今日は静岡へ。静岡市出身の弁護士・海野普吉(しんきち)没後50年(50年は来年)を記念して、彼が戦時下弁護を担当した横浜事件、その事件が基本的に未解決のまま国家賠償訴訟として継続しているので、それに関する集会が行われた。来年にかけて海野普吉と横浜事件に関する研究発表集会が続く。
横浜事件については、
畑中繁雄『日本ファシズムの言論弾圧抄史』(高文研) 1800円
大川隆司ほか『横浜事件・再審裁判とは何だったのか』(高文研) 1500円
横浜事件・再審裁判=記録/資料刊行会『ドキュメント横浜事件』(高文研)4700円
同上『全記録 横浜事件。再審裁判』(高文研)7000円
横浜事件第三次再審請求弁護団『横浜事件と再審裁判』(インパクト出版会)3000円
同上『資料集成 横浜事件と再審裁判』(インパクト出版)4600円
がある。
私はこれらの資料をすべて購入(畑中繁雄の本だけは、書庫にあった)した。
まず上記2冊を読み込み、横浜事件の内容を基本的に掌握したが、第四次訴訟、第三次訴訟に関わった大島隆明裁判長の判決は、読むに値する内容であった。最近の司法の無能化の中で、珍しくよい判決を書いている。おそらくこの判決は、現在の司法状況の中で、最良のものだといえるだろう。
第一次から第四次まで、横浜事件の裁判は続けられた。現在は第三次訴訟に関わった人々が、国家賠償を求めて裁判を起こしていて、現在東京高裁に係属している。
横浜事件に関わった人々の犯罪をつくりだし(でっち上げの事件であった)、その人々を特高警察がひどい拷問で「自白」させ、拷問による「自白」であることがわかっていた検事が起訴し、裁判官が判決を書き、そして関係書類(判決までも)を焼却してしまうという暴挙(不法行為)に対し、国家賠償を求める、という訴訟である。
だが残念ながら、わが日本国家は、日本国憲法下ではあっても、謝罪をしないという特異の国家である。彼らの論理は「国家無答責の法理」、戦前の国家による不法行為については責任は問われない、という論理を、大日本帝国の蛮行に対する責任を問う裁判でかならず出してくるのだ。
この論理をどう崩していくかが、たいへん重要であり、この訴訟でも岡田正則氏の鑑定意見書が出されている。
横浜事件国賠訴訟の推移を見守りながら、海野普吉没後50年を取り組んでいきたい。