浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

支えるということ

2017-11-01 23:13:31 | その他
 衣食住、本、これが私の主要な支出である。在職中に買った服がたくさんあり、服はもうほとんど買わない。時々、旅にでる。その時はカネをつかう。とにかく贅沢はしない。

 私は、いくつかの雑誌を購読している。『世界』(岩波書店)、『週刊金曜日』、『DAYS JAPAN』、『Journalism』(朝日新聞社)、『法と民主主義』、『けーし風』、そして時々『現代思想』(青土社)。

 今日届いた『週刊金曜日』。読んでいたら、私が購読している、『世界』、『週刊金曜日』、『DAYS JAPAN』の編集長の対談が載っていた。『週刊金曜日』は立ち上げの時に協力して、浜松市で本多勝一、筑紫哲也の講演会を開いたこともあった。一時的に「内輪向けの」内容にあきて購読を中止したことがあるが、今は購読している。『世界』は高校時代からずっと読んでいる。『DAYS JAPAN』は創刊以来ずっと購読している。

 これらの雑誌。若者の書籍離れ、購読者層の高年齢化などにより、購読者がかなり減っているようだ。しかし、現実を見据え、現実を批判的に捉え、有益な情報を得、みずからの思考を鍛えるためには、これらの雑誌はきわめて重要である。

 私は、『週刊金曜日』の購読者が減っているということを人づてに聞いて、また購読を再開した。こういう雑誌を支える必要があると思ったからだ。大手メディアに、権力の監視こそがもっとも大切な役割なのに腰砕けが見られるからこそ、こういう雑誌を支えなければならないと思う。それは『世界』についても同じである。

 私は、私のブログを読んでいる方々に、『世界』、『週刊金曜日』などを支えてほしいと思う。

 相互に支え合うことは、庶民にとってとても大切なことだと思う。私の所得はすくない。働いていないから当たり前だ。しかし私は、支え合うということを実践している。私がお金を送っているところはかなり多い。もちろんその額はたいしたものではない。だが、より多くの人から支えられているということこそが、重要なのだ。

 国境なき医師団、ユニセフ、障害者の施設、ペシャワール会・・・・・・・・

 本来は、政府などがカネを出さなければならないのだが、残念ながら日本の政府はそうしたところにカネを回さない。そういうとき、庶民が拠出しなければ誰がカネを出してくれるのか。

 支え合う、これこそ、庶民が生きてこられた理由である。

 今日、『週刊金曜日』のなかに、購読者数減の現状を打開すべく、購読してくれそうな人を紹介して欲しいという紙が一枚入っていた。『週刊金曜日』をなくしてはいけないと思う。

 今、民主主義や不戦を唱える雑誌は減っている。書店に行けば、好戦的な、大言壮語が書かれたもの、ウソを平気で載せているもの、そういう雑誌が積まれている。こういう社会状況を放っておいていいのか、という問題である。

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演劇鑑賞

2017-11-01 20:11:04 | その他
 今日、友人が11月の演劇のシールを持ってきた。観劇当日はそれを貼った会員手帳をもって劇場に行く。

 前にも書いたが、私は高校時代から演劇をずっと見てきた。しかし就職してから徐々に仕事の関係から行けなくなり、自然に見なくなっていた。最近、強い勧誘でもう一度見るようになった。来月は「検察官」を見る。

 さて、その友人は、シールと同時に静岡県全体の鑑賞団体による「総会会議資料」を持ってきた。その冊子を1ページめくったら、1991年、2012年、2017年の県内各地の鑑賞団体の会員数が載っていた。浜松市は1991年と2017年を比べると微減となっている。しかし、静岡市は3793から1419へ、沼津市は3261から713へ、清水が1252から544、富士市が1740から536など、大幅に減っている。県全体では、22471から11250と、ほぼ半減である。

 これには驚いた。

 1991年頃と言えば、新自由主義的改革が開始された頃。その改革が「効果」を発揮し、1997年頃を境にして、労働者の賃金、貯蓄など庶民生活に関わる数値が軒並み悪化を示し(消費税も5%となった)、また日本の対米従属が強化された。そしてその後の小泉内閣の時代に新自由主義的改革はさらに深化し、まさに大企業や富裕者の利益は大いに伸びたが、反対に庶民は非正規労働者の増大など、貧窮化が進んだ。

 演劇を見る人々が減ったことの背景には、そうした経済社会の変容があるのだろうと思う。庶民生活にゆとりが失われていったのである。文化を享受するには、それなりのゆとりがなければならない。

