武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

174. 逃げ出したサルサ Salsa escapou

2020-07-01 | 独言(ひとりごと)

 マンションの正面側にあたる我が家北側のベランダには幾つかのプランターが並べられていて、『月下美人』とニラ、それにサルサが育っている。

 月下美人は1997年にポルトガル在住日本人の方から小さな苗を頂いたものが大きく育ち、切り詰められ、株分けされて3株になっているが毎年たくさんの花を咲かせて楽しませてくれていて、今も6つの蕾が成長中だ。

ベランダで成長中の『月下美人』の蕾。お向かいの紫はジャカランダ。赤はブーゲンビリアそして夾竹桃。2020年6月30日、北側ベランダで撮影。

 花が終わった後の花殻は納豆御飯ならぬ、月下美人飯として頂く。オクラ程のぬめりがあり花の香りもほんのりと残り生卵を混ぜると絶品である。

 ニラも同様に日本人の方から数株頂いたもので、我が家では定期的に餃子を作るがその材料になる。ニンニクも白菜も使わないでニラと豚肉だけのニラ餃子で、食べると元気が出る。

 サルサとはパセリのことで、日本ではいわゆるイタリアンパセリとして売られているものだ。数年前にスーパーで買ったサルサに根が付いていたのでプランターに植えておいたのが、それも勢いよく育ち、スパゲッティーやピザに刻んでのせるが、使いきれない程の勢いで増え、花を咲かせ、種を付けた。その種をプランターに蒔いておいたのが、今また花を咲かせている。ベランダの植物は我が家では全て食材である。

直径3mmほどのサルサの花。2020年6月30日、北側ベランダで撮影。

 我々は毎年、春の2~3か月を日本で過ごす。展覧会のために帰国するのだが、その2~3か月は誰も水遣りをしない。北側のベランダで放ったらかしにされる。たまには雨も降るのだろうが、ベランダには屋根があるので、吹き込む分だけの雨だ。

 今年に限ってはCOVID-19のために帰国できないでずっとセトゥーバルの我が家に居るのでしっかりと水遣りは出来ている。

 昨年までの場合、2~3か月してポルトガルの我が家に戻って来るとさすがに傷んではいるが、水を遣ると息を吹き返す。鍛えられた根性の逞しい月下美人、ニラそしてサルサである。

 我々が留守の間でも月下美人は花を咲かせたのだろう。豪華な花は地上からも見えたらしく、ある日、マダレナ小母さんが「挿し木をしたいのでひと葉下さいな。」と言われた。葉はすぐに根付いたらしく、それをマリアさんに話したのか、マリアさんも「私も育てたいのでひと葉下さい。」というので、差し上げたが、さすがに留守がちの我が家よりも立派に育っている様だ。「この花は食べるのですよ」とは言わない。それは内緒である。

 先日、出掛ける前に我が家の真下に駐車している我が家のシトロエンを掃除していると、窓からマリアさんが顔を覗かせ挨拶を交わした。

 そのクルマを駐車している定位置のすぐ後ろ側に実はサルサが自然に生えていて結構大きく育っている。我が家のベランダから種がこぼれたのだ。サルサの株の中にはニラも一筋育っている。ベランダではニラも毎年花を咲かせ種を付ける。

 マリアさんに「これはサルサですよ。」と言うと、マリアさんは怪訝な顔つきで「本当?」と言った。それこそ誰も水も肥料も遣らないし、壁との隙間の僅かな石畳の目地のところに生えているのだからメルカドやスーパーで売られているサルサとは比べ物にならないみすぼらしさで雑草の如くだが、確かにサルサなのだ。それも数株が生えている。

 僕は「我が家のベランダで育てていて、その種がこぼれたのです。」と言った。

 マリアさんはそれで納得はした様だが、決してちぎって使うことはしないだろう。何故なら、近所の犬の散歩コースで多分におしっこが掛かっているに違いない。

 この場所は市から委託された清掃人が定期的に掃除と草刈りにやって来るが、我が家のクルマが壁際に駐車されているのでサルサは残された格好になっているのだろうと思う。それでも今以上に育つと、たぶん切り取られる運命なのだろう。VIT

石畳の隙間に種がこぼれて育ったサルサとニラ。2020年6月16日、我が家の駐車スペースで撮影。

 

サルサ

セリ科、Apiaceae、オランダセリ属、地中海沿岸地域原産、

学名:Petroselinum neapolitanum、

和名:イタリアンパセリ、

英名:Italian Parsley、Flat Leaf Parsley、伊名:Prezzemolo、葡名:Salsa、Salsinha、

 

 

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