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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

アカエゾ研究打ち合わせ

2007-11-06 | フィールドから
・札幌二日目。北大にてアカエゾ局所適応の研究打ち合わせ。久しぶりに3名で顔をそろえる。お互いに進捗状況を報告しつつ,今後の計画を考える。飯島くんの報告は,環境(土壌),生理,形態のデータ。8ページに及ぶ報告書の体裁が整っている(すごい)。結果はというと,標高によるクラインや面白そうな挙動を示す形質があるものも,意味不明なものも,玉石混交といった感じ。しかし,中にはデータが信じられないものもあり,後で確認することになる。どうも,当方のミスではないかという疑いが・・・。

・北村さんの報告は適応的な挙動を示すアロザイム研究のレビューとアロザイム分析の結果。なかなか味わい深い結果である。当方はというと,針葉の個葉の形態分析結果と環境(気象ロガー)の説明。SHAPEの微細な形の違いを検出する能力には,ちょっと感動していただいたのではないだろうか。さらに,局所適応に関する論文を代表的なものをレビュー。今後の展開とも関わるのだが,今ひとつ(まるで?)はっきりしなかった本研究の位置づけを行った。何はともあれ,結果を森林学会にて発表することになったので,その中でもう少し具体的に固まっていく予定である。

・投稿論文としてまとめるために,集団数やサンプリング戦略は現状のままでよいかという議論をしているうちに,やはり前山上の湿地林と上と下の湿地をつなぐ地帯,さらに経才鶴付近の個体はやった方がいいだろうという話になる。最初は2-3月の積雪期にやろうかということで話を進めていたのだが,よく考えてみれば雪前にやった方がいいんじゃない?ということで,話は急転直下。あさって8-9日のサンプリングと相成った。支部会終わってちょっとゆっくりという訳にもいかなくなってしまったが,3集団の追加は論文とするときにも結構,重要になりそうである。

・例によって,パン吉に寄ってお土産のパンを購入,さらに“きのとや”で”きのら”も買って,し,ようやく任務完了。高速バスで揺られていると,実にいい気分である。などと悠長なことを言っている場合ではないのだ,これが。とにかく,12日締め切りの50周年原稿と12月5日予定の講義準備を進めねば・・・・。

支部会完了

2007-11-05 | フィールドから
・北海道支部大会当日。久しぶりの札幌である。実にいい天気でこのままドライブしたくなる。富良野に比べるとやはり暖かいのか,公園の木々はまだ緑の葉が残っているものが多い。記念公園では,石弘之氏による”FAOからみた世界の森林状況”というお話。アフリカやアジアの森林の現況を写真、数値とともに示していただいた。違法伐採の仕組みや現状も分かり,興味深かった。さすがジャーナリストという視点であったが,全体的に“救い”がないのが聞いていて痛かった。

・おとといの晩,”ブラッドダイヤモンド”を観たのだが,そのときに感じた”救いのなさ”を思い出したせいかもしれない。そうそう,この映画,ブラピの痛快ダイヤモンド探検みたいな話かと思ったら,実はかなりメッセージ性の強い映画でした。現地の抱える問題点とか,家族とか,人種を超えた友情とか,ダイヤモンドに直接関係しないテーマが実はしっかりと横たわっていて,見ごたえがあった。

・肝心の支部会であるが,4名ともに上出来といってよいだろう。中には予想外の質問(しかも,どうしょうもない質問)に度肝を抜かれた人もいたようだが,いい経験になったのでは。終わった後の開放感がいいんだよねえ、これが。他の発表はというと・・・,実は特筆すべきものがない。というか,時間守らない人は多いし(ちゃんと練習しろよ・・・),既存研究のレビューをしていない発表も多い。

・ちょっと面白いと思ったのが,豪雪地ではエゾシカの足の沈み具合(沈下量)が生存に効く,ということで、天然林とトドマツ人工林で沈下量を測定していた研究。測定は簡単な割に,フィットネスに直結する上に評価が定量なのがいい(欧米ではかなり盛んに研究されているらしい・・・)。

標高別変異あれこれ

2007-11-04 | 研究ノート
・ダウンロードしておいた標高別変異の論文10編ほどを一気に読んでいく。相互移植あり、産地試験あり、遺伝マーカーあり、生理あり、となかなか多岐にわたっている。とりあえず、誰がどこでどの樹種で何をしたのかをノートに簡単にまとめていく。”論文執筆ミニ講座”でも書き記しているのだが、ここは意外と大事な作業である。しかし、意外と学生諸君はやっていないようだ(読んでいるだけと、ノートに書き記すというの案外違う、と思うんだけど・・・)。

・標高に伴う形態や生理のクラインは針葉樹ではかなり普遍的に認められるようだ。しかし、それが遺伝的に決まっているのか、表現型の可塑性の問題なのか、ということになると、遺伝的に決まっているとするものはそれほど多くない。また、産地試験や相互移植も圃場レベルのものが多いが、20年すぎて適応形質が発現するという報告もあり、これらの既存報告の中でトドマツ標高別の”売り”を探すことができそうである。

・アカエゾマツ研究の位置づけをする上でも、これらの文献の整理とまとめがポイントとなりそうである。アロザイムを絡めてやっているものも多少あり、これらとの違いを明確にする必要がある。

