医療制度改革批判と社会保障と憲法

9条のみならず、25条も危機的な状況にあります。その現状批判を、硬い文章ですが、発信します。

新自由主義的改革とマスメディア 

2006年08月05日 | マスメディア

新自由主義的改革とマスメディア 
 
サッチャー、レーガン、中曽根路線と並び称された、1980年代からの、日本における新保守主義的・反動的改革、すなわち第2臨調・行政改革攻撃の特徴は、マスメディアを権力側に取り込み、プロパガンダ機関として動員するというものであった。
 それは、中曽根臨調・行革から、橋本規制緩和・構造改革へ、そして、小泉構造改革と引き継がれ、資本主義の先祖がえりのような、反動的で露骨な攻撃、現在の表現でいうところの新自由主義的政策の推進に、このマスメディアが大きな役割を果たしてきたのである。 
 
 国鉄分割民営化、行政改革・公務員攻撃、老人(医療)攻撃が、中曽根臨調・行革攻撃の3大テーマであった。これに呼応して、マスメディアは、大々的なキャンペーンを連日展開した。国鉄・国労たたきが展開され、公務員攻撃が、さらに、いわれなき老人(医療)攻撃が展開されたのである。
 「増税なき財政再建」というスローガンが掲げられ、当時90兆円台であった国債発行残高が、100兆円に達すれば、国家財政は硬直化し、大変なことになると喧伝された。その財政再建のためとして、国鉄の分割民営化が強行され、公務員削減・労働条件が切り下げられ、老人保健法による老人医療の改悪が進められた。

  その臨調路線は、民間政治臨調に、さらに現在では21世紀臨調に引き継がれ、その構成も政界・財界・官僚、学者・マスコミ・労働組合、地方(知事)と拡大し、新自由主義政策推進の参謀本部の役割を果たしている。
 そうしたことを背景に、日経連は、「新時代の日本的経営」を打ち出し、政治改革としては小選挙区制を梃子に、政界の再編統合が進められるなど、社会・経済・政治の構造改革が進められた。
 こうした構造改革についても、マスメディアはその先導的役割を果たしたといえる。
 
  橋本規制緩和・構造改革、小泉構造改革と引き継がれる中で、国営企業の民営化は、郵政民営化で完了する。さらに、行政改革は省庁の再編統合や公務員削減を経て、現在なお公務員制度改革として展開されている。
 老人攻撃は、老人保健法を梃子に、医療制度の改悪を三巡させ、社会保障制度改悪の雛型としての介護保険を創設し、老人医療をはじめ、福祉医療・公費医療、一般の医療制度を改悪してきた。こうしたことを背景に、社会福祉・社会保障制度を、大幅に後退させてきたのである。

 1980年代以降のマスメディアのキャンペーンを思い起こせば、国鉄・国労にたいする赤字宣伝・ヤミカラ攻撃にはじまり、赤字や非能率などと、国営企業に対する攻撃が展開された。それは国民の共有財産を、大資本が掠め取るためのものであったことが、今や明らかになってきている。
 老人医療の無料化による、老人の過受診によって医療費が増嵩したという攻撃に始まり、一割の老人が医療費の三分の一を使っているなどという攻撃が展開される中で、無料から一部負担、その負担増を経て、1~2割の定率負担となった。この老人医療改悪の波及として、福祉医療・公費医療が改悪され、一般の健康保険も健保本人を含め、すべてが3割負担とされた。
 年金問題も、何度もマスメディアのキャンペーンのテーマとされてきた。その結果、三度にわたる大改悪がなされ、支給開始年令が55歳から65歳に繰り延べされ、支給年金額が大幅に切り下げられ、年金保険料の大幅引き上げとなったのである。
 介護問題のキャンペーンは、きわめて長期間にわたり展開され、その結果として、社会保障制度の質的変換、制度改悪の雛型というべき「介護保険制度」が創設されたのである。
 この他にも、医療事故や医師・医療機関への不信を煽る報道があり、そのあとに来たものは、診療報酬の切り下げと医療制度の改悪であった。また、市職員厚遇問題が集中的に取り上げられ、市民感覚・世間の常識という超法規的な口実での攻撃がかけられ、その結果は、全国の自治体において、法や条例に基づく福利厚生制度であっても、その剥奪が進められることとなった。
 現在進行形の「社会保険庁・社会保険事務所たたき」のあとに来るものは、組織の解体・統廃合、職員の大幅削減と首切り、健保公法人化を経ての民営化、拠出方式から税負担方式の基礎年金への転換など、さまざまな、制度改悪・質的転換などが予測されるのではないか。

  ともあれ、こうしたキャンペーンを展開する中で、国営企業をすべて民営化し、公団を株式会社化し、省庁を統廃合・公務員を大幅に削減し、老人医療改悪を梃子に、医療制度全般の改悪を進め、介護保険制度を雛型に社会保障制度を後退させ、国民に負担や犠牲を強要した成果として、『増税なき財政再建』はなされたのか。
 2006年3月末で国債発行残高827兆円、消費税を導入し3%を経て5%になり、さらなる税率アップが議論されている。
 小泉内閣での国債発行残高の増は200兆といわれ、増税はしないはずが、老年者控除廃止と各種控除の切り下げで、大幅増税となっている。

  新自由主義的改革に果たしたマスメディアの役割は大きく、今後もその役割は、さらに重要となると思われる。マスメディアで報道されること、されないこと、大きく報道されること、小さくされること、しっかりと見極める必要がありそうだ。
 あるブログに、こんな言葉が紹介されていた。
「多くの人々にとって、メディアに取り上げられない事象は、存在していないことと同じである。現実にわれわれが見聞きできるもの、逆にわれわれが見聞きできないものも含め、すべては、マスコミの世界をコントロールする者たちによって決定されているのだ」
(『創られる現実~ニュース・メディアの政治』マイケル・パレンティ著より)
http://blog.goo.ne.jp/c-flows


1 コメント

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TB&コメントありがとうございました (KUMA0504)
2006-08-10 06:20:24
わたしもharayosi-2さん ほど系統的ではないのですが、マスコミについて考えてきたことを三つほどTBさせてもらいました。



朝日に関していえば、湾岸戦争以来、だんだんと、大きく舵を切ったのでしょう。そのことにこの間やっと気がつく体たらくです。



「多くの人々にとって、メディアに取り上げられない事象は、存在していないことと同じである。」せめてインターネットがその現状に風穴を開けてくれることを願うばかりです。



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