ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『超星艦隊セイザーX』#06

2020-04-27 22:50:10 | 特撮ヒーロー










 
『ぼくたちのヒーロー』という直球のサブタイトルがついた第6話も、『探検!シャーク4を探せ』に続いて例のイケメン脚本家が書いた作品。

このエピソードにはセイザーXチームと宇宙海賊三将軍の他、主人公=安藤拓人(高橋良輔)の祖父にして世界的エンジニア=宗二郎(宗方勝巳)、母=春子(森川由加里)、妹=由衣(牧田菜々子)、宇宙パイロットのゴルド(ロバート・ボールドウィン)等も登場します。

宇宙が闇に包まれてしまった2050年の未来から、それを阻止するため現代の地球にやって来たセイザーXのメンバーたちは、決死の使命を背負った未来人にして宇宙人。

それに対して安藤拓人は、F1レーサーを目指しながら日々バイトに勤しむフリーターで、彼らみたいに覚悟を決めて戦ってるワケじゃない。1960年にシャーク隊長(松永博史)と知り合った祖父=宗二郎から半ば強制的に使命を背負わされた一般人、っていう設定なんですね。

で、セイザーXの一員となった拓人は何度か戦闘を経験して来たんだけど、世間一般の人々は、彼らがなぜ戦ってるのか、いや、誰と誰が戦ってるのかさえ知らないワケです。

そんなある日、公園でセイザーXごっこをしてた子供たちを、母親が叱ってる現場を拓人は目撃してしまう。「あの人たちはみんなに迷惑かける悪人なのよ!」とまで言われ、単純熱血野郎の拓人もさすがに凹みます。

で、就活中でもある拓人が面接試験の会場に出向くと、タイミング悪く怪獣「ビグスタッグ」が街に現れちゃう。それは宇宙海賊たちによる分断作戦で、別の場所には怪人「レゼッカー」が現れ、拓人=ライオセイザーはロボットに乗り込みビグスタッグと、そしてイーグルセイザーことアド(進藤 学)はレゼッカーとそれぞれ戦うことになります。

さて、もう1人の戦士=おっとりキャラのビートルセイザーことケイン(三浦涼介)は、どっちの応援に行くか迷います。

「ケイン、アドの奴を助けに行ってくれ!」

「えっ、そっちはいいの?」

「任せとけって!」

「バカ、こっちは1人で何とかする! ケイン、怪獣の方へ行け!」

「ばっきゃろ、カッコつけんな! ケイン、俺に助けは要らねえ! アドの所へ行ってやれ!」

「困ったなあ、どっちを選んでも後が気まずいよ」

「んなこと言ってる場合かあーっ!」

そんな無線のやり取りがあり、結局レミー(松山まみ)の判断でケインはアドの応援に回ります。ちなみにレミーは戦艦オペレーターであって戦士じゃありません。ヒロインが変身しない戦隊ヒーロー物は結構レアじゃないでしょうか?

さて、ケインの応援によりアドは辛くもレゼッカーを倒し、応援なしの拓人は相当な苦戦を強いられるんだけど、不完全な合成怪獣だったビグスタッグが途中で形態を維持できなくなったお陰で、なんとか倒されずに済みました。

が、堅物リーダーのアドは容赦なく拓人を責めます。

「なぜ俺の指示を聞かなかった!?」

「そのお陰でお前は助かったんだろが!」

「俺と怪人の力は互角だった。それに対して怪獣の力は未知数。だからケインを行かせたかったんだ!」

「そんな屁理屈はウンザリだぜ!」

「なんだと?」

「大事なのは気持ちだろ? お前が1人で戦ってるのをほっとけないっていう、気持ちだよ! それが間違ってるって言うのか!?」

「戦いに必要なのは的確な判断力だ! 気持ちは関係ない!」

「いいや、大ありだよ! 気持ちが無くてこんなこと、やってられるか!」

かくして拓人とアドは決裂、ケインは立つ瀬を無くしますw

就職試験を犠牲にして戦ったのに責められて、悶々とした気持ちを抱えた拓人が家に帰ると、茶の間のテレビでは怪獣との戦いによる街の被害と、セイザーXに対する世間のバッシングが報じられてるのでした。

