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政府、アフガニスタンへの自衛隊派遣延期を発表 今夏以降に再度検討

2011-02-06 23:07:31 | 国際・政治

◆対米公約、自衛隊“アフガン出張”は延期

 アフガニスタン派遣中止になりました、現時点では延期ですが、法整備を行い当初提示された案、自衛官を海外出張扱いでアフガニスタンに派遣する、という案からは離れるのでしょう。新潟の災害派遣の話題もありますが、本日はこの話題。

Img_8310_1  自衛隊のアフガニスタン派遣は、対米公約でしたが、海外出張扱い、加えてアフガニスタンでの国際治安任務に当たるISAFの指揮下に入らないというかなり政府には身勝手な案でして、それならば出さない方が良かったのでは、というものではありました。海外派遣、しかも戦闘地域でありISAFの部隊から続々と犠牲者が出ている中で山間部の掃討戦が続き、国家の創成を行う中都市部ではテロが頻発するなか、海外派遣と言えば96式装輪装甲車2型を中心に展開するのだと信じていましたら出張とは、余りに無理な派遣計画でしたので、そもそも何故そんな公約を、という次元、強行すれば非常に危険でしたので、ひとまず一考の余地が生まれました。毎日新聞からの引用です。

Img_4705アフガン:自衛隊医官派遣を延期 制度不備、政府内に慎重論・・・ 政府がアフガニスタン復興に向けた人道支援策として検討している自衛隊医官らの派遣が、今夏以降にずれ込むことが、明らかになった。現地での安全性確保や、受け入れ体制の調整に時間を要している上、現行の防衛省設置法に基づく派遣について、慎重に議論を重ねるべきだとの声が強まったためだ。複数の政府関係者が明らかにした。 政府は、医官や看護官約10人が、首都カブールのアフガン国軍の医療関連施設で、指導を行うことを想定。昨年11月の日米首脳会談で、菅直人首相が、オバマ米大統領に前向きに検討する考えを伝えた。同国への自衛隊派遣は駐在武官を除けば初めてで、米国が重視するアフガン安定への「人的貢献」をアピールする狙いだった。

Img_7405  昨年12月には西元徹也防衛相補佐官を団長にした調査団が現地視察。今月中の派遣も視野に入れていた。 しかし、今回の派遣は、防衛省設置法4条に定められた「教育訓練」に基づいており、武器の携行も認められない。隊員に対する補償規定も明確でなく、同省・自衛隊内からも制度面の限界を指摘する声が出ている。最大野党の自民党も、特別措置法の制定が必要だと主張しており、「ねじれ国会の円滑な運営も考えれば、慎重に対応すべきだ」(防衛省幹部)との判断に傾いた。 実務面でも、自衛隊医官が実戦で負傷した兵士を治療した経験がないことを危惧する声があり、現地で活動する国際協力機構(JICA)などの民生支援を優先すべきだとの意見も強い。【坂口裕彦http://mainichi.jp/select/world/news/20110131ddm003030154000c.html

Img_4304  自衛隊のアフガニスタン派遣ですが、防衛省設置法にともづく海外出張扱いで自衛隊から医官を派遣する、というものでした。これは、昨年11月に横浜での日米首脳会談においてオバマ大統領に対して菅首相が対米公約として確約したものでしたが、元々は自衛隊をアフガニスタンに派遣する事でアフガニスタンへの復興に日本が尽力をしている事が大きなアピールとして映るだろう、という打算的なものでした。当時は普天間問題が再燃しつつある状況でオバマ大統領に対して具体的な進展を伝えるところを何もできていないという事でアフガニスタンへの自衛隊派遣、自衛官のアフガニスタン出張が提示されたものでした。冒頭に記したとおり、出張扱いで派遣部隊はISAFの指揮下に入らず、加えて非武装、というものでしたので、これは自衛艦を人身御供に出すようなものです。強行すれば現場の自衛官もISAFもアメリカにも迷惑が及ぶ事でしょう。

Img_2052  政府部内ではJICA等の民生支援を重視するべき、との声があるようですが、現状ではNATOの派遣国がなんとか自国の派遣部隊を撤収させたいというほど危険な状況でして、例えばイギリスはAH-64D戦闘ヘリコプターからトーネード攻撃機まで派遣して部隊を支えているほどで、イギリス国防費にアフガニスタン派遣部隊用の装甲車や航空機、個人装備の費用が大きくのしかかっており、カナダは全廃予定だった戦車を新調、オランダはドイツ製長距離自走砲を、フランスも国産自走榴弾砲を展開させています。自衛隊の衛生部隊も戦車の後ろ盾が無ければ危険な状況でして、ここに民生支援を行う、という事は果たして可能なのでしょうか、イラクで外務省職員の方がやったようにSASやSEAL上がりの方が多数在籍する民間軍事会社の方にエスコートを依頼でもしなければ犠牲者は避けられないでしょう。夏以降に再度判断するようですが、中止を含め現実的に可能であり加えてアフガニスタン復興を目指すアメリカの政策に沿ったものとなる事を期待したいです。なお、下手に派遣すればイギリスの二の舞、防衛費は隊員の安全のための装甲車やヘリコプター、個人装備充実へかなりの増額を強いられることになるのは間違いありません。物事の決定は慎重にお願いしたいですね。

HARUNA

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コメント (2)
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