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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

鳩山首相 来月十五日に来年度予算概算要求提出を省庁に求める

2009-09-28 22:42:19 | 国際・政治

◆予算制度変革は可能か

 本日、鳩山首相を中心に予算編成を見直すための検討委員会の初会合が行われ、管副総理は、1円でも節約するという決意を表明、複数年度に渡る予算や翌年度繰越も念頭に定めるとのことを表明した。

Img_7155   基本政策閣僚委員会、前の政権の各省庁による概算要求はゼロベースとすることとし、閣僚委員会は明日閣議決定し、来月15日に改めて各省庁の概算要求を集めること、基本政策閣僚委員会を定期的に開くことを申し合わせた。結果、これは当初から言われていたことではあるが、平成22年度防衛予算概算要求もゼロベースで再構築されることとなる。

Img_7328_1 概算要求については、既に提出されているものがある一方で各省庁にゼロベースでの再構築を求め、加えて来月十五日までに求めるというのは、ゼロベースから再構築するとしても検討するための時間が短く、しかも概算要求を要求しつつも複数年度に渡る予算を求めるということは、些か無理があるようにも思えるのだが、朝令暮改となってしまえば、例えば装備品調達を途中で打ち切った場合、数百億円の違約金が生じることもあるので、注意は必要だ。

Img_9487  さて、防衛予算は削られるのか、非常に微妙な問題ではあるのだが、一方で、予算の繰越や多年度に渡る予算要求が可能となる点は、好意的にとらえるべきである。例えば選定に時間を要している航空自衛隊F-X次期戦闘機選定でも、調達費用を翌年に繰り越して積立式とすれば、選定が遅れたとしても決定した際に、多くの予算を集中し、ライセンス生産関連設備の整備費用などに投じることが出来る。

Img_8004   もうひとつ利点としては、自衛隊が演習などで燃料や弾薬を消費するとともに、年度末になった場合、弾薬や燃料の余剰が生じることが少なくないが、翌年に備蓄燃料や弾薬を繰り越すことが出来れば、研究射などではなく、演習場での演習にてより有効に残弾や燃料を使用することが可能となる。

Img_9299 概算要求とは話はやや外れるが、自衛隊車両が高速道路を利用する際には現在、高速道路料金を支払っている為、現在の政権が進める高速道路無料化が仮にもし実現することがあったとしたならば、演習に際して今まで以上に高速道路を縦横無尽に利用し、戦略展開能力を高めることが出来るかもしれない。

Img_8094  他方で、既に出された22年度防衛予算概算要求では、90式戦車の後継となる新戦車の調達開始を筆頭として、今後の自衛隊装備体系30年に大きな影響を及ぼす装備品の調達初年度となる時期と重なっており、ここでの予算要求に小さな変更を加えたとしても、将来には大きな影響と負担となって跳ね返る可能性が高い。

Img_90081  海上自衛隊も、22DDHとして19500㌧型ヘリコプター搭載護衛艦が要求されており、個艦戦闘能力を大幅に下方修正することに代えて船体を大型化したため、ひゅうが型護衛艦と比べてもほぼ同じ建造費にて整備することが出来る要求であるが、こちらが22DDHとして実現するのか否か、興味がもたれる。

Img_0190  もうひとつ、関心が湧くのは、新政権の防衛に関する意識、これは理解度や防衛政策の外交政策との共振も含めてなのだが、未知数だということだ。従来型の専守防衛部隊貼り付けか、機動力を重視するのか、国際平和維持活動への関与に関する是非、弾道ミサイルに対する対処は策源地攻撃かミサイル防衛か等など。

Img_6297  特に、野党から与党へ、選挙により進んだという事により、これまで与党が得ていたような防衛に関する情報を全て共有している訳ではないこともあり、例えば、これは最も端的に出ている点だが、弾道ミサイル防衛における迎撃成功率の情報一つをとっても、必ずしも正しくない情報を正しいと考えている事例もあるようだ。

Img_8629  装備品に関しては前述したように、調達途上のものを中止してしまうと莫大な違約金が発生し、途中で装備開発を打ち切り技術基盤が失われた後で必要性を認識しても再整備にはより大きな負担が必要となり、結果、税金は節約したことにより多く消費する、という事にもなりかねない問題がある。

Img_3978  自衛隊装備は、装備年鑑を開いても、その装備の種類の豊富さには驚かされるものの、実際に駐屯地や基地、航空基地などに足を運べば装備年鑑に並んでいない装備品も非常に多く、驚かされる。防衛関係以外での調達品目はより多く、一つ一つの必要性を、政治が全て把握するのは、難しいのではないのか、と思う次第。

Img_6605  更に、政治主導を掲げつつも、結局は官庁に概算要求の提出を求めるのであり、どのように政治主導とするのか、スローガンに終わるのではないのかという危惧もある。なんとなれ、国が育てた巨大な官僚機構が構築する概算要求を、遥かに小さな政府主導により、代替できるのか、政治任用制度の改革や、スタッフを養成する数千人規模の政府シンクタンク、などの創設を試みた方が現実的なのではないか、と思う次第。

HARUNA

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コメント (6)
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