 しかしそれだけではない気がする。

 演劇は、親切ではない。映画やテレビドラマは、あちこちに撮影に行き、あらすじがよくわかるように具体的に示してくれる。京都が舞台なら京都がでてくる。

 ところが、演劇は、狭い劇場のなかであまり多くないキャストが動き回る。舞台装置は、やはり象徴化されたものを使わざるを得ない。たとえば、橋があっても、水が流れているわけではなく、橋らしきものをセットして、観客に橋をイメージさせる。つまり、演劇を見る者は、ただ単に見る人ではなく、見ながら想像する、あるいは劇空間を創造するのである。映画やテレビは、ただ見ていればよいのだが、演劇は抽象的な舞台装置と、キャストの台詞や所作を頭の中で総合することによって、観客は劇をつくるのである。その意味で、演劇は、演じる者と、舞台装置と、観客がその場でつくりあげる総合芸術なのである。

 観客が主体的に関わることによってつくりあげる芸術としての演劇から、人々は遁走を開始しているのではないか。言ってみれば、庶民の消費者化が進んでいるのではないかと思うのだ。つまり、消費者として欲しいものを提供してくれればよい、のである。みずからカネを出して、みずからの知覚を総動員して演劇をつくりあげることよりも、出来合いのものをただ提供してくれればよい、よいものがあったらカネを出して買うだけ、という性向が強まっているのではないか。

 自治体だって、市民を住民自治の主体として扱うのではなく、市民を消費者として扱うようになっている。

 経済的な背景だけではなく、こうした社会学的な背景をも考慮する必要があるのではないだろうか。

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野枝さんへ

2017-11-01 16:12:21 | その他
 高校時代からずっと気になっていた伊藤野枝さん。今日、某所で「野枝は何と闘ったのか」というテーマで話しました。今まで、瀬戸内の『美は乱調にあり』、『階調は偽りなり』、井出文子『自由それは私自身』など、野枝さんについて書かれたものを読んできました。読めば読むほど、野枝さんが好きになりました。いつか、野枝さんのことをまとめて話したいという願望をもって生きてきました。

 今日、それがかないました。私なりの野枝論を話しました。

 野枝さんは、物心ついたときから、様々な闘いに参加しました。闘いの相手は、貧困、孤独、あなたがよくいうコンベンション(因襲)、愛などです。野枝さんの生きていく過程で、何と闘ったのかを、今日説明しました。

 結局、しかしあなたがもっとも闘った相手は、おそらく自分自身であったのだと思います。私は結論でこう話しました。

 豊かな感性をもった野枝は、果てしなき自己変革を求め続けた女性であった。その過程で生じた摩擦や困難に煩悶しながらも、自己の内部から湧き上がる情熱を原動力に、より高みへと自己を飛翔させようした。

 最近出版されたあなたに関する本に、あなたが煩悶もせず、他者の存在を顧慮することもなく、ひたすら自己の願望をかなえるために自由奔放に生きた、というように書かれていました。私は驚きました。人生は悩み苦しみ、その結果として無数にある道のなかから選び取って生きていくのです。野枝さん、あなたが書いたいろいろな文の中に、苦しみや煩悶が記されています。私は、その理解なしに、あなたの生を見つめることはできないと思っていました。

 私はそれぞれの時期に何と闘ったのかを明らかにしながら、あなたの生の軌跡をたどりました。

 そして最後にこう語りました。

 平塚らいてうは、野枝が殺された後、こう記した。野枝は「自分自身の思想らしい思想は遂にもちませんでした」(「私の見た野枝さんという人」、『婦人公論』1923年11・12月号)と。確かに、野枝は「思想らしい思想」を遺さなかった。野枝が書きあらわしたことは、みずからの「生の事実」や、「貞操」や「堕胎」や「廃娼」、労働運動などに対する「所感」などであった。体系的な思想ではない(28歳の女性にそれを求めることは酷である)。
 だが、1895年から1923年までの28年間の、その「生」そのものが、ひとつの「思想」ではなかったか。その生そのものが、この時代の女性が背負った,背負わざるを得なかった問題群を、私たちに現在も示し続ける。野枝は、その問題群に対して身を以て闘った。その闘いそのものが野枝の思想なのである。


 私は、やっとあなたの生涯をみつめることができました。あなたの全集は、付箋だらけです。しかしこれで終わったわけではありません。気になる存在であるあなたを、これからも見つめていくつもりです。

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