北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(21)戦車前進!戦闘訓練展示は機甲師団の前進へ(2011-10-09)

2022-11-20 20:00:02 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■戦車連隊!これがその底力
 戦車部隊の躍動感ある写真とともに雑感所感など。

 10式戦車も90式戦車も、実のところ第四世代戦車の概要がどのように展開するのかが未知数であるなかの設計ではあったのですが、世界をみますと第四世代戦車については革新的な転換点となる戦車がでない中で第三世代戦車の改良が進んでいまして、特に防御面で。

 対戦車ミサイルへの備え。近年特に考えさせられるのはアクティヴ防御装置の搭載です。アクティヴ防御装置は対戦車ミサイルを検知し擲弾などを投射して迎撃するというソ連が末期に開発した防御装置、ここからはじまります、もっとも今年勃発した戦争で評価は。

 ロシア軍ウクライナ侵攻では緒戦数日間でアクティヴ防護装置を搭載したT-90戦車がウクライナ軍に供与されたジャベリン対戦車ミサイルに破壊され戦車ごとくろこげになっている写真が報道され、電源が入っていなかったのか迎撃できなかったか、議論となりました。

 カールグスタフでも効果が在った。上記の通りですがただ、今度はT-90がスウェーデン製カールグスタフ携帯無反動砲に撃破された車体が報道され、これで自衛隊も大量に装備しているカールグスタフが、効果が有ると認識すると共に、防御装置の限界を突き付けた。

 西側の第三世代戦車はともかくとして北海道に侵攻してくるだろう戦車に対しては有効だ、と認識できたのは僥倖ではあったのですが。このアクティヴ防護装置、イスラエルのラファエル社が開発し、ドイツのラインメタル社も追随、特別な装備とは言えないのですね。

 BAEシステムズ社はヴィッカース社時代に実用化を研究していましたが断念されつつ、技術的要素は残っていますし、日本は防衛装備庁が技術研究本部の時代から実施していました、この西側のアクティヴ防護装置が、実用化されつつあるのですね、性能も実用的に。

 アメリカがM-1エイブラムス戦車シリーズに搭載を開始します。レオパルド2戦車もドイツの改良型であるレオパルド2A7から本格的に搭載されますし、装甲戦闘車への搭載も、考えてみれば破壊されれば人的損害が戦車よりも遙かに大きく当然といえば当然だ。

 戦車は勿論装甲車にも、こうした動きがあります。アメリカ軍は別としまして、背景に考えられるのは欧州NATO諸国が冷戦終結後、徹底的といえるほどに戦車を削減し、ドイツ連邦軍などは東西統一時に4800両あった戦車を225両まで、削減されているのです。

 欧州ではフランス陸軍も戦車が200両、これだけしか戦車がないのに両国とも機甲師団を二つも維持しているのは不思議ですが、そして1000両以上戦車があったオランダは現在15両、まあ凄いものでして、自衛隊や韓国陸軍、トルコ陸軍や台湾陸軍などは例外的か。

 戦車の近代化改修が凄い背景には、戦車が削減されているために戦車の予算を限られた数の戦車に集中投入できるようになったのですね。もっとも、このために次世代戦車の開発が、戦車がこれだけしかなにも関わらず開発できないと新型戦車に乗り換えられない事に。

 EMBT,既存の戦車を改修するとともにEMBT欧州戦車のように、過去幾度も頓挫し中止されつづけてきました国際共同開発を選択せざるをえないような状況があるのですが。アクティヴ防護装置、ソ連制のものを維持していたロシアは燦々たる状態となっています。

 ロシア軍はいまやアクティヴ防御装置など装着もしていないT-62戦車を現役に復帰させていますが、アメリカが評価試験をおこなったトロフィーは、十分実用的であるとして装備が進められています、特に対戦車ミサイルは第三世代戦車の発想、原点にあるのですがね。

 戦車が生き残るためには第三世代戦車はその拡張性を以て近代化改修を重ねなければ、M-4シャーマンがアイシャーマンとなって第二世代戦車のT-62戦車を撃破する様な状況は考えられるのです。そしてこれは日本の第三世代戦車の改修の必要性を意味しています。

 ミサイル万能時代に対抗して重装甲だが軽量となった複合装甲という技術により命中しても貫徹させず受けとめることが可能となった、こうした構図があった。複合装甲、しかし対戦車ミサイルは重量の制約が実質ありませんしミサイルの威力を強化するのも容易い。

 ミサイルは戦車砲のように口径の制約を受けませんし、ブースターの出力を強化することで弾頭を強力なものと出来、要するに圧延均一鋼板1000mmの貫徹などは基本となっていますし、ミサイルが大型化しますと当然のように射程も5km10km15km延伸してゆきます。

 トップアタック式軌道という戦車の装甲が正面装甲よりも遙かに薄い部分をねらう弾頭が、1996年にアメリカのジャベリン、自衛隊でも2001年に01式軽対戦車誘導弾が、もとをたどればスウェーデンのビル対戦車ミサイルが1986年には実験に成功していたものがある。

 これはもう装甲を強化するよりは迎撃する、という時代に転換をしいられているのですね。自衛隊の戦車については、アクティヴ防護装置の追加搭載、死活的に重要と考えるのですが。防衛装備庁のアクティヴ防護装置は、擲弾ではなく別のこう安全なものを投射します。

 防衛装備庁のものは、擲弾ではなくエアバッグを投射してミサイルの弾道を阻害するという、少々難しい方式を考えているもようで。普通科部隊の装甲化が不十分であるために従来の擲弾を投射するアクティヴ防護装置を採用した場合は擲弾の炸裂による影響が。

 普通科隊員がこちらで死傷する懸念があったのですね、故に難しいというか少々頓珍漢といえるような迎撃手段を考えているという、なぜ装甲車に乗せないのか。普通科と戦車の協同といいますが、機動力で戦車は陸上装備の中でも最高度の性能を有しているのです。

 1500hpのエンジンにものをいわせて90式戦車は70km/hで前進しますので普通科部隊に随伴能力を求めるには高機動車の機動力では道路上でなければ随伴できません、いや高機動車という区分も実質は路上高機動車ですので不整地では高機動の車では、ありません。

 予算不足が背景にあることは認識しているのですが、装甲車の不足はこうした部分に影響している。装甲車も73式装甲車であれば最高時速は戦車よりも遙かに、なにしろ現在では低速である74式戦車に随伴を求められた設計、第三世代戦車に随伴することはできません。

 戦車の機動力、そして現在最新鋭の装甲戦闘車は、いまだに最新鋭という89式装甲戦闘車ですが、こちらのエンジン出力は600hp、当時ではこれでよかったのかもしれませんが、現代の視点から考えれば、まあ設計が30年以上前なので当然なのでしょうが時代遅れで。

 1000hpクラスのエンジンにより不整地を遮二無二突破する能力が必要ではないか、こう考えるのですね、もちろん懸架装置技術の技術革新により600hpで1200hpの10式戦車を凌駕するほどではなくとも伍する機動力を発揮できればそれはそれで素晴らしいのですが。

 結果的に普通科部隊の装甲化の遅れが戦車の機械化部隊としての能力を抑えて仕舞う現実はあるように感じる。下車戦闘、アクティヴ防護装置を運用するばあいの懸念点となる視点ですが、装甲戦闘車も幾度か指摘しましたが、装甲戦闘車は最後の瞬間まで下車しない。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(20)実射で始まる障害処理-戦闘工兵は陸自の弱点(2011-10-09)

2022-10-30 20:21:20 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■戦闘工兵は陸自の弱点
 第7師団祭の展示は迫力と共に色々と考えさせられるものがあるのです。

