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B級会社員のOFF日記(現在無職です)

尻毛助左衛門と尻毛又丸の珍道中の日記を公開しています。

定年サラリーマンのOFF日記もあります。

昔の助左衛門、南国へ行く事(その五)

2016-09-21 20:12:10 | 紳士・淑女の昔物語

役人は、この由を申そうとして、御寝所に参ると、御帳の中から血が流れている。

不思議に思って中を見ると、赤い首が一つの残っている。

それから役所内が大騒ぎになること、全くひっくり返るようである。

大臣の息子が助左衛門を召してお尋ねになる。

助左衛門は

「ですからこそ、こういう恐ろしいことが起きるのです。

すぐに追い出して、退治する命令を出してください。」

「お前の言う通りに仰せくださるであろう。」

と言われたので

「剣の太刀を付けた者百人、弓矢を帯びた者百人を軍船に乗せて出立せしめられよ」と申しあげた。

その通りとなり、助左衛門は二百人を連れて、鬼の島へ漕いで行く。

 

まず十人ほどを商人のよう仕立てて、浜に降ろすと例の美女が歌を歌いながら、やってきた。

女たちは商人を誘って、女の城の中に入っていく。

そのあとに、残りの者は、城に乱入しこの女たちを退治した。

この島がどこにあるかは、伝えられていない。

 

(完)

 

解説本曰く・・・拙者思うに・・・

この物語は「宇治拾遺物語」巻六のある 「僧伽多(そうきやた)羅刹国(らえつのくに)に行く事」の話です。

主人公は僧伽多(そうきやた)ですが、私は「昔の助左衛門」としました。

羅刹国(らせつのくに)は「南国」としました。

 

さらに宇治拾遺物語の元を辿ると・・・・大唐西域記にある話に行きつきます。

まったく私も知りませんでした。

しかし「女の昼寝の話」と「女ばかりを産む話」は三蔵法師玄奘の大唐西域記にはないそうです。

当然でしょうが・・・

 

この説話には美女あり、戦闘あり、スリルとサスペンス、そして最後に鬼女退治と話はよくできています。

男は美女にだまされる・・・今も昔も同じです

感心しました。

 

原文の紹介  男たちが女の城に連れていかれる場面です。

「・・・・・・・そのうちに具して入りぬ。門の錠をやがてさしつ。内に入ればさまざまの屋ども隔て隔て作れり。男一人もなし。

さて商人ども、皆皆とりどりに妻にして住む。かたみに思ひあうこと限りなし。片時も離るべき心地せずして住む間、

この女日ごとに昼寝すること久し。・・・・・」

 

 


昔の助左衛門、南国へ行く事(その四)

2016-09-20 20:16:47 | 紳士・淑女の昔物語

昔の助左衛門は大いに怒り、太刀を抜いて、殺そうとした。

女はすごく恨んで、内裏へ行き、申し述べた。

「助左衛門は私の長年の夫です。それなのに私を捨てて、一緒に暮らさないのは、どなたに訴え申しあげましょう。

お役人様どうぞこれをお裁きください。」

役人はこの女を見て、限りなく褒めたたえた。

大臣がお聞きになって、覗いてご覧になる。

まったく言いようもなく美しい。

まわりの女は土くれのようであり、こちらは玉のようである。

この女と一緒に住まない助左衛門の心はどんなものかと、思われるので召してお聞きになった。

助左衛門は申す

「この女は決して内裏へ入れて、情けをかける者ではありません。返す返す恐ろしい女です。

大変な間違いが起こることでしょう。」

と退出した。

大臣はこの由をお聞きになって、

「この助左衛門はふがいない者よ。よしよし裏門から入れよ。」

と役人に仰せられたので、夕暮れ時に中に入れた。

大臣はそば近く寄せてご覧になると、姿、容姿、そぶり、匂うようで、愛おしいことこの上もない。

さて二人で、お休みになると翌日も、その翌日も、起き上がりなさらず、政治はお執りにならない。

 

助左衛門が参上して

「不吉なことが起こりそうです。大臣が殺されなされたのです。」

と申しあげたが、誰も信じない。

 

こうして三日目になると、御格子もまだ上がらないのに、この女が御寝所から出てきて、立っているのを見ると

目つきも変わっていて、実に恐ろしい。口には血がついている。

しばしあたりを見まわして、女は軒から飛ぶように、雲の中に入って消え失せた。

 

(次回へ続く)

 


昔の助左衛門、南国へ行く事(その三)

2016-09-19 21:40:27 | 紳士・淑女の昔物語

助左衛門たちは西の方へ向ってみな一緒に声をあげて、観音様に必死に祈っていると、

沖の方から大きな白馬が、波の上を泳いで、商人たちの前に来て、うつぶせに伏した。

これこそお祈り申した効験であると思い、

その場にいた者は残らず、皆取りすがって、これに乗った。

 

女たちは起きて見ると、男たちが一人もいない。

「さては逃げたか」と。

女たちは浜に出ると、男はみんな白馬に乗って、海を渡って行く。

 

