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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

風をめぐる散布のはなし

2006-10-04 | 研究ノート
・カツラでは,母樹と実生の位置が推定できているので,これから散布方向を割り出してみるかということに・・・.一瞬,どうしていいのか,思考がとまってしまう.cosの値は(x座標の差)/(原点からの距離)で割り出せるので,三角関数の値を基準にして角度ごとに分割できる,と気がつく.16方位の場合,X座標とY座標の差がともに正の場合,cos(11.25°)からcos(33.75°)の範囲をENEにすればいいわけだ.もっと簡単な方法があるんだろうが,ノートに円と方位を描ききつつ,地道に考えてみるのもなかなか楽しい.

・午前中,Sさんとカツラ論文の最後の打ち合わせ.手始めに,Robledo-Arunancio & Gil 2005 HeredityとLatouche-Halle et al. 2004 Mol Ecolの論文を一挙に概説し,カツラ論文で使えそうな表現や解析法を探る.Sさんはフランス語の発音にも強いらしく,人名の読み方をいちいち教えていただく.こうして確認しておくと,自信を持って学会発表にも臨めそうだ.Burczk発音問題のように,欧米でも地域によっては難しいのだろうが・・・.

・論文構想の方は,昨日までにイントロ,マテメソ,結果と急ぎ足で駆け抜けており,本日は考察の番である.何が言えそうか,どんな論文が参考になるか,などについて,ブレーンストーミング.今回の滞在中には,とにかく図表を作りまくってもらったのだが,作りすぎてお互いにやや混乱している感もあったり・・・.ひたすら2時間も議論するのは厳しい修行だが,「あーだこーだ」と話しているうちに,何かが見えてきたりするもので.

・結局,今回のカツラ種子散布論文では,長距離種子散布(特に1km以上)の定量化というのが何よりもウリだ,ということをお互いに認識する.ただし,風散布種子の場合,散布モデル研究が相当に進んでいるので,Nathan一派の研究とベイズ生態学者Clark氏の論文はどうしても読まなきゃいかん,とさらに厳しい宿題を出してしまう.Oikosに掲載されたNathanの総説”Nathan et al. (2003) Methods for estimating long-distance dispersal. Oikos, 103: 261-273”などが参考になりそうであり,こちらも久しぶりに紐解いてみるか,ということになって,めでたしめでたし(?).