 92式地雷原処理車、東千歳駐屯地祭では、撃ちます。ええっ撃つのかあ、と驚かれる方が多いのは実は私も初めて見た際には驚かされたのですが、ごうっというロケットの点火と共に発射してゆきます。もちろん実爆展示までは行わないのですが、凄い迫力といえる。

 東千歳と当日に大久保駐屯地祭がありますが、施設科部隊の駐屯地であっても流石に92式は発射できませんので、精一杯の工夫が展示される、しかしこちらでは撃てる、駐屯地祭のプログラムを見ますと、だいたい同時刻にこの障害処理展示を行っているのは面白い。

 静内駐屯地祭では87式自走高射機関砲が実弾射撃を展示しますし、第7師団の管区内というのはこうした展示で北海道の広さを実感します。一方でこの施設科部隊の展示ですが、陸上自衛隊の問題を誇示しているようで、早々にどうにかしなければならないとおもう。

 戦闘工兵は陸上自衛隊の弱点で、90式戦車や現在では10式戦車、物す凄い機動力を発揮します。他方で自衛隊の戦闘工兵装備は73式牽引車の派生型を中心としたものであり、要するに機動力がまったく第二世代戦車の水準を出ていないのです、これではおいつけない。

 施設科部隊は先鋒ではありませんが、戦車部隊のすぐ後ろに展開し、障害処理に際しては即座に戦車の前に出なければなりません、地雷原処理、障害除去、架橋、攻撃に際して相手が地雷をばら撒いたり、撤退時に橋を爆破したり、ビルを倒壊させ障害構築した場合に。

 戦車部隊が前進する場合に24時間でどの程度前進するか、機動力を考えれば200kmは前進し得る、するとその最中に幾つの橋梁を渡河し、相手の工兵能力からどの程度の地雷原を処理しなければならないか、手間取れば24時間で10kmも前進できないこととなる。

 90式戦車に充分随伴できる戦闘工兵装備が必要で、地雷原処理能力を持つ排土板付の車両と、架橋装置及びクレーンなどのアタッチメントを持つ装甲施設車輛が、現在装備として無い状況は、せっかくの戦車の能力を十全に活かせないような状況をしめしています。

 北海道の広さ、特に突破ではなく迂回機動などをとるならば、この北海道の広さはNATO防衛正面のスヴァルキギャップや冷戦時代の西ドイツに在ったフルダギャップで想定されたような戦闘は有り得る。日本は狭いので機械化部隊は、という人は地図をみていない。

 南西防衛と云いますが、沖縄本島でも全長は100kmもあり、現在スウェーデン軍がロシア脅威を受け戦車を中心とした機械化部隊を展開させているゴトランド島の全長よりも若干長いのです。財務当局などは機械化部隊に良い顔をしないでしょうが、限度があると思う。

 障害処理を支援するべく戦車部隊が射撃位置に進出しており、上空からはAH-1S対戦車ヘリコプターが警戒にあたっています。そして、日本ばかり見ていますと気付かない事なのでしょうが、AH-1S対戦車ヘリコプターの旧式化はかなり深刻でして、更新が必要です。

 自衛隊装備の多くは旧式化と老朽化、そしてミサイル防衛という1990年代に突如突き付けられた任務を受け整備費用が嵩んでいる為に気付きにくいのですが、機械化部隊の限界を下回っている状況、ヘリコプターの減勢が任務に対応する限度を下回りつつある状況が。

 2011年の行事写真ではあるのですが、ヘリコプターは防衛費の不足から耐用年数一杯で後継機なしのまま退役、73式装甲車は来年制式化50年を迎えエンジン改修など行われないままです。次の戦争も震災も来ないとよいのですが、祈るだけと対策しないでは違うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(19)火力戦闘の展開と対空戦,前衛部隊との接敵(2011-10-09)

2022-10-16 20:21:36 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■吠える99式自走榴弾砲
 訓練展示は特科部隊の火力戦闘とともに敵前衛部隊と偵察部隊の接敵という本格的な戦闘の様相を見せてきました。

 東千歳駐屯地記念行事訓練展示、この模擬戦は富士総合火力演習さえ上回ると評される程に凄い。戦車、別に甲子園で野球をやるわけではないのですから戦車に対抗するには戦車、この必要性はないのですが、先日アメリカで行われた陸軍シンポジウムにてひとつ。

 戦車の脆弱性はないわけではない、と前置きした上で、しかしトラックのほうが遙かに脆弱であるし乗っている兵士たちは更に脆弱である、こうした認識が示されているのですね。ウクライナ戦争、世界はその戦訓に注目し続けているのですが、重要な戦訓があります。

 脆弱であるのは無人機攻撃とともに砲兵の攪乱射撃に対してのソフトスキン車、ウクライナ軍は装甲車両が緒戦で払底した後に市販車両などを使わざるをえない状況に陥り、欧米や豪州からの供与装甲車が一定の数に達するまで市販車で移動を強いられていました。

 結果としてロシア軍の砲撃に甚大な損耗を強いられたという現実がありました。市販車ならば目立たないので砲撃の的にならないというのは平時の感覚であり、ロシア軍は路上の車両に対し、ウクライナが避難勧告を出していた地域を含め砲撃を加えています、そこで。

 152mm砲弾は自衛隊も含めた西側の155mm砲弾と同程度の威力といいますので、一発で長径45mの楕円形に渡り有効弾片が散布されます、すると一個大隊の砲兵が数十秒道路に向かい射撃を加えることで1km程度の道路は車両が致命的な損耗を強いられるということ。

 砲兵にとり装甲の無いソフトスキン者は位置が暴露した時点で狩場になります、が、装甲車両ならば特にNATO防弾規格のレベル2程度であれば、砲弾片からは有効に防護されます、戦車は更に頑丈だ。そのうえで、戦車の脆弱性があったとしても、別の話となる。

 戦車や装甲戦闘車を抜きに地上戦闘を進める歩兵部隊だけの戦闘の方が脆弱ですし、無人機やミサイルの有用性がどれだけ高まろうとも歩兵掃討を無人機が行うには、映画のような戦場にて一人一人を追いかけ回す歩兵型無人機というものはまだ実用化されていません。

 ターミネーターのようなガイノイドが安価に量産できるようになるならば、T-800型くらいの能力を持ち、そして動力がT-800のような核動力以外の安全な技術が完成するならば、また別なのかもしれません、ただ現時点ではガンダムさえ実用の目処がないという時代だ。

 いや無人機は数百ドルで小型のものが購入でき戦場で使用できるといいますが、結局のところ無人機の中でも安価なものについては安価な手段で無力化されます。無人機を数百m以内の射程で小銃により数発の射撃で高い確率にて撃墜できるスマートスコープがある。

 スマートスコープというものは数百ドルで開発されてますので、小銃本体よりも割安で調達できるというもので、所謂小型無人機については対処目処が、少なくとも問題に真剣に取り組む軍事機構には道筋が構築されています。問題には対策、この視点が重要でしょう。

 AP弾よりもMP弾の開発が大きく前進している、昨今防衛情報を集めていますと戦車用新型弾薬として第三世代戦車を撃破可能というMP弾の開発が進んでいることに気づかされます、APFSDS弾は強力なのですが実弾射撃演習をみますと威力というものは実感し難い。

 800mm相当の望遠レンズ越しでさえAPFSDS弾は標的に命中した瞬間はわかりにくいものでした、もちろん標的は貫通していることは2400mm相当の望遠ズームにより確認できるので意味はあることなのですが。戦車以外、陣地攻撃に使うものではないと改めて。

