ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『愚者の毒』

2017-06-30 14:21:45 | 
『愚者の毒』 宇佐美まこと 祥伝社文庫
 一九八五年、上野の職安で出会った葉子と希美。互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が二人に襲いかかる。全ての始まりは一九六五年、筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった…。
 作者のことは知らなかったが、読んでよかった。東野圭吾の『白夜行』やサラ・ウォーターズの『荊の城』を想起させるような作品。うまいと思った。最後にすべてがきれいに回収されるところも私好み。もっと話題になっていい作品だと思う。
 愚者の毒という題名もいい。人は皆、「黙って身の内に毒を持って生きていく」「毒のままか、薬になるか知らないけど」深いなあ。
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「遥かなるルネサンス」

2017-06-29 21:39:08 | 美術鑑賞
「遥かなるルネサンス 天正遣欧少年使節がたどったイタリア」 2017年4月22日-7月17日 神戸市立博物館




●リヴォルノ港の景観を表したテーブル天板 石で風景を描くのがスゴイ。海を表すラピスラズリがきれい。
●ビア・デ・メディチの肖像
かわいい。背景の青が幼女の気品を表している。
●ヨーロッパ内外にセミナリオを設立するグレゴリウス13世 教皇が手にする紙には「日本」を表す言葉が。
●伊東マンショの肖像
怜悧で希望に満ちている表情。
●巡礼者のフィアスコ レースのように見える文様が美しいガラス。「レトルト―リ」という技法らしい。
●ヴィンチェンツォ1世・ゴンザーガの冑・鎧 細かい文様がすばらしい。
●伊東マンショからヴィンチェンツォ・ゴンザーガ公子に宛てた書状 日本語で書かれている。「伊藤鈍満所」と書いてあったと思う。
●ヘラクレスが彫刻された盾 美しいレリーフが全面にほどこされており、実用的ではないだろうな。服の文様の細かいこと!
●舟形杯 薄い。透けるくらい薄い。

 今でいうと中学生の子が、3年かけてヨーロッパに行く。行く先々で歓待されるが、日本に帰ると・・・。能力がすばらしいから使節に選ばれたのだろうし、西洋を見聞してより知識を広めただろうに。後の彼らの運命を考えると悲しい。
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よかった!「ライアン・ガンダー」

2017-06-28 22:13:11 | 美術鑑賞
「ライアン・ガンダー -この翼は飛ぶためのものではない」 2017年4月29日-7月2日 国立国際美術館
 最近、「artscape」というホームページをよく見る。展覧会の情報(どこでいつまでやっているのか、巡回展なのか)がわかるから便利なのだ。そこには、オススメ展覧会というページがある。そこで「ライアン・ガンダー」があったので行ってみた。行ってよかった!オススメしていただけはある。
 作品の表示はなく、受付においてある展示作品リストの図を見ながら作品を見る。ところが、この図が分かりにくくて。見逃がしそうな所に作品があったりとか。これもライアン・ガンダーがわざとしている???しかも、移動する作品があったらしく、見落としてしまった。残念。写真撮影可。


最高傑作   まゆげと目玉が動く なんかおかしい 



あの最高傑作の女性版   アイラインもつけまつげもあり。まゆも細め。


僕はニューヨークに戻らないだろう   穴につっこまれた紙がヒクヒクと動き、カサコソと音がする。床にはくずが落ちている。ねずみ?人の手が出てきたりして。


あまりにも英国的というわけではないが、ほぼ英国的な   床に紙くずが落ちている。思わず「これも作品ですか?」と係員さんに聞いてしまった。



作品名わからず 人形がズラリ。たくさん並ぶと圧巻。


ひゅん、ひゅん、ひゅうん、ひゅっ、ひゅうううん あるいは同時代的行為の発生の現代的表象と、斜線の動的様相についてのテオとピエトによる論争の物質的図解と、映画の100シーンのためのクロマキー合成の試作の3つの間に   タイトル長っ!小麦かと思ったら、矢が突き刺さっているのだった


作品名わからず   きれい

ガラス球の中はこんな感じ


アンパーサンド   フレームの向こうでは、服やリュック、ドラム缶やら様々なものがベルトコンベヤーで流れてくる。次は何が見えるのかな?


ヨーロッパのソフトなモダニズムの運動家(構造と安定のための演劇的枠組み)   やあ、まいったなあと言っているみたい。体が自由に動かせることができるようだ。

足元の小さな人形にも注目


作品名わからず 写真。言葉が書かれているカードを背景にオブジェがあり、布が舞う。思わずカードの言葉を見てしまう。私の目にとまったのは”storytelling like monocle shorts”ストーリーテリングを勉強している私にピッタリと思ったけれども、これってどういう意味?穴がひとつしかないショートパンツのような語り???


