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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

Oleksyn et al. (1998) Funct Ecol

2007-11-03 | 研究ノート
・今日もバスケット練習があるというので、少し見に行く。コーチ、先生には休日返上で来ていただいて、頭が下がる思いである。試合まで練習ができるのはあと5回。悔いのないようにがんばってほしいところだ。

・針葉樹の標高別変異について探しているうちに発掘された論文、Oleksyn et al. (1998) Funct Ecolにようやく目を通す。南ポーランドの山岳地帯に8つのトランセクトを設定し、標高600-1500mのヨーロッパトウヒ54集団(!)を対象に、種子重、シイナ率、各個体の成長形質、形態形質、生理形質を調べている。さらに、標高150mの産地試験(こちらは48種子産地集団)を設定し、2-7年生までの次代苗の成長形質、N、クロロフィルなど細かく生理形質を調べている。

・まさに、アカエゾマツ局所適応とトドマツ標高別相互移植試験の両方のお手本になるような論文である。筆者らも自信たっぷりに述べているが、ここまで大規模な集団数を対象としていることと、形質を網羅的に調べているところは、世界的にも例がない。結果も実にきれいで、野外は、種子重、DBH成長量、樹高成長量は標高とは負の相関があり、シイナ率は正の相関がある。興味深いのは、産地試験でも種子産地標高と樹高成長量に負の相関があり、成長が遺伝的に決まっていることを示しているところである。

・他の移植試験では、これほどまでにきれいな検出されていないものが多い。産地試験では、高山由来の次代苗は高い針葉におけるN含有量の多さが特徴的で、クロロフィル量も多い。すなわち高い光合成能力を持つにもかかわらず成長率が低いのは、根への投資の多さと成長期の短さで説明できるのではないか、としている。

・なーんて、アブストを読んだだけで理解した気分になっちゃいかんね。しっかし、54集団とはすごい奴らがいるもんだ。相互移植ではここまでの規模はないが、産地試験だと結構あるもんだねえ。