 MP弾即ち多目的榴弾、しかし、HEAT-MP弾を用いた場合は派手に爆発しますので命中していることがよくわかるのです、他方でセラミックとチタン合金を多用した複合装甲に対してMP弾は一般に貫徹が難しい、こう理解されていたのです。この状況が、かわります。

 圧延均一鋼板換算で900mm以上を貫徹するMP弾が120mm滑腔砲用に開発され続けていまして、戦車に打ち勝ち同時にMP弾は陣地攻撃や装甲車の掃討、そして補給処や野戦整備施設などを破壊する際にもなにしろ榴弾、汎用性がたかく応用できる装備なのですね。

 このあたり、戦車の対戦車装備という狭い領域ではなく戦域優位に資するための機動装備、という認識の変容が生まれているように思える。一方で、無人機からの攻撃は一定の防護手段が確率、ロシアが開発したものはウクライナではあまり役立っていないようですが。

 無人機が用いる攻撃手段はミサイルか徘徊式弾薬の場合は自爆攻撃ですか、多様されるいっぽうで迎撃技術は構築されてきています。C-RAM防護システムのように空港など局地を守る対無人機対ロケット弾迎撃システムであれば、実際に効果を上げているものがある。

 アメリカがアフガニスタンのカブール国際空港防衛に運用し成果を上げていますし、イスラエルのアイアンドームミサイル防空システムが数十発の同時攻撃から人口密集地域を守っているのは報道にある通りです、こうしたシステムはラファエル社が戦車用を開発した。

 トロフィーシステムを筆頭に戦車へ搭載可能というものが開発されメルカヴァ戦車の改良やここ最近はレオパルド2A7戦車にM-1A2戦車などに搭載試験が終了しているのです。戦車砲弾、対照的に思えるのは戦車砲弾を迎撃できる技術は今のところありません、ない。

 120mm滑腔砲はマッハ5で数kmの距離から飛翔してきますし、迎撃しても最低でも1km程度離れた距離で迎撃しなければ運動エネルギーを相殺できず致命的な破片が飛来します、戦車砲弾は改良が進みマッハ6の大台がみえています、対応する時間が短すぎるのですね。

 AI人工知能などが発達し発砲炎を即座に検知し0.5秒で迎撃できる技術を開発したとしても、マッハ6では2km程度の距離ならば2秒以下で着弾しますので迎撃は間に合いません、戦車を撃退できる装備は数多あっても戦車の様に乗員を防護できる既存の装備は限られる。

 戦車のように居座ることのできる持続性を保つ装備という性能の両立を求められる場合、戦車で良いじゃないか、となるわけです。戦争が相手の戦車を撃破した数で決まるというような、ガールズ&パンツァーのような国際ルールでも確立しないかぎり、決定打でない。

 戦車に対抗するのは戦域優位を確保するための一手段であるという、つまり戦車を撃破することが戦争ではなく戦争の一部に戦車の脅威を排除するという前提に依拠するならば、ほかの装備が思いつかないのですね。勿論、昨今120mm砲搭載の50t級装甲車などはある。

 いや、核兵器による先制攻撃というような例外はあるのかもしれませんが、それとて戦争は政治の延長という原則、そして軍事の目的は抑止力という大前提を考えれば、ならば現時点で使わない以上核兵器だけの軍事と安全保障は成り立たない、という論理帰結に至る。

 憲法に明示された人権と民主主義を守るために防衛はあり、戦車を撃退する事が戦争の目標ではなく隙間ない防衛力を抑止力とし戦争を回避、その時に際しては戦車を撃破するよりも戦域優位で侵略者を撃退する、こうした視点から、防衛をみる必要があるのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(18)訓練展示偵察隊と敵戦車部隊の遭遇戦(2011-10-09)

2022-10-02 20:11:56 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
みよ!この威力!戦車前進
 この空気この轟音この振動、というような写真の情景はやはり実際に見上げてみなければわからないものがあるのですが一言で説明するならば、凄い迫力、となる。

 第7師団の訓練展示は凄いぞ、この一言に尽きるのですが今回は戦車部隊の訓練等を写真として回顧しつつ戦車の話題を。それにしても繰り返しますが第7師団の訓練展示は凄い、富士総合火力演習の様に実弾は使わないが、演習には出てこない仮設敵が、そこには。

 戦車は現在においても有用か、という問いはあるのでしょう、なにしろ陸上装備体系でもっとも予算を要するのはミサイル部隊か機甲部隊ですから。しかし、10名という一つの単位で考えますと、戦車ならば3両を運用できますので、人数を限定するならば、強靭だ。

 映画のスタローンやシュワルツネガーの世界観ランボーやコマンドー、デルタフォース、チャックノリスのほう、こうしたワンマンアーミー的な10名を集めない限り、10名という人員数を限れば戦車部隊はもっとも人員に対して戦力を最大限発揮できる職種と思う。

 戦車は進化します、長年戦車といえば120mm戦車砲、ロシア戦車が125mm戦車砲、というもので、これ以上の後継を搭載することは不可能ではないが、第二次大戦中には152mm砲搭載事例もある、しかし重戦車や駆逐戦車は重すぎ、中戦車、主力戦車へ収斂しました。

 ガンランチャーならば152mm砲をアメリカがM-60A2戦車とM-511空挺戦車で実現はしている、しかし戦車の機動力や防御力を肥大化によりそいでしまうことは否めず、結局は120mmと125mmが一種の最適解とされていました、これが、近年転換期を迎えつつある。

 フランスのネクスター社がテレスコープ弾薬方式、もともと大口径機関砲用の小型化技術、これを応用して140mm戦車砲の可能性を示し、ラインメタル社は55口径120mm戦車砲とほぼ同程度の大きさの140mm戦車砲試作を再開し、次世代戦車の主砲は大口径化しうる。

 我が国でも防衛装備庁は技術研究本部時代から研究、日本製鋼所とダイキンも135mm戦車砲技術を開発している。無理に搭載して初速が低下した場合は徹甲弾の貫徹力が下がってしまい、120mm戦車砲の新型弾薬を開発したほうが理にかなっているとはいえるのですが。

 この部分を両立しメガジュール比で120mm戦車砲の徹甲弾を越える貫徹力を、現実的に可能な戦車に搭載する研究は進んでいます。もっとも、130mm戦車砲の議論は冷戦時代に在りました、この頃には野砲も155mm砲から将来は175mm砲時代が来ると云われましたが。

 オールドメインドクトリン、戦車砲の新しい可能性を示すものはアメリカ陸軍が進める次世代通信技術開発です、これはリアルタイムの通信と情報共有を今までのリアルタイムの水準を超えて、戦分の一秒単位での情報共有を目指すもので、これが戦車砲を、変え得る。

 レールガン開発中止、アメリカ軍を取り巻く2021年の一つの話題に長年開発を進めてきたレールガン開発中止というものがありました、電磁コイルにより加速し理論上は光速まで加速した砲弾を投射できる、1980年代より日本を含め各国が開発した次世代可能技術だ。

 オールドメインドクトリンは、極超音速兵器などの脅威が増大する中で、これを確実に迎撃する技術は光速に迫るレールガンしかない、という視点で進められていたものについて、データリンクと脅威評価をAIにより全体で共有し瞬時に行うならば、別の方法を示します。

 レールガンの初速は素早いものですが、目標飛翔情報と脅威評価を千分の一秒単位で共有できるならば、通常の火砲から投射できる誘導砲弾でも、待ち受ける構図で、キネティック弾頭が弾道ミサイルを待ち受けて破壊するように、撃墜できる可能性をしめした構図で。