「俺たち、敵だと思われてんだな」

憮然とする拓人に、祖父の宗二郎が言います。

「誤解されても仕方あるまい」

「でも、ちゃんと見りゃ街を守る為にやってる事ぐらい分かんねーか?」

「お前は、世間に感謝されたくて戦ってるのか?」

「え? そんなんじゃねえよ」

「お前たちにはやらなきゃならん事がある。世間がどう言おうと関係ないだろう」

「そりゃそうだけど……理屈じゃねーんだよ! 必死に戦ってる俺たちの気持ちはどうなるんだって言ってんだ!」

「だからお前は半端モンだと言うんだ」

「じいちゃんまでそんなこと言うのかよ! こんなの、やってらんねーよチキショー!!」

家を飛び出す拓人を妹の由衣が心配しますが、宗二郎は動じません。

「ここでやめるなら、俺の見込み違いだ」

高台にある公園から街を眺めて考え込む拓人の隣に、今度はレミーがやって来ます。

「なあ、レミーは何のために戦ってんの?」

「え?……それは地球の、ううん、宇宙の未来のために……」

「それはそうだけどさ……ケインから聞いたぜ。鮫のオッサンの役に立ちたかったんだろ?」

「シャーク隊長よ」

「宇宙の未来をとか言われてもピンと来ないけどさ。家族とか友達とか、近所の人達とかさ。そういう人達を守りたいって思ったから、俺は戦う気になれたんだ」

「……うん」

「その気持ちがあるからこそ出来るんだよ。おかしいか? 俺の言ってること」

レミーは首を横に振ります。

「でも、アドやじいちゃんは違うみたいだぜ」

「そうかなあ……そんな事ないよ」

「……わかんねえ……やめた! 考えんのは苦手なんだ。ちょっくら運動してくる!」

行き詰まった時は、とにかく走る。『太陽にほえろ!』の新人刑事たちを見習って(?)、拓人もがむしゃらに走ってみるのでした。

そして行き着いた川原にいたのは、口論する町の子供たち。

「あの怪獣もロボットも、宇宙から来た侵略者なんだぜ!」

またか……と暗い気持ちになる拓人だけど、異を唱える少年が2人いました。

「違う! あのロボットと戦艦は俺たちの味方なんだ!」

「そうだ! 怪獣から街を守ってくれてんだぞ!」

その2人は、第1話で怪獣に襲われたところをセイザーXたちに救助された少年たち。彼らもまた、クラスメイトという名の「世間」と戦ってるのでした。

「あいつら……」

拓人は胸が熱くなります。

「あの人たちはヒーローなんだ! まあ仕事なんだろうけど」

「それならそうと、なんでアピールしねーんだよ?」

「そーだそーだ! 名乗れないのは侵略者だからだ!」

「バッキャロー! ヒーローっていうのはな、正体を隠すもんなんだ!」

その言葉を聞いて、拓人の背中に電流が走ります。本人が聞いてるとも知らず、少年たちは尚も熱弁するのでした。

「そうさ! ヒーローは人から理解されなくて、ボロカスに言われて、それでもみんなの為に戦うんだ!」

「だからこそヒーローなんだ!」

拓人は立ち上がります。

「そうか! そうなのか!」

「あっ、あんたは!?」

本人登場に驚く少年たちに、拓人は駆け寄ります。

「そうだよな、それが正しいんだ! そうでなきゃいけないんだよ! よし、分かった! 俺はこれからも、人知れず戦うぜ!」

「知り合い?」と同級生たちに問われ、少年2人は慌てて首を横に振りますw

そこに無線で怪獣ビグスタッグ再出現の知らせが。

「じゃあな、人知れず行ってくるぜ! 人知れずだ!」

「知られまくってるじゃん」

少年たちの冷静なツッコミを背に、拓人は張り切って出撃します。

「やい、アド! 今回はお前の指示どおりに動いてやる! 被害を出さずにやっつける方法を考えてくれ!」

「よし、マグナビート(ケインのカブトムシ型ロボット)のパワーで怪獣を街から追い出すんだ!」

かくして、拓人の「気持ち」とアドの「的確な判断力」がシンクロし、見事な連携プレーを見せたセイザーXは、被害を出さずに怪獣を倒すことに成功するのでした。

「どういう風の吹き回しだ?」

「別に。今回はお前のやり方で戦う方がいいと思っただけだ。理屈じゃねえよ」

「気持ちか……」

解ったような解らないような微妙な顔をするアドを見て、微笑むレミーとケインなのでした。(おわり)


このストーリーのどこまでがメインライター・林民夫さんのアイデアで、どこからが自分のアイデアだったか、イケメン脚本家はよく憶えてないらしいけど、少なくとも拓人の戦うモチベーションが「気持ち」にある事と、立ち直るきっかけが「人知れず戦うからこそヒーローはカッコいい」っていう、アメコミ映画『スパイダーマン2』や『ダークナイト』等からヒントを得たセリフなのは、間違いなく彼自身の発想だったようです。

このエピソードの肝はそこにありますから、なんだかんだ言いながら彼は『セイザーX』でもしっかり、自分のカラーを出せていたんじゃないかと思います。でなければ全38話中の9本(約3分の1)を任されたりはしなかった筈。

特撮ヒーロー物におけるデビュー作『超星神グランセイザー』#36のレビューをきっかけに、彼が超星神シリーズで脚本を書いた全21本を今回、約15年振りに観直したんだけど、正直言って全部面白かったですw

今観ても笑えるし、林民夫さんみたいに泣かせることは出来なくても、ホロリとさせる場面、グッとくる台詞がいくつもある。ホントに彼は良い仕事をしました。

中には苦手なテーマに取り組まざるを得なかった作品、様々な制約や監督との相性により思い通りに行かなかった作品もあるみたいだけど、彼は常に全力投球で取り組み、魂を込めて書いたことが完成作から伝わって来ます。

なぜ面白いかと言えば、そこに偽りのない愛が感じられるから。彼は本当に心底から超星神シリーズを愛してたんだろうと思います。

本来の夢は刑事ドラマを創ることだったみたいだけど、すでに業界は「刑事物=ただ突っ立って謎解きするだけ」の時代に入っており、もし仮に夢が実現したとしても、超星神シリーズみたいに楽しんで仕事することは、まず無かった事でしょう。

むしろ、彼が本来やりたかったアクション、ユーモア、熱血などの要素は特撮ヒーロー物にこそ揃っており、それも小難しいライダー系より明るい戦隊物の方が断然、自分の持ち味を活かせた筈。

だから、自分に最も適した番組に恵まれたという意味でも、彼は本当に良い仕事をした。だから映像業界には全く未練が無いんですよね。
 

コメント (4)
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