や海兵隊の岩国基地へ支障が来たすようになれば、アジア全体の安定にも影響してしまう可能性があります。また、前述のピナツボ火山噴火により在比米軍のクラーク空軍基地が火山灰に覆われたため放棄されてしまい(火山と基地の距離は京都~新大阪程度)、空母二隻が展開可能であった海軍のスービック基地も放棄され、実質的に南シナ海に面した米海軍の拠点が無くなってしまった事で抑止力の均衡が崩れてしまいました。翌々年には中国軍がフィリピン領ミスチーフ環礁に上陸し不法占拠、現在は守備隊と陣地を構築し居座り続けているほか、地域でのシーパワーを米海軍は部分的に侵食される状況に陥っています。火山活動は地震被害と比べて広範囲に影響を及ぼすものですから、国際政治の観点からこうした火山活動を見る視点も必要、ということになるのでしょう。

Img_8564  もっとも、霧島の新燃岳については全体としては非常に大きな火山だったとのことですが、ピナツボ火山の火山爆発指数7のような大噴火に繋がる可能性は現時点では無いようですので、嘉手納基地や佐世保基地が、という訳ではないのですけれども、まあ、飛行隊の訓練移転、という程度の影響が出始めているようですね。こなりますと、100km近く離れている海上自衛隊の鹿屋航空基地は大丈夫なのか、と思ってしまいます。航空自衛隊は九州に新田原基地のほかに築城基地があるのですが、鹿屋航空基地は九州唯一の固定翼哨戒機部隊、周辺国の潜水艦が日本近海に侵入することを警戒する部隊です。那覇航空基地とともに南西諸島の警戒に当たっているため、ちょっと心配になってきます。航空自衛隊ですが、新田原から小松だけで15機、このほかに百里にも機体を移転させて訓練するとのことですから、もしかしたらば新田原のF-4が、同じF-4を運用している百里基地へ移転するのかもしれません。すると、かなりの機体が別の基地へ展開する、という事になるようです。新燃岳の噴火がかなり長期間にわたり続いてしまって、百里に移転したF-4が噴火活動が沈静化して新田原に戻る頃にはF-X船艇が完了してF-22に機種転換していた、なんてことは無いと思いますが、案外今年の小松基地航空祭は賑やかになってしまう、なんてことはあり得るかもしれません。火山活動は市民生活にも甚大な影響を与えてしまいますので、出来るだけ早く沈静化する事を願いたいですね。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (6)
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