 戦車砲の将来技術は、こうしたオールドメインドクトリンが普及するならば、戦車砲での見通し線外射撃の可能性を充分に開拓するものとなります。もちろん、その運用は野砲、52口径火砲やアメリカが開発を進める58口径火砲でも対応できるのですが、其処は戦車の。

 戦車は機動力と防御力の面で52口径155mm榴弾砲を搭載する自走榴弾砲よりも優位にあります、そして如何に長射程を実現したとしても近接戦闘部隊の宿命として全て見通し線外戦闘だけで片付けられると考える程、戦史は甘くなく、歴史上例外なく痛い目に合う。

 大口径戦車砲はこの部分の欠缺を補う装備といえるもので、考え方を変えるならば将来戦車は大口径戦車砲をデータリンクにより運用する事で、既に10式戦車は僚車により目標情報共有し、見通し線外の戦車射撃を僚車との協同により事実上可能だが、一歩進め得る。

 戦車さえあれば戦争にこれだけで勝てる、敵艦船を洋上で撃破しステルス戦闘機も撃墜できるし身長が伸びて彼女も出来る、そこまでの万能を誇るものではありませんが、なにしろ現在120mm戦車砲APFSDS弾も飛翔距離だけならば物凄いものがあり、無視できない。

 日本の防衛を考えるならば、特に少子高齢化の時代に在って人命は尊い中でも尊く、また個人の能力を最大限発揮するには、戦車に3名を乗せて高い戦闘能力を発揮させる事が、限りある人材を最大限活用する方策の一つだと考えます。そう、戦車の火力は、万能です。

 戦車は、使うぞ、実任務で。こうした印象を昨今受けるところです。なによりもウクライナでのウクライナ機甲部隊の奮戦とロシア軍の緒戦における侵攻は、結局のところ戦争の形態が全面戦争という従来型の戦争を想定するならば、基本形が重要となるのでは、と。

 基本とは。人間が歩くときに足を使うように、また栄養分を接種する際に経口摂取するように、変わらない基本があるということを認識させられました。だからといって這うことを否定するわけではないですし点滴などの投与を否定しないと同様にこの論理が成立つ。

 戦車が必要だからといって無人機や対戦車火器が不要であることと同義ではない、という論理が成立つことの確認です。なるほど無人航空機はウクライナ戦争においてもウクライナ軍が活用し、対戦車ミサイルもジャベリンの威力はめざましいものがありました、が。

 新装備は様々なものが出てくる一方で、注意しなければならない前提としてこれらは戦車の攻撃を防ぐという、いわば相手の機甲戦力をそぐというものであり、ジャベリンと無人機同士が戦うことではなく、ともに一方に戦車という脅威が存在していたため、という。

 そして機動力と打撃力を併せ持つという意味で戦車を視る必要が。戦車を中心とした機械化部隊は自己完結性があり、結局のところ無人機と対戦車ミサイルを駆使したウクライナ軍が反撃に転じたのは戦車を中心とした機甲部隊でした。複合的に見るべきということ。

 この際にウクライナ軍は相当消耗していた自国のT-72戦車やT-64戦車をポーランドから供給されたNATO規格の照準機を搭載したT-72戦車で置き換えたため、かなり性能は向上しています、そのポーランドはM-1A2戦車やK-2戦車を増強する方針を進めてはいるが。

 火器管制装置の改良、いうなればわたしの古い方のカメラ、三世代前のEOS-50DなどにCANON純正の白レンズを装着したようなかたちでしょうか、威力を発揮できたという構図です。戦車の重要な部分に打たれ強さがありまして、装備品として、この点も重要です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(17)訓練展示状況開始!偵察隊とヘリコプター展開(2011-10-09)

2022-09-18 20:12:33 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■偵察隊!前進せよ!
 観閲行進が完了し音楽演奏を待つことなく師団祭はそのまま訓練展示へと展開しススキ野の奥に次々と機械化部隊が準備へ展開します。

 第7師団祭は訓練展示へと進みました、何しろここ東千歳駐屯地は広い駐屯地ですので訓練展示の会場も富士総合火力演習かと、云えば言い過ぎなのですけれども広大だ。これ程広い場所といえば木更津駐屯地に霞目駐屯地や旭川駐屯地くらいしか思い浮かびません。

 OH-1観測ヘリコプターが状況開始とともに展開、250機という量産計画を31機で打ち切ってしまった為に機体の改修予算を捻出しにくくなり、データリンクでAH-64Dとの連携が組めなくなっています。しかし危ない、良く観たら87式自走高射機関砲が、目だたない。

 自衛隊の装備調達を考えますと、これは非常に払拭を検討しなければならない悪弊と考えられるもので、量産計画を中長期的に示し計画を中断するならばエアバスやボーイングに対して各国が行うように機体価格の四割から半額程度は違約金として支払うべきと思う。

 OH-6D観測ヘリコプターの進出、航空偵察で敵情を探る。こちらも2020年に後継機が決まらないうちに用途廃止となりました、有人の偵察ヘリコプターはアメリカでさえ開発を進めていますので、無人機に置換えるには限度がありますし、なにより自衛隊には無人機からして異様にすくない。

 90式戦車とOH-6観測ヘリコプター、だいたいこれで高度30mというところでしょうか。2022年のロシアウクライナ戦争では90m程度の高度で飛行する攻撃ヘリコプターが携帯地対空ミサイルで次々と撃墜されています、自衛隊の様に30mで飛行せねばなりません。

 AH-1S対戦車ヘリコプターの展開、敵戦車を攻撃する。これも2011年の写真なのですがこの頃にはまだAH-64D戦闘ヘリコプターの調達が継続されていました、しかし13機で中断し今に至る。空中打撃力は特に長大な海岸線を持つ日本には必須の装備と思う故、調達再開が必要だ。

 北欧から北アフリカまで、日本列島地図をそのまま欧州大陸に世界地図でスライドさせますと、北海道の稚内は北欧のコペンハーゲンあたりなのに沖縄の与那国島は北アフリカのアルジェあたりに来ますので、冷戦時代の鉄のカーテンに地中海を加えたより距離が長い。

 鉄のカーテンに地中海を加えた以上の長さである日本列島を防衛する為には、ヘリコプターによる空中機動部隊と機械化部隊を連携させる必要がある、故に観測ヘリコプターや戦闘ヘリコプターの減勢は、もう少し深刻に考えるべきだと、憂慮してしまうのですよね。

 将来における陸上自衛隊の機械化部隊を考える場合、戦車連隊というものを切り替えて考える必要があるのかもしれません、それは戦車部隊を機甲師団単位で一点集中する事よりも陸上戦闘、特に日本防衛に関する限りでは戦車部隊へ求める環境が大きく変容している。

 戦車部隊は不要、という発想はしかし全般を考えていない視野狭窄の論理ではあると考えますが、同時に戦車は集中して配備するという発想もまた過去のものになるでしょう。すると即応機動連隊のような、独立して運用可能な戦闘団編成の部隊が必要ではないか、と。

 もしくはこの発想を継続する事は自衛隊全般を送れた装備体系に留めてしまうのではないか、とも。これは返す返すも諸兵科連合、日本の場合は諸職種連合といいますか普特機協同とも表現されますが、垣根を越えた編成、こうしたものを進めなければならない。

 集中して投入する必要はあるが集中して配備する必要もない、そして集中して配備する事は戦車を知る部隊と戦車に接しない部隊との間での陸上戦闘への認識の齟齬を生みますし、兵力集中運用の原則は地理的集中よりも機動力によってのみ達成せねば意味がありません。

