撮影 千田完治
この欄の一年間のことばを振り返ると、前半が道歌、短歌、俳句など七五調のものが多かったので、秋から長めの散文にしました。で、今年、最後のことばは、グッとみじかくしました。 私が先住職から引き継いで、掲示板を書き始めたのは、平成18年1月だから、14年になるでしょうか。その中でもっとも短いです。送り仮名をつけなければ漢字五文字、「看看臘月盡」。臘月は陰暦12月のことです。『禅語辞典』は出典を『虚堂録』と教えてくれるのですが、その問答は難しい。わかりやすいのは、『石溪心月禪師語録』にある次のような問答でしょうか。
ある僧が雪竇禅師に問いました(舉僧問雪竇)。 「禅ってなんですか?(如何是教外別傳一句)」 雪竇禅師が云いました。(竇云) 「あつというまに一生の決着の時がやってくる。(看看臘月盡)」 僧が云いました。 「なんで時は流れ去ってしまうのでしょうか(恁麼則流芳去也)} 雪竇禅師が云いました。 「口をきけない人がとてつもなく苦い瓜を食べたようなものだ(啞子喫苦瓜)」
にがいものを食べたにもかかわらず、「あっしまった」と声をだせないのと同じように、時が過ぎ去ったのを後悔しても、声もでないよ、やるなら今しかない!というのです。
さて、「看よ看よ臘月盡く」と同じことを言っている現代の起業家がいました。アップル社の創業者・故スティーブ・ジョブズです。有名なエピソードですが、ジョブズは生前、毎朝鏡に映った自分にこう問いかけたといいます。
「もし今日が人生最後の日だとしたら、今日これからやろうとしていることを本当にしたいだろうか」(上野陽子著『スティーブジョブズに学ぶ英語プレゼン』日経BP社)
そう、わかっちゃいるけれど、もったいない時間の過ごし方をしている私です。