女たちは、鬼になって、十四、十五丈も高く躍り上がり、わめきちらす。

商人のなかに、女がたぐいまれに、愛おしかった事を思い出す男が一人いた。

その男は、途中で海に落ちてしまった。

鬼たちは奪いあい、先を争って、この男を、引き裂き食べてしまった。

 

さてこの馬は、数日後、故郷の浜に着いた。

商人たちは喜んでおりた。

その馬は、かき消すように いなくなってしまった。

 

昔の助左衛門は、心から恐ろしいと思い、このことを人に話さなかった。

二年たって、鬼女の中で助左衛門の女であったものが、必死に助左衛門を探しだして、やってきた。

前よりも綺麗になって、なんとも言えず愛らしい。

女は言う

「あなたと私は、そうなるべき前世の定めでしょうか。ことのほか慕わしく思っていました。

私を捨ててお逃げになったのは、どんなお気持ちなのですか。

私の島ではこういう怪しいものが、時々出てきて、人を食うのです。

だから錠をよくさし、土塀を高くしてあります。

それにこうして人が大勢浜に出て、騒ぎ出すのを聞いて、あの鬼どもがやってきて、怒った様子を見せたのです。

それはもちろん私の仕業ではありません。

あなたがお帰りになって後、私はあまりにも恋しく思われて・・・・あなたは同じ気持ちになりませんか」

とさめざめと泣く。

 

(次回へ続く) 

 

(次回へ続く)


昔の助左衛門、南国へ行く事(その二)

2016-09-19 20:52:04 | 紳士・淑女の昔物語

この女たちは毎日長いこと昼寝をする。

顔はかわいらしいが、寝入るたびに、何となく疎ましいように見える。

助左衛門は

気味悪い顔を見て、合点がいかず、そっと起き上がって、不思議に思われたので、方々を歩くと、いろいろな仕切りがある。

あるところに、一つの離れがあった。

土塀は高い。戸には錠が強くさしてある。

塀の角から登って中を見ると人が大勢いる。

あるいは死に、あるいは呻き声を出している。

助左衛門は一人の生きている人を招き寄せて

「あなたは誰ですか。どうしてここにいるのですか」

と問うと、その男は答えて言う。

「私は天竺の人間です。宝物を探しに海を渡る者です。悪い風が吹き、この島に着きました。

世にも愛らしい女たちに囲まれて、帰ることも忘れて住むうちに、産む子も産む子もみんな女だ。

限りなく愛おしいと、住むうちに、別の商人が寄ってくると、元の男をこんなふうにして、私ら男を日々の食料としている。

あなたたちも別の船の男が来ると、こういう目にあうことだろう。

なんとしてでも、早くお逃げなさい。

この鬼は昼6時間ほど昼寝をする。この間にうまく逃げれば、逃げられるだろう。

四方の塀は高く、固めてある。私は膝の後ろの筋を切られてしまっているので、逃げるすべがない。」

と泣く泣く話す。

助左衛門は

「どうも変だと思ったが、・・・」と帰って残りの商人にこのことを話すと、

皆は仰天して女の寝ている間に浜に出ていった。

 

(次回へ続く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


昔の助左衛門、南国へ行く事(その一)

2016-09-19 19:56:46 | 紳士・淑女の昔物語

昔、昔

美濃の国に助左衛門という人は、100人の商人を船に乗せた。

南国へ行く時に俄かに悪い風が吹いて、船は南の方へ矢を射るように進んだ。

見知らぬ島に吹き寄せられて、陸地に辿り着いたのをこれ幸いと、皆慌てふためいて、ためらわず降りた。

 しばらくたつと、実に美しい女性が100人ばかり出て着て、歌を歌って通っていく。

見知らぬところに来て、心細い思いであった時に、こんな素晴らしい女を見つけて、喜んで呼びよせた。

呼ばれて女たちは寄ってきた。

近くで見ると一段と美しい。

その愛らしさは何ともたとえようがない。

100人の商人はそれぞれ目を付けて、可愛がること、この上もない。

 

助左衛門は女に問いかけて言う。

「われらは宝さがしに出かけたが、悪い風にあって、見知らぬ島に辿りついた。

堪えがたい思いであったが、あなたたちの、御様子を見ると、沈んだ気持ちは消え去ってしまった。

今は私たちをあなたたちの所へ、連れて行ってください。

船は破損しまして、帰るすべもありません。」

 

すると女達は「それでは、いっしょにいらしてください。」

と言って先に立って案内していく。

家に着くと、白くて高い土塀を遠くまでめぐらして、門はいかめしく立っていた。

女たちは男たちを連れて入っていく。

門の錠はすぐにさされた。

中に入ると、いろいろな建物が別棟に作ってある。

男は一人もいない。

商人たちは、皆めいめいに、女を妻として住んだ。

互いに愛しあうこと、この上ない。

片時の間も、離れられないような気持ちで住んでいたが、・・・・・・

 

(次回へ続く)