 UH-1J多用途ヘリコプターにて空路進入するレンジャーが展開して参りました、この部分は戦車連隊の多い機甲師団であっても軽装備の旅団であっても同じ、というところでしょう。UH-2多用途ヘリコプターが今後投入され、UH-1Jを置換えてゆく事となります。

 UH-2も含めて陸上自衛隊のヘリコプター調達は右往左往しているところがあるのですが、そもそもUH-60JA多用途ヘリコプターに統合する構想が破綻したもののUH-2はUH-1の系譜にあり、先祖帰りという印象で、なぜ時間を掛けてもUH-60を揃えなかったかと。

 事項要求という方式が防衛予算について、来年度から認められるようになりますと多少変わってくるのでしょうか、年度ごとの予算では毎年調達できる数に左右され、そして全体でどの程度の数を調達できるかは、宣言できても確約できず、現状の様なこととなる。

 戦闘ヘリコプター部隊の再整備、こうした事項要求で通す事が出来るならば、例えばAH-64Dの際に当初示された調達数は62機でしたので、62機の調達と運用開始から24年間、2023年からならば2047年までの長期運用支援、という契約を結ぶことができます。

 分散投入、戦車は集中して運用する必要があり、逐次導入は戦術上の禁忌とされているのですが、例えば地域安定化作戦や国際平和維持活動などに師団単位で機甲部隊を投入する状況というものは考えられません、それは同時に派米等の訓練体系に対しても当て嵌まる。

 即応機動連隊、この編成は非常に示唆に富んだものとなりました。実は善通寺において第15即応機動連隊の新編式、これを見る機会に恵まれまして、前日には北熊本で第42即応機動連隊が新編されているのですが、数が揃った機械化部隊の編成には驚かされたものです。

 装甲機動連隊、部隊を分散投入するには即応機動連隊の編成を発展させた戦車部隊の新しい在り方というものを考えるべきなのかもしれません。即応機動連隊の機動戦闘車隊をそのまま戦車隊に置換えた様な、普通科中隊の装甲車にもう少し堅い車両、そんな編成です。

 偵察隊、第7偵察隊はオートバイとともに展開します。後方には87式偵察警戒車が控えている、第7偵察隊の斥候小隊です。第7偵察隊は敵の前衛を突破して威力偵察を行う部隊ですが、そもそも敵が居るのかいないのかを探るのが斥候、戦力を探るのが偵察、という。

 斥候小隊は87式偵察警戒車と偵察オートバイを装備している、この部隊が敵を見つけたならば、3個ある戦闘偵察小隊が偵察を行う。小隊本部隷下に戦車分隊と小銃分隊に迫撃砲分隊から成る戦闘偵察小隊、戦車2両と装甲車2両及び迫撃砲を装備し、相応に手ごわい。

 偵察オートバイによる偵察は時代遅れ、という指摘はありました、全く防御力がありませんので見つかったら最後、といい偵察は装甲戦闘車等により行うというのが最近の潮流ともいわれた、のですがオーストラリア軍は最近、偵察用に電動モペットを採用しました。

 電動モペットは要するに電動自転車なのですが、日本の様な道路交通法の縛りが無い為に105km/hという高速と100km以上の航続距離が有り、そしてエンジンが無く電動なので無音に近い。航続距離が100kmというとバイクより短いですが、彼らは通常装甲車に乗る。

第7偵察隊は威力偵察を行う事が可能という部隊ですが、オーストラリア軍は機関砲を搭載したボクサー装輪装甲車に電動モペットを搭載、斥候と威力偵察を使い分けています。自衛隊の編成はある意味正解の路線を維持していますので、今後の近代化を期待しますね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(16)90式戦車を羨ましく思う東千歳の観閲行進(2011-10-09)

2022-09-04 20:17:23 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■観閲行進特集大団円
 前回は74式戦車に関する話題で盛り上がりましたところです。

 90式戦車、観閲行進特集もいよいよ今回までとなっていまして、諸般事情から毎週掲載できる写真数を此処数週間抑えている為に長々となっているのは恐縮なのですが、いまみても90式戦車の大群というのはいま10式戦車に代わりつつある中でも勇壮といえます。

 しかし、この90式戦車、もう少し本州へ広範に配備できなかったのか、と思うのです。もちろん50tという90式戦車の重量は38tの74式戦車ほど簡単ではない、橋梁通過や路盤の問題がある事は承知していますが、10式戦車の44tは運用可能なのですから、と思う。

 戦車輸送車、戦車そのものを軽量化できないとしても特大型運搬車が22tで、90式戦車を積載すると72tとなる、ただ、44tの10式戦車を積む73式特大型セミトレーラは18tで合計重量は58tとなるのですから、やりようはあった様にも思うのです。数が揃っていれば。

 90式戦車の廉価版を開発できなかったか、要するに冷戦が終結し戦車の予算が下がったのであればそれまで通りの高価な戦車を少数量産するのではなく、予算を抑えた廉価版を前と同じ数量産し、兎に角短期間で74式戦車を第三世代戦車に置換えられなかったか、と。

 車長用独立監視装置と砲手用自動追尾装置も画期的な開発ですが、車長用独立監視装置はM-1戦車はもちろんM-1A1戦車にも搭載されておらず、M-1A2になって追加されたもの、開発時から標準装備されていたのは非常に限られたものでしたので、拘る必要はあったか。

 砲手用自動追尾装置は1994年に開発されたルクレルク戦車や2004年に開発されたメルカヴァMk4,2010年の韓国K-2戦車くらいです。あれば便利だが無くとも。ならば先ず省略型90式戦車を十分整備した上で近代化改修において後日追加装備する選択肢はあった筈だ。

 1500hpのエンジンと複合装甲、これがあれば90式戦車は凡庸と呼ばれたのかもしれませんが、第三世代戦車として役割を担えたでしょうし、なにより年産15両とか20両ではなく74式戦車なみの年産70両、は厳しくとも60両程度、つまり月産5両というものでした。

 月産5両ならば現実的に防衛産業が生産ラインというものを維持できる水準で量産はでき、74式戦車を置き換えられた。90式戦車は、もちろんすばらしい戦車です、戦争は数だ、といわれるかもしれませんが戦場には地形があり無限に戦車が入れるわけでもありません。

 高性能な戦車は、すると戦域あたり投入できる戦車に地形という上限があるのですから性能で優位を保つという考え方は合理的ともいえます。ただ、それを理由に74式戦車を延々現役に置いたことは失策ではなかったか。最大の失策は戦車削減の方便となった事です。

 日本の戦車削減は細川内閣時代に冷戦後の防衛力見直し気運が高まり、1200両の戦車を900両に削減する事から始まりました。ただ、現代の戦車定数300両というのは、余りに無茶です。そして削減される戦車の大半は74式戦車という自然減となる戦車が対象でした。

 第三世代戦車への置き換えが遅れたことで、第二世代戦車とともに部隊の枠というものが削減対象になってしまった構図だ。74式戦車は信頼性が高いといわれますが、これは言い換えれば90年代一杯に指摘された90式戦車の自動装填装置の問題、全てが問題ではない。

 廉価版という方便で90式戦車から高価な機構を省けば、それだけ量産できたはずです。先日、越えなって74式戦車を間近に見る機会に恵まれましたが、優れた戦車である一方で乗員技量が思った以上に反映される戦車という印象で、世代差を感じました故に思うのです。

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【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(15)90式戦車と90式戦車に90式戦車そして90式戦車(2011-10-09)

2022-08-21 20:15:11 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■戦車部隊と地元を考える
 90式戦車の観閲行進を延々と紹介しますが改めてここ東千歳駐屯地の戦車部隊の規模は凄い、しかし此処の次といわれると。

