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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

指数べき分布

2006-10-06 | フィールドから
・申請書の作成に午前中かかりきりになる.内容を変更するために,コピーしては貼り付けるだけなんだが,ワードの罫線はどうしてこう言うことを聞かないのか・・・.今回は関係ないけど,論文作成の時には,いつも”ページごと削除”というのができずに苦しんでいる.何とも情けない限りで,コンピュータに操られているとしか言い様がない.

・先日読んだRobledo-Arnuncio and Gil (2005)の論文の中で,「指数べき分布を使って花粉散布曲線を観察値にフィットさせる」というのがあるんだが,そもそも指数べき分布ってどんな感じだろうと思って,Rを使っての作図に取り組む.明らかにこんなことをやっている場合ではないのだが,忙しいときに限ってこんなことにはまってしまうわけで・・・.

・さて,指数べき分布は,a,bなどの2つのパラメータで決まる減少曲線である.Robledo-Arnuncioの論文にも式が書いてあるが,見慣れないΓ(ガンマと読む)という関数が出てくるのでエクセルでは手に負えない(・・・と思っていたら,Sさんは強引にΓ関数の値を算出する技を編み出している,すごい).

・指数べき分布は,aとbの値によって,距離に対するスケールと形が異なるので,自由度が高く,「花粉散布や種子散布曲線の推定ではまず試みたまえ!」とClarkさんも述べている.平均値は,a×Γ(3/b)/Γ(2/b)で計算できるのだが,Rの場合,gamma()であっさりと計算してくれるので,式を書くのも楽だ,と分かる.

例えば,

a <- 20
b <- 0.7
exppower <- function(x) b/(2*pi*a^2*gamma(2/b))*exp(-(x/a)^b)
curve(exppower, 1, 1000, col="purple")

とでもすれば,a=20,b=0.7の時の指数べき分布曲線が紫色で描けるし,

avg.ab <- a*gamma(3/b)/(gamma(2/b))
print(a)
print(b)
print(avg.ab)

で平均値も求められる(もっとエクセレントな方法があるんだろうけど).

aを動かしてみると,こんな感じである.b=0.7に固定して,赤はa=10, 緑はa=20, 紫はa=30となっている.




今度はbを動かしてみる.a=20で固定.b=0.5が赤,b=0.7が緑,b=0.9が紫.



・Robledo-Arnuncioの論文で載っていたa=24.08,b=0.67を代入して平均花粉散布距離を計算させると137.6である.たしか,こんな値だったわい,うまくできた・・・と思って論文を読み返すと,平均135.5mになっている.なぜであろうか・・・.小数点以下の問題かもしれないが妙に気になる.直接,本人にメールしてみるか,と思ったり・・・.

・ここまではいいのだが,最尤法で観察値にフィットさせるようにaとbを最適化させるのには,尤度方程式の理解が必要.未だに尤度という概念そのものが苦手である.まあとにかく,自分でやると勉強になるので,少しずつ進めることにする.

100年後に残る仕事

2006-10-05 | 研究ノート
・朝晩がかなり冷えるようになった.庁舎の周りの木々も,一気に紅葉が進んだようである.入り口のところにあるサトウカエデ(カナダの国旗のやつ)はいい感じで色づいている.うわさによれば雪虫も飛んでいたらしく,雪が舞い始めるのもまもなくだ.



・午前中,Tさんと焼松峠論文の改訂についての打ち合わせ.細かい表現について適切なコメントを頂く.引用文献についても,さらに削れそう.しかし,最も大きい指摘は,地形による実生の発生定着に関する比較考察が,改訂原稿では”浮いている”ということである.実は自分でも,この部分の「取ってつけた感」が否めなかったわけだ.こうして改めて指摘されると,思い切って削除することができた.これで随分ダイエットできたし,お互いに満足(?).ということで,後は細部を手直しして再投稿することに決定.

・その後,仙台の埋土種子論文の打ち合わせ.この論文の歴史は,なんと15年も前にさかのぼる.何を隠そう(別に隠していないけど・・・),当方が4年生の卒論研究である.卒論時にはそれが論文に値するのかどうか,などというのは全く分からず提出したきり放っておいたものだが,Tさんが後処理の追加調査などをやってくださり,こうしてデビューする可能性が生まれているわけである.

・これが分子生態の仕事なんかだと,「5年も前のデータでは,古すぎて論文にならんよ」とか言われそうだが,そこは「埋土種子の研究」ならではの地道な世界では,種類の同定に5年以上かかるなんてのは”ざら”だそうで,研究として古びることはない.もちろん論文にするまでに時間がすごくかかるので,当世の業績至上主義の中では流行らない研究分野となってしまっているわけだ.

・最近の分子生態の論文は無数にあるが,その大部分はきっと5年後には誰も引用しなくなるんだろうな,きっと.その点,地道な仕事(例えば,植生や埋土種子集団の記載など)は,きっちりとなされていれば,50年とか100年経っても引用される可能性がある.実際,焼松峠論文でも,1952年の植生の記載論文を引用しているのである.

・そうして考えると,とにかく流行に乗っかって,研究費が取れそうなテーマばかりをやりたがる最近の風潮に疑問を感じたりする.しかし,先立つものがないと研究ができないというのもまた事実であり,また流行に身を任せてみたいというミーハーな部分も捨て切れなかったりして・・・.申請書を書きなぐりつつ,ふと思索にふける秋,なのであった.

