浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

絵画はコスモポリタン

2017-11-24 23:05:52 | その他
 今日は東京へお見舞いに行った。面会時間が15時からということなので、その前に上野へ。

 国立博物館の「運慶展」、東京都立美術館の「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」の二つをはしごして見てきた。

 運慶の作品は、今までも各地の寺院で見てはいるが(静岡・願成就院、奈良・興福寺、奈良・円成寺、奈良・東大寺など)、見たことがないものをあったので、とにかく見てみようと思ったのだ。多くの人が押し寄せ入館する前にかなりの時間を要するということであった。その通り、私は1時間行列に並んで入館した。こんなにも運慶が好きな人が多いのかと思ったが、ある人から真如苑という宗教団体が所有している仏像が展示されているので、その信者が来ているのだ、ということを聞いた。

 いずれにしても、すごい人であった。混雑しているなかをかきわけて見て回ったが、全体として思ったことは、静と動の統一ということであった。動と静は対立する概念ではあるが、運慶は、動をそのまま静として作品とした、作品そのものは静ではあるが、作品は動を表現している。言い換えれば、動のエネルギーが作品そのものに凝縮されている、そういう感想をもった。

 次に「ゴッホ展」。ゴッホは、日本の浮世絵に大きな衝撃を受けたこと、したがって彼の絵には浮世絵をはじめとした日本絵画の影響があることはすでに指摘されていることだが、この展覧会は、日本の浮世絵とゴッホの絵を並べるという展示方法をとっていた。なるほど、ゴッホはみずからの絵に浮世絵を描いたり、あるいは造形方法に浮世絵から学んだものを取り入れたりしていた。それがよくわかる展示となっていた。

 上野の国立西洋美術館では、「北斎とジャポニスム」という展覧会も同時的に行われている。こちらのほうは見なかったが、ふと思ったことがある。最近テレビや出版された本の中に、「日本ってすごい!」ということを強調するものが増えているという。

 このゴッホ展や北斎の展覧会は、ある意味での「日本ってすごい」の一環ではないかと。ゴッホは日本の浮世絵に影響を受け、北斎はヨーロッパ絵画(セザンヌ、ドガ、ゴーガン、モネ、ゴッホなど)に「衝撃」を与えた、その「衝撃」が彼らの絵の中に描かれている、というのだ。これって、「日本ってすごい」の絵画バージョンではないか・・・・?

 私は、今日、一冊の本を持っていった。新幹線のなか、運慶展の入場を待つ列に並んでいるとき、『ねじ釘の如く 画家・柳瀬正夢の軌跡』(井出孫六、岩波書店、1996年)を読み続けた。柳瀬は、戦前のプロレタリア画家(風刺画が多い)であるが、彼はヨーロッパの多くの画家の影響を受けている。まだ読み終えていないので後で紹介するが、要するに日本の近代以降の画家で、西洋絵画の影響を受けない画家はいない。いや、そもそも絵画というものはコスモポリタンであって、本来国境をもたないものではないかと思う。

 国境を持たないが故に、絵画は国境を超越し、絵画が相互に影響を及ぼし合う、そういうものではないだろうか。もちろん、世界中の絵画を知ることはできないから、あるときは日本の絵画が、あるときは新大陸の先住民の絵画、あるときは中国の絵画が、というように、絵画はそのときのある種の「流行」を取り入れるのだが、そういう絵画が今、国境をこえて世界各地で、こうして展覧会が開催されている。

 今日もらってきたチラシの中に、ムンク大回顧展のものがあった。まさに絵画はコスモポリタンなのだ。

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腐臭を放つ支配権力

2017-11-24 08:29:34 | その他
 『東奥日報』コラム。

2017年11月23日(木)
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ずさんで済む話ではない/検査院の森友報告


 森友学園への国有地売却で、ごみの撤去費用として8億円余りが値引きされた経緯を巡り、会計検査院は、国によるごみの処分量の見積もりは過大で、根拠が不十分とする報告書をまとめ、国会に提出した。

 「法令に基づき適正に処理」という政府の説明に改めて疑問が突き付けられた形だが、単に、算定や文書管理がずさんだった-ということで済む話ではない。

 安倍晋三首相の昭恵夫人と森友学園前理事長の籠池泰典被告とのつながりが、国有地売買交渉に大きな影響を及ぼしたとされる疑惑は未解明のまま残っている。

 さらに、売買契約を前に財務省近畿財務局の担当者があらかじめ学園側に買い取り可能な金額を尋ねていたとの証言や、籠池被告との間で売買価格を協議していたことをうかがわせる音声記録も明らかになっている。撤去費の算定を基に、きちんと価格が決められたのかという疑問すらある。

 検査院の報告書で終わりではない。首相が繰り返す「丁寧な説明」に向け、政府は報告内容の検証と一連の疑惑解明に取り組むべきだ。

 土地売却には財務省近畿財務局と国土交通省大阪航空局が関与した。検査院は、値引き理由となるごみの処分量の推計は過大で、過去のボーリング調査の結果を基に試算した結果、実際は3~7割だった可能性があるとした。

 最終的な値引き額である8億円についてはごみが埋まっている深さ、サンプルとした土壌にごみが含まれる比率などについて十分な根拠が確認できないとした。

 算定に用いられた資料の一部が破棄されていたことから、正確な計算ができないとして適正な撤去費は示していない。

 これでは「適正な処理」と胸を張れまい。だが当時の財務省理財局長で国税庁長官の佐川宣寿氏は、国会で「適正な価格で売った」と繰り返し強調。学園側との面会・交渉記録を廃棄したとして説明を拒み、事前協議の疑いを指摘された際には「あらかじめ価格について申し上げることはない」と答弁していた。

 一方、小学校の名誉校長だった昭恵夫人は口を閉ざしたままでいる。夫人付の政府職員は籠池被告と財務省幹部との仲立ちをしていた。疑惑解明には昭恵夫人や佐川氏らの国会招致も欠かせない。
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