 90式戦車の写真を眺めつつ、しかし地元の戦車部隊は滋賀県今津駐屯地、どうしても戦車といえば74式戦車を思い浮かべてしまいまして、これが10式戦車に切り替わっていたならばなあ、と思う今日この頃ではあります。そして今年は一段と寂寥感が増しています。

 第3戦車大隊が今年度末の改編で廃止され74式戦車の運用が終了します。実は少しだけ、偵察戦闘大隊に戦車中隊でもつかないものかとか、中部方面戦車隊という10式戦車だけの部隊が出ないものか、と2010年代の終わりまでは願って考えていたものなのですが、ね。

 第二世代戦車最後に開発された74式戦車は弾道コンピュータもレーザー測距装置も標準装備していましたので、狙った場所に命中させるという意味で世界の第二世代戦車ほど切迫感はなかったといえます。問題となったのは暗視装置、1990年代に既に古いものとなった。

 74式戦車は赤外線アクティヴ方式暗視装置を採用していて、これは基本が第二次世界大戦中のもの、危険でした。赤外線アクティヴ方式というのは、要するにサーチライトに赤外線フィルターを装着して肉眼ではみえない光を放ち、相手の戦車を照らし夜間に照準する。

 第三次中東戦争の記録を見ますと夜間射撃を受けたイスラエル軍戦車の戦車長が慌てて携帯式の赤外線照準眼鏡を手に取ると自分の戦車が相手から赤外線照射されている事に気づき、慌てて砲手に照明弾を射撃させ対戦車戦闘に移ったという遭遇戦の記録がありました。

 74式戦車は赤外線カメラでみることが出来るのですが、相手も赤外線カメラを装備していた場合は赤外線サーチライトを焚いているこちらの戦車の位置が丸見え、という問題が。こればかりは何故74式戦車が2020年代までこの暗視装置を維持しているのかは不思議だ。

 AMX-30やレオパルド1にM-48などはスターライト方式の微光増倍暗視装置が開発されると素早くこちらに転換します、これならば自分からは光を出しません、いや日本も87式偵察警戒車の25mm機関砲照準器の暗視装置は微光増倍方式を採用した、80年代の話だ。

 74式戦車も80年代半ばの生産分をこちらに切り替えていれば、ともいえるかもしれません。74式戦車改、1990年代にはいり自衛隊も90式戦車の量産と平行して74式戦車に当時開発されていた89式装甲戦闘車用の熱線暗視装置、追加するという構想はあったのですね。

 これは相手の車体の熱を画像化する装置で多少の霧や砂塵や煙幕を見通せる利点があるものですが、この照準装置を74式戦車に搭載し、サイドスカートや新型駆動輪を備えた74式戦車改を開発はしました。90式戦車の量産が開始されていた当時ですので、しかし。

 74式戦車改は若干数が製造され、戦車教導隊と機甲教育隊にたらい回しのように配備されたのみとなっています。他方で、74式戦車の改良は、俺の私の改造案、などが定期的に軍事雑誌に掲載されましたが第二世代戦車は設計時点で改造に限界があることは前述の通り。

 2020年代に第二世代戦車を使うよりは1990年代のうちに第三世代戦車に切り替える努力を行うべきでした。すると、前に記しましたような近代化改修よりも90式戦車の廉価版、という発想が出てくるわけです。90式戦車は乗員3名で自走装填装置を採用していますが。

 90式戦車の廉価版、これを省いて装填手を乗せていればもう少し安価に収められたのではないか。平凡な設計となってしまいますが、幾つかの90式戦車の高度な装備を省けば、相当廉価で毎年一個大隊分を調達できるような戦車に変更できたとも、思ってしまうのです。

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【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(14)第72戦車連隊の観閲行進と内地戦車部隊(2011-10-09)

2022-07-31 20:00:16 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■90式戦車部隊を眺めつつ
 本日千歳市では航空自衛隊千歳基地航空祭が三年ぶりに盛大に行われたとの事ですが日曜特集は同じ千歳市の東千歳駐屯地祭です。

 第7師団祭、この行事を撮影した2011年当時は流石に2020年代を見通す事は出来ませんでしたが、2018年に再訪した際には第71戦車連隊へ10式戦車が配備開始されていました、しかしそれ以上に予測出来なかったのは2020年代に本州の戦車部隊がまだ74式という。

 戦車として完成された域にある、とは運用している方のお話しでしたが、しかし射撃競技会などを幾度か見せて頂く機会がありまして、考えさせられましたのは個人の技量がかなり反映されるもので、この点で90式はある程度まで平均値が高い、その先は難しいが。

 74式戦車を含む第二世代戦車は、戦車を構成する三要素、機動力と打撃力に防御力のうち二つしか満たしていません、第二世代の戦車は対戦車ミサイルの脅威が顕在化し、500mmや750mmという装甲を貫徹するミサイルを前には、従来装甲の限界が指摘されていました。

 複合装甲という技術が開発される前には、ミサイルに耐えるには率直に相当に装甲を厚くし機動力を断念するか、機動力を重視し装甲は形状の工夫や車高の低減で薄さを補うか。こうした究極の選択しかなく、動きが遅ければその分狙われ、装甲が薄ければ早くとも。

 第三世代戦車が開発された背景には戦車に搭載可能な大きさの1500hpクラスのエンジンが開発され、一方で装甲についても技術が進み均一圧延鋼板換算で800mmとか1000mm相当の複合装甲、イギリスのチョバム研究所が編み出した新技術が背景にありました。

 セラミックとチタン合金などミサイルのメタルジェットの直撃に耐える耐熱性と徹甲弾の貫徹を防ぐ硬度の装甲が開発された、ミサイルのメタルエットの高熱と高圧摩擦にも戦車砲弾の特にAP弾が叩きだす衝撃にも耐える装甲が実現した、という事情があります。

 第二世代戦車を改良する案として、M-60-2000構想という、早い話がエンジンを強化型に換装し砲塔をM-1戦車のものに置き換える構想が示されたり、イスラエルがサブラ改修キットとしてM-60戦車を第三世代相当に改良する装備、なんてものが考えられはしました。

 改造すれば新しい戦車を買わずとも良いということで、南アフリカのオリファントやイランのズフィカルのようにセンチュリオンを改良した事例はあるのですが。もっともコスト面を考えますと、イスラエルのサブラなどはトルコに提示された費用が五億円程度でした。

 第二世代戦車、設計の思想が第三世代戦車と異なりますので、例えば砲弾は防ぐという第三世代戦車の設計に対して第二世代戦車は砲弾貫徹を念頭に被害局限を考慮、例えば砲弾を複数の弾薬庫、床下始め分ける事で一気に誘爆するのを防ぐ等の設計が執られています。

 サブラのように度を過ぎて改修するとあまり変わらない費用で第三世代戦車の新車が買えますし、中途半端であればあまり意味が無い、とも思うのです。だから近代化改修しても限界がある、ということは理解しているのですが、しかし現状のまま、というのはすこし。

 レオパルド1やAMX-30など、世界の第二世代戦車はそこまで本気に成らずとも第三世代戦車が揃うまでの期間に第二世代戦車が有事の際、優勢を確保するほどではなくとも後れをとらないよう改良する、こうした施策は行われていました、ただ74式戦車の場合は。

 暗視装置の改良や弾道コンピュータの追加、レーザー測距装置の搭載など行われるべきなのですが、行われなかったのですよね。ただ、それならばもう少し90式戦車の量産を、多少スペックダウンしてでも全部隊へ配備できるよう施策があってよかったと、思うのです。

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【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(13)第73戦車連隊と第71戦車連隊の90式戦車(2011-10-09)