・富良野のとあるカフェに行く。雰囲気は悪くなく、スイーツはそれなりに美味しかったのだが、肝心の珈琲はぬるくて味も全然だめだった。ここのところ、店探しに関しては、果敢に突撃しては敗れ去る、ことが多い。食文化が発達していないなあ、相変わらず・・・。

Oleksyn et al. (1998) Funct Ecol

2007-11-03 | 研究ノート
・今日もバスケット練習があるというので、少し見に行く。コーチ、先生には休日返上で来ていただいて、頭が下がる思いである。試合まで練習ができるのはあと5回。悔いのないようにがんばってほしいところだ。

・針葉樹の標高別変異について探しているうちに発掘された論文、Oleksyn et al. (1998) Funct Ecolにようやく目を通す。南ポーランドの山岳地帯に8つのトランセクトを設定し、標高600-1500mのヨーロッパトウヒ54集団(!)を対象に、種子重、シイナ率、各個体の成長形質、形態形質、生理形質を調べている。さらに、標高150mの産地試験(こちらは48種子産地集団)を設定し、2-7年生までの次代苗の成長形質、N、クロロフィルなど細かく生理形質を調べている。

・まさに、アカエゾマツ局所適応とトドマツ標高別相互移植試験の両方のお手本になるような論文である。筆者らも自信たっぷりに述べているが、ここまで大規模な集団数を対象としていることと、形質を網羅的に調べているところは、世界的にも例がない。結果も実にきれいで、野外は、種子重、DBH成長量、樹高成長量は標高とは負の相関があり、シイナ率は正の相関がある。興味深いのは、産地試験でも種子産地標高と樹高成長量に負の相関があり、成長が遺伝的に決まっていることを示しているところである。

・他の移植試験では、これほどまでにきれいな検出されていないものが多い。産地試験では、高山由来の次代苗は高い針葉におけるN含有量の多さが特徴的で、クロロフィル量も多い。すなわち高い光合成能力を持つにもかかわらず成長率が低いのは、根への投資の多さと成長期の短さで説明できるのではないか、としている。

・なーんて、アブストを読んだだけで理解した気分になっちゃいかんね。しっかし、54集団とはすごい奴らがいるもんだ。相互移植ではここまでの規模はないが、産地試験だと結構あるもんだねえ。

植物の世界

2007-11-02 | 研究ノート
・出勤前にみぞれ交じりの雪。車のフロントガラスは雪が積もっている。やっぱりスノータイプに変えておいてよかった。これから雪がいつから本格化するか、心配していても仕方ないのだが、この時期が何とも嫌なもんである・・・。



・朝からエゾノウワミズザクラの原稿を大幅に改訂。ほぼ完成したので、共著者に送ると同時にK林長にも見てもらった。早速、いくつか指摘を頂いたのだが(有難うございます!)、サクラ類の学名はガラッと変わったんだよね、とのこと。紹介していただいた「植物の世界」を見ると、なるほど旧サクラ(Prunus)属の学名が全く変わってしまっている。亜属レベルが属レベルへと昇格したということか・・・。

・旧来の属名(Prunus)をそのまま受け継いだ(?)のは、スモモの仲間である。サクラ類の区分では、花序が長い総状(通常11花以上)で常緑性はバクチノキ属(Laurocerasus)、夏緑性はウワミズザクラ属(Padus)、花序が短い総状(4花から10花)、散房、散形状または単性がサクラ属(Cerasus)になっている。エゾノウワミズザクラはPrunus padusからPadus racemosaへと学名が変わっている。当方、学名はホント弱いのは自覚しているのだが、身近な植物なのにここまで大きく変わっているとは・・・。サクラ、恐るべし。

・締め切り間近となったConserv Biolの審査結果を催促される前に送る。ううむ、今回のは辛かった。総説の審査を引き受けるのは時期尚早だったか・・・。立て続けに、舞い込んできた和文審査も速攻で片付けて送り返す。4時から支部会4名の発表練習。さすがに皆よく練習しただけあって、問題なし!今年は意外と順調であった、ともいえる。

・アカエゾマツ研究打ち合わせに向けて、何を話し合うべきか、構想を練る。やはり研究の位置づけがいまだに出来ていないところが問題だ、ということで文献集めを少々。QTLとFSTの総説などを読み返すと、それなりにまた気になる文献が飛び出してくる。しっかりと下調べをしないといかん。

久びさPCR

2007-11-01 | 研究ノート
・昨日、フィールドから戻って、忙しい合間を縫って久しぶりにPCRした。本日は、アガロースで増幅確認。”マーカーだけが悲しく光る”のではないか、とドキドキしていたが、全部きっちりと増幅していた。とりあえず、何かは増えているみたいなので、安心して東京へ送付。さて、どんな結果が出てくるか・・・。

・それにしても、今日は寒い。昨日の小春日和(?)とはえらい違いである。昨日に調査日を設定しておいて、本当によかった(当方でもまれにこんなことがある)。いまだに暖房が入らないので、当方の部屋は極寒である。灯油ストーブと電気ストーブのダブルで暖房するが、全く寒いままである。

・支部大会準備続く。4名のうち、2名が”卒業”したので、あと2名である。それぞれに順調に進んでいる(はず)で、珍しく最終日はバタバタしないで済む(かも・・・)。一向に進まない審査を無理やり書き直す。総説の審査って、想像以上に難しい。明らかな誤りとかないんだけど、何となくイマイチって場合、どうすればいいのか、途方にくれるなあ・・・。