そっと置かれていた靴 これも作品。私は、この三足の中では左の始めから泥が描かれている靴が好き。


作品名わからず 鏡をパレットのように使っている。じっと見ていると自分の顔が映っていてビックリした。


昨日今日明日   日めくり。毎朝、係の人が日めくりを破って丸めて山に置くそうだ。展示の始めと比べたら山も大きくなっているだろうな。

「ライアン・ガンダー」展の上階は、「ライアン・ガンダーによる所蔵作品展 かつてない素晴らしい物語」 国立国際美術館の所蔵品をライアン・ガンダーが選んだものを展示している。おもしろいのは、作者の違う作品をペアの展示にしていること。比較したりすることで、より作品を楽しむことができるようになっている。マンレイ、ミロスワフ・バウカ、高松治郎さんの作品や山城隆一さんの「森・林」が好き。
 
 大満足の展覧会だった。





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『まく子』

2017-06-27 23:08:28 | 
 腕がまだしびれていて、だるい。関ジャニ∞のアルバム「ジャム」のDVDも夫が我が家に一台のテレビを占領しているから見ることができない。困ったもんだ。

『まく子』 西加奈子 福音館書店
 小さな温泉街に住む小学五年生の「ぼく」は、子どもと大人の狭間にいる。ぼくは、猛スピードで「大人」になっていく女子たちがおそろしく、否応なしに変わっていく自分の身体に抗おうとしていた。そんなとき、コズエがやってきた。コズエはとても変で、とてもきれいで、なんだって「撒く」ことが大好きで、そして、彼女には秘密があった。
 「まく子」とは人の名前かと思ったら違って「撒く子」だった。思春期の甘酸っぱい感じで読んでいたら、ラストは壮大すぎて、ついていけなかった。
 ただし、相変わらず、西さんの人に対する温かい気持ちは伝わってくる。(変だけど愛嬌のある大人たちとか、なんやかやといい人ばかりとか)西さんの描く挿絵がとてもいい。そして、表紙。暗い所でぜひ見てください。
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『終わった人』

2017-06-24 22:04:38 | 
『終わった人』 内館牧子 講談社
 大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられそのまま定年を迎えた田代壮介。仕事一筋だった彼は途方に暮れた。妻は夫との旅行などに乗り気ではない。「まだ俺は成仏していない。どんな仕事でもいいから働きたい」と職探しをするが、取り立てて特技もない定年後の男に職などそうない。生き甲斐を求め、居場所を探して、惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?
 おもしろかった。脚本家でもある内館さんの本だから、きっとドラマ化されるな。要所要所に出てくる石川啄木の歌がその場面にピッタリで効いている。
 我が家も何年後かに夫が定年を迎える。きっとこんな感じなんだろうなと思いつつ読む。夫が仕事に邁進できたのは、妻が家事をこなしているから。家に帰れば、食事は出てくる、風呂は沸いてる、服はきれいに洗濯されている、布団には清潔なシーツ。当たり前に思うなよ。定年になったら急に女房孝行するって?今まで妻をほっておいて?壮介の妻・千草の気持ちがよ~くわかるわ~。
 カルチャーセンターの受付をしているアラフォー女性に、もしかしたらと思う壮介。男って、バカだなあ。壮介の娘・道子の言葉のなんて的確なこと!
 「将来を嘱望された男ほど、美人の誉が高かった女ほど、同窓会に来ない」「人の行きつくとこは大差ない」という言葉も「内館さん、さすが!」と思う。しかし、何といっても一番響いた言葉は「思い出と戦っても勝てねンだよ」(あとがきでプロレスラー武藤敬司さんの名言だと述べている)関ジャニ∞の曲ではないが「今」が大切。
 エンディングは、普通という感じで少し残念だった。
 本を読んで夫との関係を考える。「生まれ返っても、またあなたと結婚したい」と言ったら「勘弁してくれ」と夫に言われた私。「来世も再来世も一緒に」と言った海老蔵さんと小林麻央さん夫婦のように、強い愛で結ばれてはいないが、せめて「一緒になってよかった」と言えるような関係を築いていきたい。
 どこかで読んだが、妻が夫を介護するのは「仕返し介護」、夫が妻を介護するのは「罪滅ぼし介護」というそうだ。「仕返し」はしたくないなあ。
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