2022-07-17 20:01:28 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■90式戦車の観閲行進
 90式戦車もこれだけ揃うと迫力を通り越した印象ですが日本という極東の自由主義拠点を北方脅威から守る為には必要なリアリズムの具現化でもある。

 第71戦車連隊に第72戦車連隊と第73戦車連隊、戦車五個中隊を基幹とする強力な戦車連隊で、これだけの90式戦車が一斉に高速で観閲行進に望みますと、確かに地面が振動して共鳴しています。北海道の抑止力、東千歳の機甲師団は当時も今も強靭と精強を誇る。

 ロシアの脅威が再燃する中ではありますが、機甲師団はロシアがウクライナ侵攻に際し世界を恫喝したように、核兵器に対する抑止力ともなります。もちろん戦略核に対しての抑止力にはなりません、しかし、相手に戦術核兵器を使用させるのを躊躇させる効果がある。

 ウクライナ戦争に際しロシアの脅威を認識させられるとともに核兵器の脅威、三月と四月に掛けては戦術核使用が真剣なリスクとして留意されていましたし、戦略核が使用される可能性、熱核戦争の懸念も、低いとはいえゼロではない現実を突き付けられたわけですが。

 核兵器使用への抑止力、機甲師団は歩兵部隊に対し機動力と防御力が高く、戦術核兵器が使用される兆候があっても迅速に散開し直撃を避ける事が出来ますし、戦術核攻撃を受けた直後に敵が戦果拡張へ進んだとしても再度機動力を活かして再集結することが出来る。

 機甲師団はNBC防護能力が高く、放射性降下物の汚染地域を迅速に踏破し、必要ならば放射性汚染地域においても戦闘が可能です、これは装甲化された普通科部隊にも当てはまり、しかし自動車化された普通科部隊や掩砲所以外の陣地に籠る部隊には不可能であるのです。

 ヘリボーン部隊、ただし実際のところ陸上自衛隊も手を拱いていた訳ではなく、核戦争に際しては核汚染地域を飛び越せるヘリボーン部隊を早くから重視しており、特に長大な日本列島の防衛には機甲部隊よりも軽歩兵部隊とヘリボーン部隊を重点整備してきました。

 ただ、冷戦後、ミサイル防衛や水陸機動に国際平和協力とサイバー戦など相次ぐ新防衛任務の追加を、既存の予算と人員とを遣り繰りし、スクラップ&ビルドで対応し、戦車とともにヘリコプター部隊もかなり縮小しています、大丈夫なのか、駄目では、と思うのです。

 国産の90式戦車は、2020年代の視点で見ても第三世代戦車として高い性能が維持されています、1500hpエンジンに複合装甲と120mm滑腔砲というものが第三世代戦車の一つの定義、攻撃力と機動力に防御力を両立させた点が第三世代戦車の一つの定義でした。

 第三世代戦車としてみた場合90式戦車は、火器管制装置が突出して性能が高く、メカトロニクスやベトロニクスという視点で、目標を砲手がロックオンし追尾する目標自動追尾装置、車長の独立照準装置と優先照準機能、更に自動装填装置による高い攻撃力があります。

 打撃力を重視した90式戦車は、2000年代に入ると、データリンク能力の不備という問題が指摘されていましたが、これも広帯域無線機コータムを2010年代から順次追加しており、このコータムの全自衛隊への配備は地味ながら物凄い多額の予算を投じた、成果といえた。

 現用戦車全てと比較した場合、90式戦車は絶対的な優勢は確証されないものの相対的な優勢は保持していまして、よく指摘されるのが砲塔中央部より後ろの装甲防御力なのですが、ここを貫徹されても自動装填装置があるだけで人的被害はありません、この点配慮がある。

 砲塔正面、強いて言うならば90式戦車の砲塔正面は120mm砲弾DM-33の同一箇所への複数命中を想定しているとのことですが、昨今は威力が大幅に増大したDM-53などの装備があり、設計当初よりも強力な砲弾が存在し、この点は、改良余地があるのかもしれない。

 ただ、90式戦車の弱点として筆頭に挙げたいのは、数が揃わなかった点です。本州の戦車部隊は2010年代から2020年代にかけ74式戦車を配備したまま廃止される部隊が多く、なんのために90式戦車を国産したのか、分らない状況となっています。これが弱点だ。

 90式戦車について、例えば生産費用を抑えるべく、維持するものは1500hpのディーゼルエンジンと複合装甲に120mm滑腔砲と熱線暗視装置、つまり第三世代戦車の性能に特化した装備としていたならば、つまり性能よりも年産50両や70両を量産していたらどうか。

 74式戦車並みの年産50両や70両をという取得性を重視していたら、どうだったでしょうか、戦車の見方が変わった可能性もある。もちろん、その為には防衛予算をという視点もあるのでしょうが、90式戦車は高性能を追求しすぎていたような印象もあるのでは、と。

 90式戦車の性能は知られるほどに、開発当初のレオパルド2もどき、という批判は消えてゆくのですが、生産数が74式戦車の873両にたいして如何にも少なすぎるのは否定できません、そして今になり74式戦車を評価する声に信頼性、というものが挙げられますと。

 90式戦車もそれならば無理なハイテクを排してローテクに徹していれば、もう少しは、と思うのですね。レオパルド2もどきと揶揄された90式戦車ですが、レオパルド2とは砲塔形状がかなり違います、そして自動装填装置や目標自動追尾装置という外見にない長所も。

 レオパルド2は特に砲塔正面装甲に埋め込んだ照準装置が貫徹されやすい弱点部位といわれていましたので、しかしレオパルド2A4型まで放置され、A5改修から楔形装甲と照準装置の位置変更で対応しています、自動装填装置という意味ではルクレルク戦車にかさなる。

 ルクレルク戦車、それならばルクレルクを自衛隊が買えばよいという反論もあるようですが、ルクレルクの配備開始は1994年、日本がライセンス生産を行うとすれば、評価試験を経ても2000年前後となり、そんな時代まで74式を量産するのはナンセンス生産でしょう。

 メルカヴァMk4,目標自動追尾装置も日本以外で採用したのはメルカヴァMk4くらいであり、あとはメルカヴァMk3BIZが試験的に採用したくらいでしょうか、要するに10年は進んでいたといえるのが90式戦車ではあったのですが、高性能を突き詰めすぎたともいえる。

 高性能、この視点は、線状に入る事が出来る戦車には限りがあるのです、これは云うならばサッカー部や野球部で二線級だけの人員で200名集めたチームよりも、その五分の一でもいいので第一線級の選手を40名集めたチームの方が同じルールでは強い、と重なります。

 音威子府や中川に上川や留萌といった当時の想定戦場は、数を投入するには限度があり、質的な優位を求めるのも自然だったのかもしれません、ただ、開発当時には900両程度の量産、全国への配備は念頭に置いていた筈でして、高価というのは欠点とさえいえますね。

 自動装填装置ではなく手動装填を用い、車長用独立照準装置も省いて昔ながらの様に車長は双眼鏡と共に戦闘指揮し、装填手の同乗に併せて砲塔上の機銃をもう一丁追加、そんな90式戦車であっても、もしくは冷戦終結を受けて安価型の91式戦車としても良かった。

 しかし、高性能すぎるので安価な量産型を全戦車部隊へ、こうした理念はソ連崩壊と共に1990年制式化の90式戦車が2022年までロシア軍が実際には上陸しなかったからこそ、その抑止力の機能が在った事を無視した後知恵故の平和ボケ、といわるかもしれないような論理ですがね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(12)89式装甲戦闘車と73式装甲車に96式自走迫撃砲(2011-10-09)

