昔,昔の話です。
天竜川は毎年のように堤防をこわし,大あばれしていました。天竜川沿いの村々はもちろん,年によっては遠く浜名湖まで水びたしになるほどでした。
「このままでは,今年も村は水びたしだ。」
「もう少しでいねかりができるのに,堤防が切れればそれで終わりだ。」
村人は次々に不安を口にしました。今年こそじょうぶな堤防を作ろうと,庄屋の松野彦助は殿様に何度もおねがいしました。せっかく堤防を直すゆるしが出て,費用も出してくれるのに,村人は工事に真剣に取り組みません。
「そんなことでは,大雨の時期に間に合わないぞ。」
「どうせ直しても,また切れるに決まっている。直してもむだだね。」
彦助と村人の話はいつもこんな具合です。
「ああ,これでは今年もまたいねかりはあきらめだ。」
彦助が庄屋になってから何年もこんなことが続いていました。
「同じことのくり返しで,今,何とかしなければ村がつぶれてしまう。」
彦助は,村の人たちを集めて,自分の決意を話しました。
「このままでは川沿いの村はぜんめつだ。それでもいいのか。堤防を守るために私 が人柱になる。人が生きうめになって守れば,千年の間,堤防は切れないという。」
「えっ,庄屋さんが人柱に‥‥‥。」
「村を守るのが私のつとめだ。みんな,後はたのんだぞ。」
彦助は,念仏をとなえながら大きな石を体に結びつけて,川に飛び込みました。
村の人たちは,彦助の思いにこたえようと,一生懸命工事をしました。みんな,夜を日についで働き,今まで見たこともないじょうぶな堤防をきずき上げました。彦助と村の人たちのたましいのこもった堤防は,長さが1km以上に及び,その後の洪水(こうずい)を何度も食いとめました。おかげで,田んぼのいねをはじめ,畑でも様々な農作物をたくさん作ることができるようになりました。
今でもこの時に作った堤防の名残があり,「彦助堤」と呼ばれています。
天竜川は毎年のように堤防をこわし,大あばれしていました。天竜川沿いの村々はもちろん,年によっては遠く浜名湖まで水びたしになるほどでした。
「このままでは,今年も村は水びたしだ。」
「もう少しでいねかりができるのに,堤防が切れればそれで終わりだ。」
村人は次々に不安を口にしました。今年こそじょうぶな堤防を作ろうと,庄屋の松野彦助は殿様に何度もおねがいしました。せっかく堤防を直すゆるしが出て,費用も出してくれるのに,村人は工事に真剣に取り組みません。
「そんなことでは,大雨の時期に間に合わないぞ。」
「どうせ直しても,また切れるに決まっている。直してもむだだね。」
彦助と村人の話はいつもこんな具合です。
「ああ,これでは今年もまたいねかりはあきらめだ。」
彦助が庄屋になってから何年もこんなことが続いていました。
「同じことのくり返しで,今,何とかしなければ村がつぶれてしまう。」
彦助は,村の人たちを集めて,自分の決意を話しました。
「このままでは川沿いの村はぜんめつだ。それでもいいのか。堤防を守るために私 が人柱になる。人が生きうめになって守れば,千年の間,堤防は切れないという。」
「えっ,庄屋さんが人柱に‥‥‥。」
「村を守るのが私のつとめだ。みんな,後はたのんだぞ。」
彦助は,念仏をとなえながら大きな石を体に結びつけて,川に飛び込みました。
村の人たちは,彦助の思いにこたえようと,一生懸命工事をしました。みんな,夜を日についで働き,今まで見たこともないじょうぶな堤防をきずき上げました。彦助と村の人たちのたましいのこもった堤防は,長さが1km以上に及び,その後の洪水(こうずい)を何度も食いとめました。おかげで,田んぼのいねをはじめ,畑でも様々な農作物をたくさん作ることができるようになりました。
今でもこの時に作った堤防の名残があり,「彦助堤」と呼ばれています。
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