風をめぐる散布のはなし

2006-10-04 | 研究ノート
・カツラでは,母樹と実生の位置が推定できているので,これから散布方向を割り出してみるかということに・・・.一瞬,どうしていいのか,思考がとまってしまう.cosの値は(x座標の差)/(原点からの距離)で割り出せるので,三角関数の値を基準にして角度ごとに分割できる,と気がつく.16方位の場合,X座標とY座標の差がともに正の場合,cos(11.25°)からcos(33.75°)の範囲をENEにすればいいわけだ.もっと簡単な方法があるんだろうが,ノートに円と方位を描ききつつ,地道に考えてみるのもなかなか楽しい.

・午前中,Sさんとカツラ論文の最後の打ち合わせ.手始めに,Robledo-Arunancio & Gil 2005 HeredityとLatouche-Halle et al. 2004 Mol Ecolの論文を一挙に概説し,カツラ論文で使えそうな表現や解析法を探る.Sさんはフランス語の発音にも強いらしく,人名の読み方をいちいち教えていただく.こうして確認しておくと,自信を持って学会発表にも臨めそうだ.Burczk発音問題のように,欧米でも地域によっては難しいのだろうが・・・.

・論文構想の方は,昨日までにイントロ,マテメソ,結果と急ぎ足で駆け抜けており,本日は考察の番である.何が言えそうか,どんな論文が参考になるか,などについて,ブレーンストーミング.今回の滞在中には,とにかく図表を作りまくってもらったのだが,作りすぎてお互いにやや混乱している感もあったり・・・.ひたすら2時間も議論するのは厳しい修行だが,「あーだこーだ」と話しているうちに,何かが見えてきたりするもので.

・結局,今回のカツラ種子散布論文では,長距離種子散布(特に1km以上)の定量化というのが何よりもウリだ,ということをお互いに認識する.ただし,風散布種子の場合,散布モデル研究が相当に進んでいるので,Nathan一派の研究とベイズ生態学者Clark氏の論文はどうしても読まなきゃいかん,とさらに厳しい宿題を出してしまう.Oikosに掲載されたNathanの総説”Nathan et al. (2003) Methods for estimating long-distance dispersal. Oikos, 103: 261-273”などが参考になりそうであり,こちらも久しぶりに紐解いてみるか,ということになって,めでたしめでたし(?).

焼松峠の変貌

2006-10-03 | フィールドから
・岐阜大学のTさんを迎え,1年ぶりに焼松峠の調査.今回は,実生の調査は行わず,各プロットの含水率,土壌硬度などを測定する.平坦部と斜面部を比べると,土壌硬度は明らかに斜面部が低い(当たり前!?).水分はというと,なかなか明確な関係はないが,林縁が若干高く,また下草が繁茂しているプロット右下部分は明らかに高そうだ.Tさんは,今年もプロット内の植生調査を継続しつつ,各植物種の最大高などを測っておられる.



・このプロットには,2002年から毎年調査に来ているのだが,昨年くらいから様相が一変している.最初は土壌が露出し,これからどうなってしまうんだろうという感じだった.それが今では,実生も下草も繁茂し,プロット右下部のタラノキはついに背丈を越えた.全体的に,プロットの周囲に密生しているササがあっという間に回復して,ササに覆われてしまうのではないかと心配していたのだが,ササの植被率は相変わらず10%にも満たない程度だ.昨年に定着したウダイカンバ,イタヤカエデ,ヤチダモ,シナノキなども結構たくさん残り,多様な樹木の更新が起こりつつある感じ.昨年よりも,若干,イタヤカエデが増えただろうか・・・.



・今回は,当方の調査は楽なので,写真撮影などしつつ,気ままに歩き回る.普段,こうして余裕をもってプロットにいることは少ないので,非常に有意義だ.焼松峠には,ウダイカンバの種子を花咲か爺さんのように直播したところと,全くの放置したところがあるのだが,特に直播したところがウダイカンバが多いというわけではない.かように,森林への直播というのは難しく,どんぐりの直播(しかも,しっかりと埋め込むやつ)以外ではほとんど失敗しているのではないか・・・.

・こうして失敗した例というのは,なかなか論文にはならないので,いつの時代にも失敗が繰り返されることになってしまうわけだ.今回の焼松峠の場合,10年後に再調査して,直播の失敗ということを定量的に示してみたいと思っている.

合体ロボ

2006-10-01 | その他あれこれ
・待ちに待った幼稚園バザーの日.近所ではすっかり有名になっていて,子供ならず大人(おばさんたち)までも本気で掘り出し物を探しに来ている.まずは,10時の子供タイムに合わせて,おもちゃを探す.子供は戦隊モノにはまっていて,合体ロボがたまらなく魅力らしい.まっしぐらに合体ロボに向い,ウルトラマンコスモスのテックスピナーなるものと,よく分からない恐竜みたいな合体ロボをゲット.解体しては組み立ててと,大興奮である.



・そういえば,自分達が子供の頃は,超合金とかに夢中になっていた・・・.戦隊モノもリアルタイムで始まったクチなので,デカレンジャーとか,マジレンジャーとか,ボウケンジャーとか,最近のモノは一緒になって観ていたりする.ところで,最近の仮面ライダー(仮面ライダーカブト)は相当面白い.カブト,クワガタ,ハチ,トンボ,バッタなどとライダーも多様で,それぞれにカッコイイのである.毎週,日曜日の朝8時からやっているので,ぜひ一度ご覧あれ.