2022-06-26 20:11:40 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■89FVと73APCの行進
 戦車部隊の観閲行進が全国の師団祭では行進の大団円を知らせる迫力を残すのですが、第7師団は最初から機械化部隊の迫力が続きます。

 装甲戦闘車、89式装甲戦闘車は優れた装備です、いやしかしこれが過去形となりつつあるのは基本設計の古さに挙げられます。装甲戦闘車の用途は乗車戦闘での戦車支援から下車戦闘の短縮化へ敵陣地へ肉薄できるよう重装甲化が新世代のものですし、ミサイルも。

 第11普通科連隊だけでは、装甲戦闘車が配備される事で得られる機動力、戦闘における優位の獲得という、相手に対抗手段を講じさせる前に浸透する打撃力というものを、ドクトリンとして内部化させられないように思うのですよね、ドクトリンの硬直化は問題です。

 89式装甲戦闘車も、しかし数が揃っていれば十分活躍できたように思います、実際冷戦時代にはもともと北部方面隊師団の各一個普通科連隊は89式装甲戦闘車でFV化する構想はあったという、73式装甲車並みの350両は量産される計画はあったという、実際はしかし。

 標準的な性能として考えると、戦闘重量は26tありますので、防御力は低すぎる訳ではありません、昨今の装甲戦闘車の重装甲化が異常なだけです、35mm機関砲も強力ですし、なにより戦車に随伴できます、出力重量比で戦車随伴を設計に反映させた点は重要です。

 68両しか量産されず、第7師団の第11普通科連隊にしか装備出来ない装備となったために73式装甲車と混成運用されていて、しかも73式装甲車は74式戦車に随伴する運用要求に依拠した設計、つまり90式戦車には随伴が難しく10式戦車には完全に置き去りとなる。

 自衛隊も北部方面隊の総合近代化師団へ戦車を集中させるという防衛大綱に基づき、これはロシア軍ウクライナ侵攻により白紙撤回させるべき過去の思案に思えるのですが、ともかく戦車は北海道に集中させるという、すると戦車を支援する装甲戦闘車は強化すべきだ。

 プーマやアスコッドにリンクスといった、40t級の装甲戦闘車が開発されていますが、これらは大口径機関砲で対処するにはかなり無理のある重装甲となっています。日本に侵攻する可能性の阿多海諸国にはこれら装甲車に対抗する装備が予測され、日本も参考とすべき。

 対戦車ミサイルは車載型とするのが即座の射撃を可能とする為に必要な設計であると考えられていましたが、装甲戦闘車が車体を曝してミサイルを射撃するよりは、脆弱な装甲を戦車に曝す事無く、大型の対戦車ミサイルを車内に搭載し下車戦闘する運用が今日のもの。

 40mm機関砲の時代が到来していますので、逆に装甲戦闘車は相手が主力戦車以外であれば機関砲で対処可能です、いや40mm機関砲のAP弾は第二次大戦中の75mm徹甲弾よりも貫徹力が上になっていまうので、第二世代戦車程度であれば優位に戦闘が可能となる。

 火器管制装置の優位がありますので、交戦距離2000m未満を考えている例えば弾三世代の一翼を担うT-72戦車であれば対抗は可能です、ただ、主力戦車が120mm砲を搭載している通り、T-72B3やT-80といった相手では分が悪いのも確かです。こので対処法は多様に。

 戦車と遭遇したならば装甲戦闘車が下車戦闘のために停車するまえに戦車が行進間射撃で敵戦車を撃破してしまうのですが、新しい世代の装甲戦闘車は対戦車戦闘の枠組みそのものを転換させているという。これは言い換えれば、89式装甲戦闘車の旧式化を意味します。

 一方で、対戦車ミサイルを搭載した装車も依然として存在しまして、例えばコングスベルク社製RWS遠隔操作銃搭にはジャベリン搭載型が開発されていまして、これは装甲戦闘車ではなく装輪装甲車、ストライカー装輪装甲車に採用されているものなのですが、積む。

 装甲偵察車であればフランスのジャガー装甲偵察車は、これは六輪式の装輪装甲車ですが、40mmCTA機関砲とともにMMP対戦車ミサイルを搭載、ミラン対戦車ミサイルの後継で射程は4kmですので89式装甲戦闘車の重MATと射程や運用では似ているといえます。

 12.7mm機銃などを搭載するRWS、暗視装置と火器管制装置を搭載し歩兵が車外に出て肉眼で照準するよりもRWSを通じて照準したほうが素早い、この観点からジャベリンミサイルを一体化している、RWSは日本製鋼が護衛艦用に国産化しており、日本にも可能という。

 01式軽対戦車誘導弾を国産RWSに搭載するという選択肢は、交戦距離が1500mと非常に短くなるのですが、安上がりな選択肢といえるのかもしれない。ただ、ミサイルは瞬発交戦能力や開けた地形でなければ運用が難しいという、運用成約が在るのも確かではあるが。

 もっとも、1989年のまだ冷戦機運が残る頃の設計に2020年代の中国との島嶼部戦などまで展望しろと考えるほうがどうかしているのですけれども、故に旧式化は致し方ない。後継車両というものを考える必要がある。いや後継車両は共通装軌車両があるのですけれど。

 日本の新しい装甲戦闘車、共通装軌車両として開発されているのですが89式装甲戦闘車の設計をもとに銃眼は廃止されているようですが、防御力などはそのままなのですよね。戦闘重量35t程度、増加装甲により41t程度まで想定した装甲戦闘車は必要であるよう思う。

 装甲戦闘車は必要であるよう思う、こういう背景に中国は装甲戦闘車の配備を大車輪で進めていまして、ロシアの新型装甲戦闘車は57mm自動砲を搭載、防御力というものはそうとう考えねば生き残ることは出来ませんし、数少なくなる戦車で対抗せねばならなくなる。

 装甲車は、なにより自衛官の生命が大事と主張する政党は与野党ともに多いのですが、万一のことを考えるならば、それこそ装甲戦闘車の強化を提示しなければ、政策として矛盾し、論理破綻する政治家の名札のように思えてなりません。これは、如何なものだろうか。

 機械化部隊、しかしすべての部隊、普通科部隊を装甲戦闘車により充足すればよい、というような安直な考えでもありません。いや突き詰めれば、第2師団型の戦車連隊と3個普通科連隊を基幹とした編成の師団に装甲戦闘車を充足させてみては、とおもうのですが。

 96式自走120mm迫撃砲、この装備は120mm迫撃砲を開発したフランスなどはVAB軽装甲車に牽引させていましたが、もともと120mm迫撃砲は105mm榴弾砲と並ぶ火力と射程を有していました為、120mm迫撃砲の自走化がスウェーデンやフィンランドで進められた。

 開放型戦闘室に120mm砲を装備しているのみ、簡易な方法でM-113装甲車を転用したM-1064自走迫撃砲などを思い出す方式ですが、射程も長く一つの選択肢であるように思えます。北欧の事例は後填式砲塔を採用しているものですから、遥かに高性能なのですが。

 砲塔式の自走迫撃砲には、フィンランドが行進間射撃を可能とする、間接照準射撃を走行しつつ実現するという砲兵の夢を具現化した様な装備が開発されています、陣地変換せず走りながらであれば敵砲兵の反撃を受ける事はありません、これには驚かされましたが。

 戦車や普通科部隊へ直掩火力を供するには、考えれば昨今流行の52口径155mm砲では少々大袈裟過ぎますが、120mm迫撃砲の自走化が代替し得るのか、直接掩護の任務領域でも補完する程度に限られるのか、野砲がNATOや日本で削減される中、多くの関心事です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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