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建築家坂倉準三展

2009-08-31 | 建築
神奈川県立近代美術館 鎌倉館で
開催中の坂倉準三展を見てきた。

建築家展の難しさと面白さは、
実物を持ち込めないことだ。

その工夫が腕の見せ所だと思うのだが、
この企画展においては瞠目すべき点は少ない。
模型、図面、直筆手帳・・くらい。

しかし、なんと言っても、鎌倉館自体が
坂倉準三の設計である点が企画展の弱さを
補って余りある。

建物と企画自体が一体化しているからだ。



サイズもいいし、周囲の平家池や樹木の
関係も落ち着いた開放感があって
とっても好きな美術館。

1951年(昭和26年)に開館だから
戦後の混乱期に計画がスタートしたことになる。

県在住の美術家、学者、評論家たちが集い、
美術館建設を目指し、神奈川県美術家懇談会を
設立したことから始まったらしい。

日本初の近代美術館を作ろうという
その方々の気概に感銘する。



解体された財閥が戦後再生されていくのと
繋がっているという磯崎新の指摘が新鮮。

渋谷駅周辺の計画や新宿駅西口の計画等は、
官製のものではなく、東急の五島家関連のもの
というのも驚きだ。



新宿駅西口の広場の設計をじっくり考察できた。
柏駅を初めとして全国に広がっていく
ペデストリアンデッキは1階を車に
優先して使わせる点でどうも好きになれない。

その点、新宿駅西口は2階全体を作っているから
人は1階だと思っている。
そして1階に車寄せをつくり、その下に
世界初の地下立体駐車場も作っている。

1966年(昭和41年)の竣工だから、
モータリゼーションの黎明期の設計。



坂倉が設計していた時代は
まさに人口も車も増えていく一方で
どう人を入れていくか?
どうやって大型化していくか?
が基本の時代。

今はライフスタイルを高めること、
商業や産業を活性化させること、
といったことがテーマになるわけで
50年間での変貌に驚く。

企画展は9月6日(日)まで