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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

陸上自衛隊アフガニスタン人道支援任務派遣問題を考える① アフガン情勢

2009-09-17 22:05:50 | 国際・政治

◆全土が戦場、高山地帯

 毎日新聞などによれば、アメリカ政府は海上自衛隊のインド洋給油支援について、アフガニスタンでの人道支援が行われるのであれば、給油支援中断は理解できるとの姿勢を示した。

Img_6251  民主党はかねてより、アフガニスタンへの自衛隊派遣、もしくは民間組織の人道支援任務での派遣を検討しているが、全土が戦闘地域、NATO軍の車両デポが攻撃され兵站車両百両以上が破壊されたり、今月だけで米軍戦死者22名、民間軍事会社でもなければとても民間団体を派遣できる状況ではない。今回は、アフガニスタン派遣について、少し考えてみたい。

Img_1726  陸上自衛隊は、イラク復興人道支援任務に600名の一個大隊規模の混成部隊を編成、一個普通科中隊にあたる規模の部隊を警護として置き、後方支援部隊や戦闘支援部隊からなる復興人道支援部隊という編成となった。イラクでは規模として一定の勢力を担う事が出来たが、それでは、相応のポテンシャルを発揮できる規模の部隊規模とは、アフガニスタンではどうか。

Img_9013  アフガニスタンにおける国際治安支援部隊(ISAF)の規模は、2009年前半の時点で、米軍約2000、イギリス軍8300、ドイツ軍3600、フランス軍2800、カナダ軍2750、イタリア軍2350、オランダ軍1770、ポーランド軍1100、オーストラリア軍1000、トルコ軍900、スペイン軍800、ルーマニア軍750、デンマーク軍700などなどが派遣されている。概ね、800~1000名程度の派遣が求められるというところだろうか。

Img_3732  自衛隊は派遣されるとなれば、基本的に復興人道支援任務が主体となろうが、しかし、治安状況は悪化している。今年7月にはイラン国境に程近いヘルマンド州への武装勢力タリバン掃討の為にイラクより海兵隊第二海兵遠征旅団4000が派遣されている。オバマ政権はイラクからアフガニスタンへのシフトを進めており、大量の米軍を投入することで一気に治安回復を図る態勢だ。恐らく、普通科中隊を軸に万全の警護態勢などが求められるのではないだろうか。

Img_25331  加えて先月のアフガニスタン大統領選では、アフガニスタン内戦の当事者である北部同盟のドスタム将軍が支持したカルザイ大統領が再選を果たすなど、選挙結果に軍閥の意向が反映される状況もあり、軍閥と政権の不透明な関係を指摘する声もあるようだ。ISAFの任務の一つに軍閥解体があり、難しい現実がある。また不透明な政権と軍閥の関係の結果、軍閥への不支持の表明として、タリバンの支持する声が出ていることもあり、治安状況は好転化には向かい難い実情がある。

Img_9955  ISAFが担当する管区は、北部マザリシャリフを中心とする管区、首都カブールを担当する管区、西部ヘラートを中心とする管区、南部カンダハルを中心とする管区、カブール周辺の管区の五管区。武装勢力は、パキスタン国境付近での活動を活発化させている一方で、都市と都市を結ぶ山間部地域での遊撃戦も盛んに行われている。

Img_8685  A-10攻撃機の有用性が見直されたり、F-15Eが派遣されたり、オランダ軍がPHz-2000自走榴弾砲、カナダ軍がドイツからレオパルド2を緊急調達したりするなど、各国は重装備で臨んでいるが、2007年のISAF司令官、英軍のデイヴィッドリチャーズ大将(当時)は、アフガニスタン全土が戦闘地域であるという意見を表明している。

Img_7986  アフガニスタンの国土は、全土が山岳地帯と言って過言ではなく、イラン国境に1000㍍前後の平野が広がっているほかは、ヒンズークシ山脈が標高7485㍍ノシャック山を筆頭に、4000㍍の峰々がパキスタンの最高峰、標高7690㍍のティリチミール山まで広がっている。従って、移動できる道路が限られていることから待ち伏せに遭いやすく、街道で待ち伏せられないようヘリコプターで移動するにも山脈を飛び越えるには相当エンジン出力の大きなヘリコプターが必要となる。

HARUNA

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コメント (4)
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