ささやかな幸せ

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『告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実』

2019-05-08 21:14:22 | 
『告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実』 旗手啓介 講談社
 第40回講談社ノンフィクション賞受賞!
「息子がどのような最期を遂げたのか、教えてくれる人はいませんでした」――日本が初めて本格的に参加したPKO(国連平和維持活動)の地・カンボジアで一人の隊員が亡くなった。だが、その死の真相は23年間封印され、遺族にも知らされていなかった。文化庁芸術祭賞優秀賞など数々の賞を受賞したNHKスペシャルの書籍化。隊員たちの日記と、50時間ものビデオ映像が明らかにした「国連平和維持活動の真実」。
 すみません。文民警察官の存在、高田警視の死を知りませんでした。本を読むことで、23年目の真実を知ってよかったです。
 まず、表紙のカバー写真を見て、違和感を感じる。なんの写真なのか?柩の遺体袋を閉めるオランダの軍人。柩の前に仁王立ちし後ろを振り返る隊員。柩に背を向けた隊員に腕を回すオランダ軍人。これは、プレスを遠ざけるように立つ隊員と部下の死を確認して号泣する隊長だったのだ。
 襲撃の場面は悲惨である。頭髪の中を弾丸が通過して髪の毛がパラパラと落ちてくる。負傷者に粉末の止血剤を振りかけ、銃撃で体の空いた穴に指を入れ少しでも止血しようとする。救援のヘリは、襲撃を恐れて、なかなか降下しない。重傷の方は、よく命をとりとめたと涙なしでは読めなかった。
 キリングフィールドと化した場で文民警察官は丸腰で任務に当たっていた。停戦合意があると言いながら、塹壕に入る日々を過ごす地域もあったという。過酷な状況の中、他国の警察官と協力し、カンボジアのためにと頑張る姿は頭が下がる。
 しかし、フォンクーでは、食料や水が略奪にあい、底をつく。物資の補給はない。現地にとどまることは他国の食料を消費するお荷物になるので、一旦タイに出て、態勢を立て直して勤務しようとする班に対し「脱走兵」とののしる文民警察本部長。(日本人ではない)それに対し日本の文民警察官を守ろうとしない日本政府。現場で戦っている人をわかろうとしない政府には怒りを覚えた。今もこの態度は変わっていないのでは?
 今も当時の隊員たちは高田警視の死を忘れることはない。それは、銃撃された他国の人も救援にあたった他国の人も同じである。そして、他国ではPKOの検証がされているのに、日本ではメモレベルで公表もされない。臭い物に蓋をするかのようでは、同じことがまた起きるのではないか。忘れてはならないために、この本が出版された意義があると思う。
 そして、カンボジアに派遣中、教育の大切さを口にした高田警視の名前を冠した小学校が現場にある。それが、救いだ。
コメント
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