役人は、この由を申そうとして、御寝所に参ると、御帳の中から血が流れている。
不思議に思って中を見ると、赤い首が一つの残っている。
それから役所内が大騒ぎになること、全くひっくり返るようである。
大臣の息子が助左衛門を召してお尋ねになる。
助左衛門は
「ですからこそ、こういう恐ろしいことが起きるのです。
すぐに追い出して、退治する命令を出してください。」
「お前の言う通りに仰せくださるであろう。」
と言われたので
「剣の太刀を付けた者百人、弓矢を帯びた者百人を軍船に乗せて出立せしめられよ」と申しあげた。
その通りとなり、助左衛門は二百人を連れて、鬼の島へ漕いで行く。
まず十人ほどを商人のよう仕立てて、浜に降ろすと例の美女が歌を歌いながら、やってきた。
女たちは商人を誘って、女の城の中に入っていく。
そのあとに、残りの者は、城に乱入しこの女たちを退治した。
この島がどこにあるかは、伝えられていない。
(完)
解説本曰く・・・拙者思うに・・・
この物語は「宇治拾遺物語」巻六のある 「僧伽多(そうきやた)羅刹国(らえつのくに)に行く事」の話です。
主人公は僧伽多(そうきやた)ですが、私は「昔の助左衛門」としました。
羅刹国(らせつのくに)は「南国」としました。
さらに宇治拾遺物語の元を辿ると・・・・大唐西域記にある話に行きつきます。
まったく私も知りませんでした。
しかし「女の昼寝の話」と「女ばかりを産む話」は三蔵法師玄奘の大唐西域記にはないそうです。
当然でしょうが・・・
この説話には美女あり、戦闘あり、スリルとサスペンス、そして最後に鬼女退治と話はよくできています。
男は美女にだまされる・・・今も昔も同じです
感心しました。
原文の紹介 男たちが女の城に連れていかれる場面です。
「・・・・・・・そのうちに具して入りぬ。門の錠をやがてさしつ。内に入ればさまざまの屋ども隔て隔て作れり。男一人もなし。
さて商人ども、皆皆とりどりに妻にして住む。かたみに思ひあうこと限りなし。片時も離るべき心地せずして住む間、
この女日ごとに昼寝すること久し。・・・・・」