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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

シンチェンの光と影

2006-10-18 | フィールドから
10月18日

・広州の中山大学のホテルを出発し,車でシンチェンへ向かう.2時間ほどの行程である.途中,広大なバナナのプランテーションを見る.農村風景はまた違った趣である.同行してくれたPDの学生から小さなバナナが美味しいということを力説されたり,と.

・シンチェンは経済特区に指定されて以来,急激な経済成長を遂げた都市である.現在でも,移入して働きたい人が多すぎるため,厳重なゲートを設けて移入を制限している.一瞬,国境かと錯覚するくらい.中に入ると,確かに近代化された都市で,大きなマンションやビルが立ち並ぶ.

・シンチェン自然保護区に入る.自然海浜公園となっており,一般の人も入場料を払って観光している.こちらも,電気自動車に乗せられて,同じく観光気分.人工林と自然林があるが,環境はそんなによろしくないようである.ここには7種のマングローブがあるとのことだが,移入種が巨大になっている.さて,問題のメヒルギだが,非常に密生した状態でどこからどこまでが株なのかといった感じである.

・再び車で移動し,ホテルと陳先生のマングローブの試験地があるリゾート地に到着.この一帯はかつて泥炭地で樹木は1本もなかったそうだが,今では緑化樹が至る所に植栽されている.中には,観光やアミューズメント施設まであり,テーマパークといったところか.

・この一帯に,マングローブの試験地がある.ここは,昨日,博士課程の学生がプレゼンしてくれた調査地である.水を張ったところにマングローブを迷路のように植栽しているのだが(彼は植栽後の成長や生存,栄養塩やエビやカニなどの汚染含有などを調べていた),この試験地は最終的にはマングローブで作られた水路を船で案内するコースになるらしい.効率的というか世俗的というか・・・,ちょっとしたカルチャーショックである.



・この試験では,マングローブ3種で45%の面積をカバーするように植栽したのだが,生存と成長は顕著である.中程度の種の現在の樹高は50cmから1mくらいであるが,メヒルギは水没に弱いらしく,ほぼ完全に消滅している.



・一方,バングラディシュからの移入種は極端に成長が早く,樹高が10m以上に達しており,もはや人を寄せ付けない雰囲気である.ここでも,移入種問題は早くもクローズアップされそうな気配である.



・ところで,広州についてから今日まで,ずっと薄曇のような天気が続いている.どうしてすっきり晴れないのかと思っていたら,この付近では大気汚染によってこのようなスモッグが常にかかっているらしい(排気ガスが原因と言っていたが・・・).急激な成長を遂げる裏で,汚染の問題は深刻なようで,現在,“汚染浄化”がかなり重要な研究のキーワードとなっている理由を体感する.