最近の証券業界の不祥事(氷山の一角)
●野村証券が国債取引で相場操縦の疑い、監視委が課徴金を勧告へ…「見せ玉」という手口か
証券最大手「野村証券」(東京)が、自社資金による国債の先物取引で相場操縦を行った疑いがあるとして、証券取引等監視委員会が2024年9月25日午後にも、金融商品取引法違反で同社に課徴金を科すよう金融庁に勧告する方針を固めたことがわかった。
関係者によると、同社で自社資金を元手に取引を行う「グローバル・マーケッツ」部門で管理職だったディーラーが2021年頃、長期国債の先物取引で、実際には売買する意思がないのに大量の注文を出し、その後に取り消す「見せ玉」という手口で不正に価格を変動させ、利益を得た疑いがあるという。
監視委は、取引の資金や利益が同社に帰属し、業務時間中に行われていることなどから、ディーラー個人ではなく同社を勧告対象としたとみられる。勧告される課徴金は数千万円規模になる見通し。
金商法は、売買の意思のない注文をしたり根拠のないうわさを広めたりして、他の投資家を誤解させて相場を変動させようとする行為を相場操縦として規制している。
国債の先物取引を巡る証券会社の相場操縦は過去にも問題となっている。19年には、米金融大手シティグループ関連会社のトレーダーが見せ玉で不正に利益を得たとして、同社が約1億3000万円の課徴金を科された。18年には三菱UFJモルガン・スタンレー証券(東京)のディーラーが同様に見せ玉をしたとして、同社に約2億2000万円の課徴金が科されている。
●SMBC日興証券の役員ら4人逮捕、相場操縦の疑い 東京地検特捜部
株価を維持する目的で不正な取引を繰り返したとして、東京地検特捜部は4日、SMBC日興証券(東京都千代田区)の専務執行役員でエクイティ本部の本部長ヒル・トレボー・アロン容疑者(51)ら4人を金融商品取引法違反(相場操縦)容疑で逮捕し、発表した。本社に家宅捜索も入った。大手証券が同容疑で刑事責任を問われるのは極めて異例。
ほかに逮捕されたのは、執行役員で同本部の副本部長アヴァキャンツ・アレクサンドル(44)、同本部のエクイティ部部長・山田誠(44)、同本部のエクイティ・プロダクト・ソリューション部部長・岡崎真一郎(56)の3容疑者。関係者によると逮捕前の任意聴取に「通常の業務の範囲内だった」などと違法性を否定し たとされる。
特捜部の発表などによると、2019年12月~20年11月、東証1部上場の5銘柄について、市場が閉まる直前に指し値で買い注文を大量に入れるなどして、終値が前日よりも大幅に下落しないよう安定させる操作をした疑いがあるという。
これらの銘柄はSMBC日興が扱う「ブロックオファー」取引の対象だった。同取引では、大株主から売却の意向があった株を市場外で買い取って顧客に売り出す。売買価格は取引予定日の市場の終値を基準に決まり、SMBC日興は差益を得る。
4人は市場で値崩れして大株主が売却を撤回しないよう、前日の終値程度を目標価格に設定し、自社資金で買い支えていたという。
この事件では証券取引等監視委員会が昨年6月にSMBC日興本社を強制調査していた。